ダイトーケミックス(4366)

ダイトーケミックスは、半導体集積回路などのフォトレジストに使用される感光性材料を主力とするファインケミカルメーカーです。
同社は、需給ひっ迫状態にある半導体向けで高水準の需要を取り込んでおり、感光性材料のトップメーカーとして頭角を現しています。
そこで今回は、半導体関連銘柄として注目を浴びつつある、ダイトーケミックスを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。

1. 会社概要

ダイトーケミックスは、時代、社会のニーズに対応する3つの事業セグメント、電子材料・イメージング材料・医薬中間体を核として発展してきました。
また、同社は2018年に創業80周年を迎え、多様な先端分野との接点を広げながら、社会に必要とされる化学のエキスパート集団として、さらなる成長をしながら創業100周年を目指すとしています。

同社の沿革は、以下のとおりです。


1938年:大東化学工業所として創立、顔料「群青」の製造販売開始

1949年:株式会社大東化学工業所に改組

1962年:写真材料分野に進出・経営組織を事業部制組織に改組、経営組織の改革、経営の近代化を促進
中小企業のモデルケースとして業界の注目を浴びる

1964年:本社を大阪市東区(現・中央区)に移す・東京営業所を開設し、関東地域に販路を拡大

1974年:産業廃棄物処理会社として鶴見興業株式会社(現日本エコロジー株式会社)設立

1978年:電子材料中間体分野に進出・ダイトー技研株式会社設立

1986年:医薬中間体分野に進出

1988年:創業50周年記念式典挙行

1991年:社名をダイトーケミックス株式会社に変更

1996年:大阪証券取引所市場第二部に上場

2013年:DAITO CHEMIX(CHINA)CO.,LTD清算・株式会社東京証券取引所市場第二部上場銘柄となる

2017年:ISO9001(2015年版)へ移行・ISO14001(2015年版)へ移行・単元株式数を1,000株から100株へ変更

2. 事業の特徴

半導体・液晶向け感光性材料や写真材料が主力で、医薬中間体にも注力、子会社で産業廃棄物処理も手がけています。 また、医薬中間体はアビガン特需剥落しますが、感光性材料など電子材料が絶好調で、イメージング材料も想定以上の躍進となっているようです。
最新決算である2022年3月期第1四半期決算短信(連結)の売上高は40億4,500万円。 ※2021年7月28日

各事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。

※2021年3月期決算短信(連結)

① 電子材料

② イメージング材料

③ 医薬中間体

④ その他化成品

⑤ 環境関連事業

① 電子材料

半導体用感光性材料については、主力製品の需要の増加により、販売数量、売上高ともに増加しています。また、フラットパネルディスプレイ周辺材料については、製品構成により販売数量は減少、売上高は増加となったようです。
これらにより、電子材料の売上高は、前連結会計年度比25.6%増の91億1,800万円となっています。

② イメージング材料

フィルム用材料は、需要の増加により、販売数量、売上高ともに増加しています。写真材料は、インスタント写真用材料の減少により、販売数量、売上高ともに減少しています。 また、印刷材料は、販売数量、売上高ともに若干減少したようです。
これらにより、イメージング材料の売上高は、前連結会計年度比15.7%減の18億9,200万円となっています。

③ 医薬中間体

医薬中間体は、アビガン中間体の製造、および主力製品が堅調に推移したことにより、販売数量、売上高ともに増加しています。
これらにより、医薬中間体の売上高は、前連結会計年度比25.1%増の12億5,000万円となっています。

④ その他化成品

その他化成品は、販売数量、売上高ともに減少したようです。これらにより、その他化成品の売上高は、前連結会計年度比8.8%減の2億7,300万円となっています。

⑤ 環境関連事業

産業廃棄物処理分野については、受託量の減少により、売上高は減少しています。
化学品リサイクル分野についても、非電子部品関連および、電子部品関連ともに低調に推移したことにより、出荷量、売上高ともに減少したようです。
これらにより売上高は、前連結会計年度比9.3%減の14億6,200万円となっています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額:164億7,500万円 ※2021年9月21日終値ベース
・総資産:188億2,500万円 ※2021年3月期
・資本金: 29億100万円 ※2021年3月期
・売上高:139億9,800万円 ※2021年3月期
・従業員数:272名(連結) ※2021年3月期

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2019年3月 12,068 784 821 619 57.7 10
2020年3月 12,417 812 664 524 48.9 8

2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年3月 13,998 1,443 1,231 1,092 101.8 12

最新決算である2022年3月期第1四半期決算短信(連結)は以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円)
2022年3月 4,045 544 769 580 54.06

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:1,471円(2021年9月21日終値)
・予想PER:24.29倍    ※2022年3月期の予想EPS60.55より算出
・実績PBR:1.18倍    ※BPS1,188.42(2021年3月期) 
・予想配当利回り:0.68%  ※2022年3月期10円予想
・年初来高値:1,555円(2021年9月16日)
・年初来安値:750円(2021年5月11日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、ダイトーケミックス工業の現状を把握します。2021年3月期の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

・総資産     188億2,500万円
・自己資本比率      67.8%
・有利子負債   32億6,400万円  
・利益剰余金   47億9,500万円  

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が32億6,400万円ありますが、自己資本比率は67.8%と6割強にもなっています。 また実績PBRは1.18倍、利益剰余金も47億9,500万円とプールもしっかりあります。 財務的にはまず問題はないと考えられます。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2021年3月期)の売上高を2020年度の124億1,700万円と比較すると12.7%も増加、来期売上高予想も145億円(3.6%)とさらに増加する見込みになっています。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年3月期

営業活動の結果増加した資金は、25億2,600万円(前連結会計年度は11億4,900万円の増加)となっています。これは主に税金等調整前当期純利益12億3,100万円、減価償却費6億200万円、たな卸資産の減少6億円、持分法による投資損失2億7,100万円、売上債権の増加5億6,800万円によるものとしています。 本業でしっかりと稼げているようです。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動の結果減少した資金は、3億7,600万円(前連結会計年度は6億6,00万円の減少)となっています。これは主に有形固定資産の取得による支出3億8,800万円によるものとしています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動の結果減少した資金は、2億8,100万円(前連結会計年度は2億8,400万円の減少)となっています。これは主に社債の償還による支出1億8,900万円、配当金の支払額1億700万円によるものとしています。
現金及び現金同等物は、前期より18億6,800万円増加し32億5,400万円となっています。

6. トピック:一歩先をゆく、スペシャリティ・ファインケミカルメーカー

同社は、技術立社・ダイトーケミックスを支える「総合力」を以下のように掲げています。

「科学」が持つ「不思議なチカラ」を暮らしに、社会に、未来に役立つ「特別なチカラ」に。 研究者が直接、お客様のニーズを伺い、独自の視点、発想力と、歴史の中で蓄積した経験とノウハウを活かし、自ら大量生産を可能とする技術がある。
そして、その「特別なチカラ」を生み出す設備群。安全・安心で高い品質を維持しながら、世の中に、安定して送り出すために品質保証、安全管理、および環境管理体制の構築、そのトータルの力こそが「一歩先をゆく、スペシャリティ・ファインケミカルメーカー」である同社を支えている。


2022年3月期の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2022年3月 14,500 900 850 650 60.55 10

7. まとめ

今回はダイトーケミックスを分析しました。

株価は1,471円(2021年9月21日現在)で時価総額も164億7,500万円(2021年9月21日現在)と比較的値動きは軽い銘柄です。
実績PBRは1.18倍(2021年9月21日現在)、同社の予想PERは24.29倍(2021年9月21日現在)また、東証二部の化学における平均PERは16.26倍(2021年9月21日現在)です。
ファンダメンタルズではやや割高水準にあると考えられます。
しかし同社の最新決算である2022年3月期第1四半期決算短信(連結)において、経常利益は7億6,900万円、売上高40億4,500万円と好決算を打ち出しています。 経常利益は既に上期計画である6億円を大幅に上回り、対通期計画においても進捗率が9割に到達しています。

また同社は期中に通期予想を引き上げる傾向が強く、今期も上方修正に対する期待を背景に、市場では物色人気に弾みがついているようです。
さらに足元の業績が好調に推移する中、半導体用感光性材料をはじめとする電子材料の新工場建設を明らかにするなど、成長投資にも余念がありません。
ただ、期待通りの業績になるかを見定めていく必要性もある為、同社は1~3年間など長期的な投資が向いていると思います。
半導体関連の一角として成長を続ける同社の行方には、今後も要注目です。