SIG(4386)

SIGは、官公庁向け給与システムに強みを持つシステム開発会社です。 現在、デジタル庁創設に伴うDXへのシフトで、同社の商機が高まるとの見方があります。
そこで今回は、システムインテグレーターとして人気を集めつつある、SIGを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。

1. 会社概要

1991年、株式会社エスアイインフォジェニックを設立。以来、大手企業グループとの長年にわたる取引で安定した成長を続けています。 また全国展開による案件の発掘と人材供給、育成にも力を入れてきました。 そして多数の同業他社とも連携し幅広い事業領域を展開、その中から顧客満足度の高い事業の実現を目指しています。

同社の沿革は、以下のとおりです。


1991年12月:株式会社エスアイインフォジェニック設立(住友金属工業グループ)

1995年10月:ソリューション販売事業を開始

1998年3月:セキュリティ・ソリューション事業を開始

1999年2月:ネットワーク・インテグレーション事業を開始

2000年9月:住友金属工業グループより独立、独立系 SIベンダー会社として出発

2001年5月:ブロードバンド事業を開始、大型プロジェクト「ブロードバンドオーディオ送出システム」 を納入 立

2002年8月:教育事業を開始

2012年2月:消費電力見える化事業を開始

2018年6月:東京証券取引所 JASDAQ (スタンダード)市場へ上場

2019年6月:東京証券取引所市場第二部へ市場変更

2021年9月:株式会社Y・C・Oを関連会社化

2. 事業の特徴

システム開発は自治体DX化推進が追い風になっており、また国保向けの新規開発支援参入で上乗せとなっています。 そして、インフラ・セキュリティはクラウド基盤構築の活況が続いており、特に同社のセキュリティ分野はコンサルティングのほか、脆弱性診断、指紋認証など幅広いソリューションに対応しています。
最新決算である2022年3月期第1四半期決算短信(連結)の売上高は11億2,400万円。 ※2021年8月12日

※同社は、システム開発及びインフラ・セキュリティサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しています。 ※2022年3月期第1四半期決算短信(連結)

情報サービス産業においては、デジタル技術の進化、普及が急激に進み、 製造業などの企業収益の改善などからも企業が求めるデジタル化推進・DX対応のニーズが非常に強く、ICT関連への設備投資も増加基調で推移しているようです。

そして、同社のシステム開発及びインフラ・セキュリティサービス事業は主力とする事業領域において堅調な推移を見せた結果、第1四半期連結累計期間の経営成績において、売上高は1,124,833千円となり、営業利益は46,089千円。経常利益は74,490千円、親会社株主に帰属する四半期純利益は59,814千円となっています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額:47億1,000万円  ※2021年9月28日終値ベース
・総資産:26億9,800万円  ※2022年3月期第1四半期
・資本金: 5億500万円  ※2022年3月期第1四半期
・売上高:11億2,400万円  ※2022年3月期第1四半期
・従業員数: 438名(連結) ※2022年3月期第1四半期

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2019年3月 4,226 372 372 254 47.0 17記
2020年3月 4,476 380 380 266 47.3 17記

2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年3月 4,379 325 321 239 42.4 12

最新決算である2022年3月期第1四半期決算短信(連結)は以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円)
2022年3月 1,124 46 74 59 10.50

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:795円(2021年9月28日終値)
・予想PER:19.60倍    ※2022年3月期の予想EPS40.57より算出
・実績PBR:2.88倍    ※BPS275.73(2021年3月期)
・予想配当利回り:1.51%  ※2022年3月期12円予想
・年初来高値:1003円(2021年1月20日)
・年初来安値:524円(2021年8月20日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、SIGの現状を把握します。2021年3月期の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

・総資産    25億9,600万円
・自己資本比率     59.6%
・有利子負債   3億1,971万円 ※千円以下切捨て
・利益剰余金   7億8,779万円 ※千円以下切捨て

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が3億1,971万円、自己資本比率は59.6%と5割強になっています。 実績PBRは2.87倍ですが、利益剰余金は7億8,779万円(千円以下切捨て)とプールはあるようです。 財務的には大きな問題はないと考えられます。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2021年3月期)の売上高を2020年度の44億7,600万円と比較すると-1.8%減となっていますが、来期売上高予想は47億円と復調の兆しをはらんでいます。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年3月期

営業活動の結果使用した資金は6,675千円(前年同期は317,438千円の収入)となっています。これは主に税引前当期純利益が321,998千円、減価償却費が24,961千円、売上債権の増加額184,424千円、仕入債務の減少額88,521千円、法人税等の支払額104,241千円等によるものとしています。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動の結果使用した資金は678,943千円(前年同期は47,013千円の支出)となっています。これは主に有形固定資産の取得による支出12,867千円、敷金の差入による支出8,380千円、関係会社株式の取得による支出656,286千円等によるものとしています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動の結果使用した資金は197,131千円(前年同期は87,609千円の収入)となっています。これは主に株式の発行による収入9,933千円があった一方、長期借入金の返済による支出125,292千円、配当金の支払額67,508千円等によるものとしています。
現金及び現金同等物は、前年より882,750千円減少し、674,276千円となっています。

6. トピック:成長戦略2本の柱

① 地方採用の充実による人材供給

② セキュリティサービス事業への注力

①地方採用の充実による人材供給

地方のITイノベーションを支援✖独自の教育システムで、エンジニア不足による機会損失を防ぎ、事業展開の持続的な成長を推進。

②セキュリティサービス事業への注力

クラウド化やloTでセキュリティリスクが増大する中、システムの脆弱性を診断。 株主のテプコシステムズとの協業によるノウハウの蓄積で、設備産業におけるセキュリティを強化。 大学や研究機関との産学連携によるAI・マルウェア解析の共同研究でセキュリティシステムの自動診断に取り組む。


2022年3月期の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2022年3月 4,700 304 347 231 40.57 12

7. まとめ

今回はSIGを分析しました。

株価は795円(2021年9月28日現在)で時価総額も47億1,000万円(2021年9月28日現在)と値動きは軽い銘柄です。
実績PBRは2.88倍(2021年9月28日現在)、同社の予想PERは19.60倍(2021年9月28日現在)また、東証二部の情報・通信業における平均PERは34.30倍(2021年9月28日現在)です。
ファンダメンタルズではPBRこそ割高ではありますが、PERはまだ割安水準にあると考えられます。

また同社は、金融向けクラウド構築でも実績があり、地銀再編の動きも追い風材料になり得ます。 さらに同社は、マイナンバーカード対応の学校向け証明書自動発行機を、滋賀大に初納入しており、拡販に弾みがついているようです。
ただ、今後も同社の業績を見定めていく必要はある為、同社は1~3年間など長期的な投資が向いていると思います。 国策の流れに乗り始めた同社の行方には、今後も要注目です。