イソライト工業(5358)

イソライト工業は、品川リフラクトリーズの傘下で、耐火断熱煉瓦やセラミックファイバーなどの工業製品の製造販売を行う企業です。
世界的な半導体需給の逼迫による生産設備増強ニーズを背景に、半導体用工業炉向けで高水準の受注を獲得、本格的な業績拡大に向けて勢いを増しています。
そこで今回は、追い風が吹く半導体関連銘柄でもある、イソライト工業を取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。

1. 会社概要

創業当初は、煉瓦建築向けに建材として工務店、建築会社に販売、その後セラミックファイバーを手がけ始め、各方面に応用化できる新素材開発に注力するようになりました。

そして海外でも生産販売網を拡大、特に建材メーカーとして高い評価を得ており、2004年には現・品川リフラクトリーズの子会社入りをし、共同事業として環境関連事業や新素材の開発研究も行っています。
同社の沿革は、以下のとおりです。


1927年:珪藻土質耐火断熱れんがの販売を目的として設立、本店を大阪市に置く

1953年:大阪株式店頭売買承認銘柄となる

1961年:大阪証券取引所市場第二部に上場

1966年:東芝モノフラックス株式会社設立

1972年:セラミックファイバー製品群を商標「FIBERFRAX」で生産販売開始

1991年:大阪証券取引所の市場第二部より同市場第一部に指定替え

2004年:品川白煉瓦(株)(現品川リフラクトリーズ(株))を引受人として第三者割当増資を実施 し、同社の親会社となる

2005年:サンゴバン・ティーエム株式会社が分社したセラミックファイバー事業部門を取得し、(株)ITMを 連結子会社とする

2012年:ITMが米国のUnifrax I LLCと合弁会社ITM-UNIFRAX(株)を設立

2013年:東京証券取引所と大阪証券取引所の統合に伴い、東京証券取引所市場第一部に上場

2020年:イソライト(株)が(株)ITMを吸収合併

2. 事業の特徴

同社は自動車業界向けセラミックファイバーが拡大、半導体業界向けも高水準を持続しています。
また、利益率の高い超高温用途のアルミナファイバーも想定超となっており、新規分野では住宅の省エネ化進展に伴う耐熱性ニーズ向上を背景に、建築用不燃材などにも注力。
さらに同社は、リチウムイオン電池向け断熱れんがなど EV 分野にも実績があります。
最新決算である2022年3月期第1四半期決算短信(連結)の売上高は38億2,600万円。  ※2021年8月4日

各事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。

2022年3月期第1四半期決算短信(連結)

① 断熱関連事業

② その他事業

① 断熱関連事業

各種工業炉向けを中心とした断熱関連製品および自動車・半導体関連向けのセラミックファイバー製品の売上増加により、当第1四半期連結累計期間の売上高は36億200万円(前年同期比17.3%増)となっています。

② その他事業

環境緑化製品および建設関連資材の売上減少により、当第1四半期連結累計期間の売上高は2億2,400万円(前年同期比11.0%減)となっています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額:206億5,600万円 ※2021年10月12日終値ベース
・総資産:210億3,600万円 ※2022年3月期第1四半期
・資本金:31億9,600万円 ※2022年3月期第1四半期
・売上高:38億2,600万円 ※2022年3月期第1四半期
・従業員数:655名(連結) ※2021年3月期

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2019年3月 16,770 2,850 2,944 1,474 62.6 12
2020年3月 16,129 2,836 2,886 1,891 804 16

2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年3月 13,693 2,151 2,352 1,599 68.4 18

最新決算である2022年3月期第1四半期決算短信(連結)は以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円)
2022年3月 3,826 827 893 642 27.47

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:875円(2021年10月12日終値)
・予想PER:9.29倍    ※2022年3月期の予想EPS94.14より算出
・実績PBR:1.31倍    ※BPS667.15(2021年3月期) 
・予想配当利回り:2.51%  ※2022年3月期22円予想
・年初来高値:882円(2021年10月11日)
・年初来安値:461円(2021年1月6日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、イソライト工業の現状を把握します。2022年3月期第1四半期(連結)の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

・総資産     210億3,600万円
・自己資本比率      74.1%
・有利子負債   9億2,500万円  ※千円以下切捨て
・利益剰余金   99億1,200万円  ※千円以下切捨て

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が9億2,500万円、自己資本比率は74.1%と7割超となっています。 実績PBRは1.35倍ですが、利益剰余金は99億1,200万円(千円以下切捨て)とプールもしっかりあるようです。
財務的にはまず大きな問題はないと考えられます。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
2021年3月期(連結)の売上高を、2020年度3月期の売上高161億2,900万円と比較すると-15.1%減です。
しかし、来期売上高は160億円と復調の兆しをはらんでいます。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年3月期

営業活動による資金の増加は14億2,200万円(前連結会計年度は35億7,100万円の増加)となっています。
これは主に税金等調整前当期純利益の計上によるものとしています。
本業でしっかりと稼げているようです。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動による資金の減少は14億2,900万円(前連結会計年度は9億100万円の減少)となっています。
これは主に、有形固定資産の取得によるものとしています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動による資金の減少は7億2,900万円(前連結会計年度は12億8,600万円の減少)となっています。
これは主に、借入金の返済、配当金の支払によるものとしています。
現金及び現金同等物は、前年より7億6,100万円減少し37億6,900万円となっています。

6. トピック:2つの社是と4つの経営理念

同社は企業価値向上、発展のため、2つの社是と4つの経営理念を掲げています。
2つの社是 創意と調和
4つの経営理念
1.地球の環境に優しく国際社会の繁栄に寄与する。
2.時代の流れを先取りし迅速に物事に対処する。
3.組織の壁にとらわれず連携して社業に励む。
4.自己の仕事を前向きに絶えず創造性を発揮する。


また同社は、2021年3月期決算短信にて今後の見通しとして、断熱関連事業においては、製造・販売・開発・エンジニアリングの連携をさらに深化し、四者一体となって顧客満足の実現と販売力の強化を図るとしています。

そして、繊維化技術や生産プロセスの革新により、品質、生産性の向上とコスト削減を実現し、コア事業としての基盤をより一層強固にし、安定した収益を確保するともしています。

その他事業においては、新規事業分野の探索として、かねてより手掛けてきた機能性セラミックス製品などを中心に電子部品や新エネルギー関連などの成長分野をさらに大きく育成し、将来の収益基盤の拡大を図るとしています。


2022年3月期の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2022年3月 16,000 3,000 3,200 2,200 94.14 22

7. まとめ

今回はイソライト工業を分析しました。

株価は875円(2021年10月12日現在)で時価総額も206億5,600万円(2021年10月12日現在)と値動きは軽い銘柄です。
実績PBRは1.31倍(2021年10月12日現在)、同社の予想PERは9.29倍(2021年10月12日現在)また、東証一部の硝子・土石製品業における平均PERは14.57倍(2021年10月12日現在)です。
ファンダメンタルズではPBRこそ割安ではありませんが、PERはまだ割安圏内にあると考えられます。

同社は、世界経済の回復を背景として、中国や欧州市場を中心に断熱関連事業の販売も堅調に推移し業績を押し上げています。
ただ、今後も世界経済の動向による影響や同社の業績を見定めていく必要もあります。
同社は1~2年間など長期的な投資が向いていると思います。
半導体関連として一躍脚光を浴び始めた同社の行方には今後も要注目です。