ケアネット(2150)
ケアネットは、医療関係者向けプラットフォームサービスの提供などを行う情報サービス会社です。
現在企業のデジタルトランスフォーメーション投資が一段と活発化しています。
医療業界も例外ではなく
DX化が急速に進展しており、マーケット的な見地からも巨大需要が生み出される可能性が高まりつつあります。
今後、株式市場でも関連銘柄への投資マネーの攻勢が予想される中、今回は好業績が続く、ケアネットを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。
1. 会社概要
同社ビジネスの根幹は、19万人を超える医師が毎日活用している医療情報プラットフォーム「CareNet.com」です。
このプラットフォームを核に、医師・医療従事者に質の高い臨床医学教育などのサービスを提供する「メディカルプラットフォーム事業」を創業以来展開し続けています。
そして、このプラットフォームを活用し、製薬企業の医薬品の適正な普及を支援する「医薬DX事業」を同社の主力事業として育ててもきました。
さらに、このプラットフォームを通じ、個人や患者と医師をつなぎ、データを分析して健康管理と適切な医療介入を行う「ヘルスデータサイエンス事業」の開発も行っています。
同社の沿革は、以下のとおりです。
1996年:医療情報提供サービスを目的として株式会社ケアネットを設立
1998年:「スカパー!」にて日本初の医療専門テレビ局「ケアネットTV・メディカルCh.®」を開局
2000年:医師・医療従事者向け会員制サイト「クラブ・ケアネット」をインターネット上に開設
インターネットによるマーケティング調査「eリサーチ™」サービス開始
2007年:東京証券取引所マザーズに上場
2009年:株式会社葦の会と業務提携
ケアネット・イノベーション投資事業有限責任組合と資本提携
「eディテーリング®」の情報制御機能「MRPlus®ナビゲーション・ボード」に関して国内特許を取得
2010年:医薬情報提供サービス「eディテーリング®」に関して国内特許を取得
医師会員数が10万人を超える
2011年:スカパー!「ケアネットTV」閉局、インターネットによる動画配信サービス「CareNetオンデマン
ド」開始
株式会社フェーズワンと業務提携
2015年:世界最大級の医療情報サイト「Medscape」を運営するWebMD社と業務提携
2019年:「株式会社アスクレピア」を設立
医師会員数が15万人を超える
2020年:東京海上ホールディングス株式会社と資本業務提携
医師会員数が18万人を超える
2021年:医療情報サイト「Doctors Me®」を運営する株式会社アドメディカを買収
2. 事業の特徴
同社は、医師向け情報サイトを通じ、製薬の営業支援や、 DVD
、動画配信による医師教育コンテンツの提供を行なっています。
また、難治性疾患対象のスペシャリティ医薬品向けの
DXサービス開発を目指し、さらに人材採用やプラットフォームの開発を進めてもいます。
最新決算である2021年12月期第2四半期決算短信(連結)の売上高は38億1,700万円。 ※2021年8月12日
各事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。
2021年12月期第2四半期決算短信(連結)
① 医薬DX事業
② メディカルプラットフォーム事業
③ 連結グロース事業
① 医薬DX事業
既存サービスの販売体制強化などの取り組みを進めるなか、医薬DX事業の売上高は33億2,700万円(前年同四半期比110.9%増)、営業利益は18億8,800万円(前年同四半期比142.0%増)となっています。
② メディカルプラットフォーム事業
医師向け教育コンテンツ「ケアネットDVD」及び「その他」の売上高は1,500万円(前年同四半期比26.0%減)、医療教育動画サービス「CareNeTV」の売上高は1億6,300万円(前年同四半期比19.4%増)となっています。
これらの結果、メディカルプラットフォーム事業の売上高は1億7,800万円(前年同四半期比13.4%増)、営業利益は2,200万円(前年同四半期比11.7%減)となっています。
③ 連結グロース事業
新規事業の開発及び積極投資を進めるなか、主に第1四半期連結会計期間において株式会社アドメディカを連結の範囲に含めた影響に伴い、連結グロース事業の売上高は3億5,000万円(前年同四半期比 212.3%増)、営業損失は600万円(前年同四半期は営業損失1,700万円)となっています。
3. 会社規模
会社規模は、以下のとおりです。
・時価総額: 634億6,000万円 ※2021年10月19日終値ベース
・総資産 : 57億8,400万円 ※2021年12月期第2四半期
・資本金 : 6億2,700万円 ※2021年12月期第2四半期
・売上高 : 38億1,700万円 ※2021年12月期第2四半期
・従業員数: 152名(連結) ※2021年12月期第2四半期
4. 業績
過去2年間の業績は次のとおりです。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2018年12月 | 2,902 | 469 | 436 | 263 | 24.5 | 6 |
2019年12月 | 3,268 | 605 | 593 | 448 | 42.3 | 6 |
2020年12月期(2020年1月1日~2020年12月31日)の業績は、以下のとおり。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2020年12月 | 5,304 | 1,510 | 1,506 | 815 | 78.6 | 8 |
最新決算である2021年12月期第2四半期決算短信(連結)は以下のとおり。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) |
---|---|---|---|---|---|
2021年12月 | 3,817 | 1,387 | 1,399 | 954 | 91.94 |
株価・株価指標は以下のとおりです。
・株価:1436円(2021年10月19日終値)
・予想PER:42.60倍 ※2021年12月期の予想EPS33.71より算出
・実績PBR:15.24倍 ※BPS94.20(2020年12月期)
・予想配当利回り:0.14% ※2021年12月期 2円予想
※2021年9月30日(木)を基準日として、同日最終の株主名簿に記載又は記録された株主の所有する普通株式を、1株につき4株の割合をもって分割しています。
・年初来高値:2515円(2021年6月18日)
・年初来安値: 968円(2021年3月5日)
5. 財務分析
BS・PL・CS分析から、ケアネットの現状を把握します。 2021年12月期第2四半期(連結)の数字で検討します。
① BS分析
まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ
・総資産 57億8,400万円
・自己資本比率 67.6%
・有利子負債 1,000万円 ※千円以下切捨て
・利益剰余金 30億8,100万円 ※千円以下切捨て
総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が1,000万円、自己資本比率は67.6%と6割超となっています。
実績PBRは14.86倍ですが、利益剰余金は30億8,100万円(千円以下切捨て)とプールもしっかりあるようです。
財務的にはまず大きな問題はないと考えられます。
② PL分析
損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
2020年12月期(連結)の売上高を、2019年度12月期の売上高32億6,800万円と比較すると62.3%も増加です。さらに、来期売上高予想も76億円とさらに売上増加を見込んでいます。
③ CS分析
キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。 CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。
※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
営業活動の結果得られた資金は、9億3,900万円(前年同四半期は4億3,700万円の収入)となっています。
これは主に、税金等調整前四半期純利益13億9,900万円、売上債権の減少4億5,400万円、未払費用の増加1億500万円などによる資金の増加と、法人税等の支払額5億7,600万円、役員賞与引当金の減少2億2,000万円、未払金の減少2億4,300万円などによる資金の減少との差引によるものとしています。
本業でしっかりと稼げているようです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動により支出した資金は、6,900万円(前年同四半期は2億7,400万円の支出)となっています。
これは主に、有形固定資産の取得による支出2,800百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出2,300万円、無形固定資産の取得による支出2,100万円などによるものとしています。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動により支出した資金は、1億1,700万円(前年同四半期は10億4,300万円の収入)となっています。
これは主に、配当金の支払額8,200万円、短期借入金の純増減額3,000万円による資金の減少などによるものとしています。
現金及び現金同等物は、前年より7億5,800万円増加し30億6,400万円となっています。
6. トピック:医療を受ける側も提供する側も健康で働きやすい社会の実現へ
同社は医療の発展と企業価値向上のため、次のような企業理念を掲げています。
ケアネットはデジタル時代のサステナブルな健康社会づくりに邁進します。
私たちは、創業以来一貫して、臨床現場の医師・医療従事者を情報と教育を通じて支援することで患者さん一人一人がより良い医療を受けられるようにと願い、事業に取組んで参りました。
医療なくして私たちの生活は成り立ちません。その医療を取り巻く環境は厳しさを増しています。医療費の高騰、厳しい労働現場など、医療だけに負担を求める時代ではありません。
働き方を見つめ直す時代になりました。健康意識も高まっています。技術も飛躍的に進歩しています。
生命科学分野やデジタル技術分野では次々とイノベーションが誕生しています。社会の意識が変わり、社会問題の解決手段が多様化しています。
私たちは、技術と熱意をもって常にビジネスを進化させ、医療を受ける側も医療を提供する側も、健康で働きやすい、サステナブルな社会づくりに貢献しなければなりません。
ケアネットは、デジタル時代のサステナブルな健康社会づくりに邁進します。
2021年12月期の連結業績予想は、以下のとおりです。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2021年12月 | 7,664 | 2,211 | 2,222 | 1,400 | 33.71 | 2 |
※2021年8月12日開催の取締役会において、2021年10月1日付で普通株式1株につき4株の割合で株式分割を行うことを決議しています。これに伴い、2021年12月期の連結業績予想については、期首に当該株式分割が行われたと仮定して1株当たり当期純利益を算定しているとしています。
7. まとめ
今回はケアネットを分析しました。
株価は1436円(2021年10月19日現在)で時価総額も634億6,000万円(2021年10月19日現在)と値動きも比較的軽い銘柄です。
実績PBRは15.24倍(2021年10月19日現在)、同社の予想PERは42.60倍(2021年10月19日現在)また、東証マザーズのサービス業における平均PERは29.10倍(2021年10月18日現在)です。
※株式分割前 PER:10.7倍 PBR:4.85倍
ファンダメンタルズではPBRこそ割安ではありませんが、分割前のPERと成長性を考慮すると、同社のPERは割高であるとも言いきれないと思います。
また、同社情報サイトの医師会員数はすでに19万人を超え、会員を含めた全会員数は実に38万人を超えています。
さらに来期業績予想は保守的とも一部囁かれている節もあり、大幅上方修正が有力視されてもいるようです。
ただ、期待通りの成果が上がるかは見定めていく必要もあります。
業績の行方を確認しながら、同社は2〜3年間など長期的な投資が向いていると思います。
同社の行方には今後も要注目です。