3大海運会社の1つである、日本郵船ってどんな会社?
日本郵船株式会社は、1885年に創立された、100年以上の歴史を誇る海運業者です。
日本郵船と聞くと「国営企業ではないか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、日本郵政は三菱グループの会社になります。
数ある三菱グループの中でも、日本郵船は、三菱グループの中核企業でもあり、三菱重工と共に三菱グループの源流企業です。
商船三井、川崎汽船と並ぶ日本の3大海運会社の一つでもあり、国際的には「NKY」として知られています。
今回は、日本を代表する海運会社の日本郵船について説明します。かなり詳しく説明しますので銘柄研究や企業研究の参考にしていただければ幸いです。
1. 会社概要
日本郵船は先ほど説明した通り、100年以上の歴史のある会社です。
日本の名門企業グループである三菱グループの中核会社であり、戦後の東京証券取引所の指定銘柄12社(平和不動産、東レ、旭化成工業、日本石油、住友電気工業、日本電気、パナソニック、三菱重工業、トヨタ自動車、三井物産、東京海上日動火災保険、日本郵船)の1つでもあった由緒正しき会社です。
日経平均株価の構成銘柄の1つでもあります。
それでは日本郵船の沿革を見ていきましょう。
<沿革>
1885年:郵便汽船三菱会社、日本国政府の仲介で三井系国策会社である共同運輸会社と合併し日本郵船会社を設立。
1893年:株式会社として日本郵船株式会社が誕生。
1949年:東京、大阪、名古屋の証券取引所へ上場。
1950年:札幌証券取引所へ上場。
1964年:三菱海運株式会社(前三菱汽船、極東海運:三菱商事船舶部より分離独立)と合併。
2005年:全日本空輸との合弁会社であった日本貨物航空(NCA)を全日本空輸保有株式の譲渡を受け連結子会社化。
2006年:陸運大手のヤマトホールディングスとの資本提携を発表。
2017年:商船三井、川崎汽船と共にコンテナ船事業を統合、新会社『オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)』が発足。
2. 事業の特徴
日本郵船の事業セグメントは以下5つに分かれています。
・定期船事業
・航空運送事業
・物流事業
・不定期専用船事業
・不動産業、その他の事業
それぞれの事業セグメントの状況を見ていきましょう。
・定期船事業
コンテナ船部門では、ONE社において、港湾・内陸部での混雑により船舶・コンテナの回転率が低下する中、引き続き旺盛な貨物需要を受け、需給は更に逼迫しました。
また、前年同期比で運賃は大幅に上昇し、積高も増加しました。中でも主要航路では、北米航路の積高は船舶のスケジュール遅延等の影響でほぼ前年同期並となりましたが、欧州航路では増加しました。
また、両航路において運賃・消席率は前年同期を上回る水準で推移し、収支は大幅に良化しました。
このような状況下でONE社はコンテナの調達を進め、船舶の航行スピード増速によりスケジュール遅延を最小限とし、輸送スペースを最大限提供できるよう課題の解消に努めました。
国内及び海外ターミナルでは、ともに新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた前年同期から取扱量が回復しました。
以上の結果、定期船事業全体では前年同期比で増収増益となりました。
・航空運送事業
航空運送事業では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、国際旅客便の減便・運休が継続しました。
一方、自動車部品・半導体・e-Commerce・在宅ワーク関連貨物を中心に荷動きは堅調に推移しました。
加えてコンテナ船の輸送スペース不足や港湾混雑の影響により、海上貨物の一部が航空輸送に切り替わる動きも続いたため、貨物搭載量・運賃単価ともに高い水準で推移しました。
以上の結果、航空運送事業全体では前年同期比で増収増益となりました。
・物流事業
航空貨物取扱事業は、国際旅客便の減便・運休継続による供給スペースの減少及び海上貨物の航空輸送への切替えにより、需給は逼迫しました。
このような状況下、臨時便の手配等で輸送スペースを確保したことにより、取扱量が前年同期比で増加しました。
海上貨物取扱事業は、仕入価格の高騰は続くものの、経済活動再開に合わせて取扱量が堅調に推移しました。
ロジスティクス事業は、需要の底堅い一般消費財を中心に取扱量が増加しました。内航輸送事業は一部航路の取扱量が減少しました。
以上の結果、物流事業全体では前年同期比で増収増益となりました。
・不定期専用船事業
自動車輸送部門では、半導体生産不足による自動車生産台数減少の懸念もありましたが、完成車の海上輸送台数は北米・中近東向けを中心に、前年同期比で想定以上に回復しました。
局地的には船腹不足も見られましたが、配船の工夫等により顧客の輸送要請に柔軟に対応しました。
自動車物流は、国・地域ごとに需給バランスの回復に差がある中、中国・ロシア・インドをはじめ、各国でコスト削減や事業合理化を進める一方、エジプト・トルコでの完成車ターミナル建設や開業に向けた準備を行い、ベルギーの完成車ターミナルでの風力発電事業を開始する等、新規事業への取組みを進めました。
ドライバルク輸送部門では、ケープサイズは、鉄鉱石の好調な荷動きを背景に3月から5月上旬にかけて市況が上昇する異例の展開後、調整局面に入りましたが、当第1四半期全体では例年以上の水準で推移しました。
パナマックスサイズは、天候不順により南米出しの大豆の出荷が遅れた結果、大規模滞船が発生し船腹需給が引き締まりました。
また、6月に入ると石炭の荷動きが活発化し、市況は一段高を迎えました。このような環境下、市況変動による収支影響を抑えるために先物取引を用いて収入を固定化するほか、長期契約獲得による収入の安定化と効率的な運航によるコスト削減に努めました。
エネルギー輸送部門では、産油国による協調減産が続き、需給バランスの悪化が常態化したことにより、VLCC(大型タンカー)と石油製品タンカーの市況は歴史的な低迷が続きました。
VLGC(大型LPGタンカー)については、3月から市況が上昇傾向に転換したものの、季節的な需要減退期に入り6月には反落しました。
タンカーは市況変動の影響を受ける短期契約が限定的であるものの、前年同期比で市況の下落幅が非常に大きく、収支を悪化させる要因となりました。
LNG船は安定的な収益を生む長期契約に支えられて順調に推移しました。また海洋事業はFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)、ドリルシップが順調に稼働しました。
以上の結果、不定期専用船事業全体では前年同期比で増収となり利益を計上しました。
・不動産業、その他の事業
不動産業は堅調に推移し、売上高、経常利益ともにほぼ前年同期並みとなりました。
その他の事業は、技術サービス業では新型コロナウイルス感染症による工事案件遅延の影響が前年同期比で軽減しました。
燃料油販売は油価上昇により販売単価は上昇しましたが、化学製品製造販売事業とともに好調であった前年同期ほどは振るわず、販売減少となりました。
客船事業は、新型コロナウイルス感染症の影響で運航を中止していたクルーズを3月末から再開しましたが、その後感染再拡大の影響により運航中止が相次ぎました。
以上の結果、その他の事業全体では前年同期比で増収となりましたが、損失を計上しました。
3. 会社規模
時価総額:1兆3213億円(2021年10月22日)
純資産総額:2兆1254億円(2021年3月末)
資本金:1443億円(2021年3月末)
従業員数:35057人(2021年3月末)
4. 業績
【15%増収、営業利益2.1倍】
22/3期の連結業績予想を上方修正。売上高1兆8000億円→1兆8500億円(前期比15%増)、営業利益1300億円→1500億円(同
2.1倍)、経常利益3700億円→5000億円(同2.3倍)、純利益3500億円→5000億円(同 3.6倍)。
定期船事業における同社持分法適用会社
OCEANNETWORKEXPRESSPTE.LTD.の業績は、旺盛な輸送需要の継続に伴い、想定を上回って推移しています。
物流事業においても需給が引き締まった状況が続いており、収支が良化。不定期専用船事業では、好調なドライバルク市況等により収支の良化を見込み、業績予想を上方修正しました。
それでは日本郵船の過去の決算内容について見ていきましょう。
決算期 | 売上高 | 営業益 | 経常益 | 最終益 | 修正1株益 | 1株配 |
---|---|---|---|---|---|---|
2018.03 | 2,183,201 | 27,824 | 28,016 | 20,167 | 119.6 | 30 |
2019.03 | 1,829,300 | 11,085 | -2,052 | -44,501 | -263.8 | 20 |
2020.03 | 1,668,355 | 38,696 | 44,486 | 31,129 | 184.4 | 40 |
2021.03 | 1,608,414 | 71,537 | 215,336 | 139,228 | 824.5 | 200 |
予 2022.03 | 1,850,000 | 150,000 | 500,000 | 500,000 | 2,960.20 | 700 |
安定的に売上高、利益ともに推移しているのがわかりますね。
5. 財務分析
株式投資や企業研究を行う上で財務分析は非常に重要です。
いくら成長が期待できる企業でも財務基盤が安定していなければ、安定的な経営はできないからです。
財務基盤は企業にとって非常に重要なものになりますのでしっかり確認するようにしましょう。
財務分析を行う方法は様々ですが、一般的には「成長性」「収益性」「安全性」の3つの側面を見るべきだといわれています。
それでは日本郵船の財務基盤を「成長性」「収益性」「安全性」から見てみましょう。
(1) 成長性
成長性は一般的には増収率 (売上がどれくらいのびているかを示す指標)で判断されます。
年20%以上の増収率を達成していればかなり優秀であるといわれています。
日本郵船の2021年3月期の売上高は1兆6084億円に対し2022年3月期の予想売上高は1兆8500億円となっており、115%の増収になりそうです。
コロナの影響で2021年の売上高が落ちたことが大きな原因ですが、先ほどの過去の決算内容を見てもここ数年の売上高は安定していることがわかります。
今後も安定して高い収益が期待できそうです。
(2) 収益性
日本郵船の2022年の当期純利益5000億円と2021年の1392億円約3・6倍となる予定です。大きく増益になっているのがわかります。
(3) 安全性
安全性は自己資本比率が高いと良いとされていますが、33%以上の自己資本比率があると安定性は高いといわれています。
日本郵船の自己資本比率29,4%(2021年3月時点)です。33%には届いていませんが、問題のある水準ではまったくありません。
また有利子負債は約8539億円です。一見すると非常に大きく見えますが日本郵船の規模から考えると大きな問題ではないでしょう。
どちらにしても純資産対比まったく問題ない水準です。
6. トピック:無人運行船の実用化!
日本郵船が無人運航船の実用化に向けた準備を急いでいます。
2022年2月に予定する実証実験に向け、このほど自動運航の技術を詰め込んだ陸上支援センターを開設しました。
人間が3時間かけて作ってきた最適航路を人工知能(AI)がおよそ5分で自動作成するなど、労働負荷の軽減にもつながる技術も多いのが特徴です。
人手不足が深刻な国内の海上輸送の課題解決にもつながりそうです。
日本郵船や傘下の日本海洋科学が日本財団など、約30団体と共同で立ち上げた無人運航船
のDFFASプロジェクト。
来年2月には小型コンテナ船が東京湾から伊勢湾に向けて出航します。
より実践的な実証実験となるように、通常の輸送ルートでも使われている航路を運航する予定です。
日本財団は2040年に50%の船舶が無人運航船に置き換わった場合、国内で年間約1兆円の経
済効果が期待されるとしました。 もし実用化したら大きく株価もあがるでしょう。
7. 今後の業績予想
日本郵船の株価は今後大きく上昇する可能性は大いにあります。先ほど説明した無人運航船がもし実用化できれば大幅なコスト削減につながりますし、売り上げ自体も非常に好調だからです。
もちろん今後大きく下落する可能性もありますが、長期目線で考えると大きな利益をが期待できます。
また配当利回りも2.5%を超えておりインカム狙いの投資でもおすすめできる銘柄になります。
8. まとめ
今回は、3大海運会社の1つである日本郵船について紹介しました。 日本郵船は三菱グループの中でも老舗の会社になります。 日本郵船という名前を聞いたことがあっても中身について詳しく知らなかった方も多いのではないでしょうか?
2022年の日本郵船の決算は非常に好調な予定です。無人運航船など様々なチャレンジもしており今後の進展が楽しみです。
日本郵船の株価は過去10年でみるとかなり高等していることは事実です。
しかし、今後さらなる上昇をする可能性は十分あります。
今回の記事をきっかけに日本郵船への投資を検討してみてはいかがでしょうか?