フェローテック(6890)

フェローテックは、半導体ウエーハや半導体設備向け部品の製造を手がける企業です。半導体製造装置向け真空シールでは約6割の世界シェアを有しています。
同社は、真空シールが絶好調に推移しており、市場では、台湾の受託製造大手TSMCや韓国サムスン電子など高水準の半導体設備投資の需要を、今後も取り込むことが予想されてもいます。
そこで今回は、半導体関連銘柄として再び注目を集め始めた、フェローテックを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。

1. 会社概要

フェローテックは、1980年に米国企業の子会社として日本に設立され、その7年後の1987年に米国親会社から独立します。 国内工場を建て、1992年には中国にも進出しました。そして1999年には、米NASDAQ市場の元親会社を友好的TOBにより傘下に収めます。 親子関係が逆転しますが、その後再びフェローテックグループとなり、飛躍的な成長を遂げ続けてきました。

同社の沿革は、以下のとおりです。


1980年:東京都港区にコンピュータシール、真空シール、磁性流体の輸入販売を目的として設立

1988年:千葉工場にて磁性流体の製造を開始

1991年:米国マサチューセッツ州にニッポン・フェローフルイディクス・アメリカ社(現フェローテック・アメリカ)を設立

1995年:創立15周年を迎えたことを機に、商号を株式会社フェローテック(現商号)に変更

1996年:当社株式を日本証券業協会に店頭登録

1998年:株式会社ジーエスキューに資本参加し、社名を株式会社フェローテックジーエスキューに変更

1999年:フェローフルイディクス社を公開買付により買収(2000年1月、同社を100%子会社に)

2003年:アリオンテック株式会社と技術および資本提携

2004年:米国アプライド・フィルムズ社のドイツ法人と真空シールの独占供給契約を締結

2010年:英国 Edwards Vacuum Inc より Temescal 事業部を取得

2013年:株式会社東京証券取引所と株式会社大阪証券取引所の統合に伴い、東京証券取引所JASDAQ に株式を上場

2015年:株式会社アドマップに資本参加

2016年:株式会社アサヒ製作所に資本参加

2019年:東洋刃物株式会社と資本業務提携

2021年:株式会社大泉製作所に資本参加、株式会社カドーに資本参加

2. 事業の特徴

半導体製造装置は旺盛な半導体需要が追い風となっていて、真空シールに加えてセラミック、石英などの消耗品も想定超に好調となっています。
また、車載向けパワー半導体用基盤の増産に向け、中国製造子会社が第三者割当増資をしており、中国におけ別子会社が深セン取引所へ上場申請をしています。
最新決算である2022年3月期第1四半期決算短信(連結)の売上高は276億5,900万円。 ※2021年8月13日

各事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです

※2022年3月期第1四半期決算短信(連結)

① 半導体等装置関連事業

② 電子デバイス事業

① 半導体等装置関連事業

当該事業の主な製品は、真空シール及び各種製造装置向け金属加工製品、石英製品、セラミックス製品、CVD-SiC製品、シリコンパーツ、装置部品洗浄、石英坩堝などです。
世界的なリモートワークの拡大に伴いスマートフォンやパソコン、サーバー等の需要増加により、電子部品の需給はひっ迫し、半導体デバイスメーカー各社は、前倒しで設備投資を行う計画を発表しました。
また、各種半導体製造装置メーカーからの受注も好調に推移しています。 同社グループが供給する半導体製造プロセスに使用されるマテリアル製品(石英・セラミックス等)の販売は、デバイスメーカーの稼働率が高水準であることから堅調に推移し、前年を上回る水準となったようです。
また、半導体製造装置などの部品洗浄サービスも需要増加により順調に受注を伸ばし、この洗浄サービスを行う中国子会社は、中国の創業板市場へ上場申請をしています。(2021年6月29日付開示「中国子会社の深セン証券取引所創業板市場への上場申請に関するお知らせ」参照)
これらの結果、当該事業の売上高は169億5,900万円(前年同期比22.1%増)、営業利益は31億3,200万円(前年同期比325.1%増)となっています。

② 電子デバイス事業

当該事業の主な製品は、サーモモジュール、パワー半導体用基板、磁性流体などです。
主力のサーモモジュールは、自動車温調シート向けが世界各国の自動車販売の回復により、一定の水準で推移したようです。 5G用の移動通信システム機器向けやPCR等の医療検査装置向けは共に好調な販売としています。 民生分野向け、半導体装置向けは計画を上回る水準で推移致し、パワー半導体用基板は、IGBT向け、DCB基板は、新型コロナウイルス感染症の影響から抜出し、回復基調となり、車載向けのAMB基板は、量産が進み前年比で伸長しています。

磁性流体は、スピーカー向けとスマートフォン用途は一定水準で推移し、当該事業の各製品は、景気に左右されにくい業種への販売を進めているようです。
これらの結果、当該事業の売上高は55億200万円(前年同期比58.7%増)、営業利益は15億3,900万円(前年同期比74.2%増)となっています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額: 1,447億2,000万円 ※2021年10月26日終値ベース
・総資産: 2,089億3,500万円 ※2022年3月期第1四半期
・資本金: 177億3,700万円 ※2022年3月期第1四半期
・売上高: 276億5,900万円 ※2022年3月期第1四半期
・従業員数: 7,380名(連結) ※2021年3月期

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2019年3月 89,478 8,782 8,060 2,845 76.9 24
2020年3月 81,613 6,012 4,263 1,784 48.1 24

2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年3月 91,312 9,640 8,227 8,280 222.9 30記

最新決算である2022年3月期第1四半期決算短信(連結)は以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円)
2022年3月 27,659 4,817 6,508 9,078 243.85

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:3,715円(2021年10月26日終値)
・予想PER:6.92倍    ※2022年3月期の予想EPS537.20より算出
・実績PBR:1.62倍    ※BPS2,288.12(2021年3月期) 
・予想配当利回り:1.24%  ※2022年3月期46円予想
・年初来高値:4,100円(2021年9月13日)
・年初来安値:1,600円(2021年1月28日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、フェローテックの現状を把握します。2021年3月期の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

・総資産     1,771億8,900万円
・自己資本比率      37.9%
・有利子負債   438億9,500万円  (十万円以下切り捨て)
・利益剰余金   182億2,100万円  (十万円以下切り捨て)

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が438億9,500万円、自己資本比率も37.9%と4割をきっていますが、最新決算である2022年3月期第1四半期決算短信(連結)で、自己資本比率は40.8%まで改善しています。
また実績PBRは1.62倍ですが、利益剰余金も182億2,100万円とプールはしっかりあります。財務的には大きな問題はないと考えられます。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2021年3月期)の売上高を2020年度の816億1,300万円と比較すると11.9%も増加、来期売上高予想も1,150億円とさらに増加する見込みとなっています。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年3月期

営業活動の結果得られた資金は132億1,700万円(前連結会計年度比43億1,400万円増)となっています。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益112億8,800万円、減価償却費91億5,500万円、仕入債務の増加額77億2,600万円によるものとしています。
また支出の主な内訳は、売上債権の増加額137億6,800万円によるものとしています。
本業でしっかりと稼げているようです。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動の結果使用した資金は208億7,900万円(前連結会計年度比135億9,200万円減)となっています。これは主に有形固定資産の取得による支出141億7,500万円、関係会社株式の取得による支出68億5,200万円によるものとしています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動の結果得られた資金は216億9,400万円(前連結会計年度比36億9,800万円増)となっています。これは主に長期借入金の返済による支出283億3,200万円、社債の償還による支出62億1,800万円の一方、長期借入れによる収入166億100万円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の売却による収入308億3,400万円によるものとしています。
現金及び現金同等物は、前期より64億9,300万円増加し302億200万円となっています。

6. トピック:フェローテックの強み4つの特徴

同社には、強みとなる4つの特徴があります

① 独自のコア技術

② くらしを支える

③ 世界トップシェア

④ グローバル・カンパニー

① 独自のコア技術

フェローテックのコア技術である、NASAアポロ計画から誕生した「磁性流体」と冷熱素子「サーモモジュール」を応用した技術で幅広い分野で貢献しています。

② くらしを支える

フェローテックの製品はあなたが見えないところでビジネスやインフラを支え、気づかないところであなたの暮らしとふれあっています。

③ 世界トップシェア

ニッチトップ戦略でグローバルシェア「真空シール:65%」「サーモモジュール:36%」トップシェア製品を保有する高収益企業です。

④ グローバル・カンパニー

日本・中国・米国・欧州・アジアの五極体制。グローバル拠点46箇所。グループ全体の社員は、約7300人。


2022年3月期の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2022年3月 115,000 20,000 20,000 20,000 534.63 46特

7. まとめ

今回はフェローテックを分析しました。

株価は3,715円(2021年10月26日現在)で時価総額も1,447億2,000万円(2021年10月26日現在)と値動きも極端に重たい銘柄ではありません。
実績PBRは1.62倍(2021年10月26日現在)、同社の予想PERは6.92倍(2021年10月26日現在)また、東証JASDAQの電気機器における平均PERは26.13倍(2021年10月26日現在)です。
ファンダメンタルズでは、PBRこそやや割高指標ではありますが、PERはまだかなり割安水準にあると考えられます。

また、同社が脚光を浴びる理由の一つとしては、やはり業績が好調であることが挙げられます。
22年3月期の売上高は前期比26%増という高い伸び率であることに加えて、営業利益も前期比のほぼ倍にあたる200億円を計画しています。 さらに10月22日付で、東海東京調査センターは同社の業績が今後も順調に推移すると予想し、投資判断を「ニュートラル」から「アウトパフォーム」(強気)に引き上げました。 業績の行方を見定めながら、同社は1~3年間など長期的な投資が向いていると思います。
半導体関連の本命馬として動き出すのか、同社の行方には今後も要注目です。