メディカルシステムネットワーク(4350)

メディカルシステムネットワークは、主に医薬品ネットワークや調剤薬局事業を手掛けている企業です。
2020年4月10日、未曽有の感染症流行によって、オンライン診療とオンライン服薬の一部規制が時限的に緩和されています。 一番のメリットは、オンライン診療もオンライン服薬指導も、初診から行えるようになったことでしょう。
そして、医療業界の DX化が加速する中、オンライン診療とオンライン服薬の恒久化も議論されており、医薬品ネットワークや調剤薬局事業を手掛けている同社には益々の追い風が吹くことも予想されます。
そこで今回は、この流れに乗る格好となり得る、メディカルシステムネットワークを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。

1. 会社概要

メディカルシステムネットワークは、1999年札幌にて設立後、地域住民の健やかな暮らしを実現するため、医薬品や社会福祉に関する様々な事業とサービスを展開してきました。 医薬品ネットワークや調剤薬局事業以外にも、賃貸・設備関連、訪問看護事業の展開にも力を入れています。

同社の沿革は、以下のとおりです。


1999年:札幌市中央区に医療機関の業務合理化、医薬品流通の効率化を目的として株式会社メディカルシステムネットワークを設立

2000年:医薬品ネットワークシステム(O/E system)が完成、稼動開始

2001年:株式会社システム・フォーを株式交換にて100%子会社化

2002年:大阪証券取引所 ナスダック・ジャパン市場(現JASDAQ)上場

2005年:三井物産株式会社と共同出資にて株式会社エムエムネット(当社51%保有)を設立

2008年:東京証券取引所 市場第二部上場

2010年:東京証券取引所 市場第一部指定

2013年:株式会社ファミリーマートと業務提携

2016年:株式会社ファーマホールディングが株式会社ひまわり看護ステーションの株式を100%取得し、訪問看護事業を開始

2019年:株式会社永冨調剤薬局の株式を100%取得し子会社化

2020年:株式会社オプトと合弁契約を締結し、株式会社ファーマシフトを設立し、デジタルシフト事業を開始

2021年:株式会社ひまわり看護ステーションを吸収合併

2. 事業の特徴

柱の調剤薬局は処方箋単価減を枚数増しで吸収し、粗利率の改善が進んでいます。 また LINEから処方箋送信や決済可能なアプリを今期末には3300店舗(7月末444店舗)への導入を目指し、医薬品製造も薬局支援加盟店向けに拡販を図っています。 さらに同社は、M&Aで店舗を全国化し、また医師の開業支援も積極展開しております。
最新決算である2022年3月期第1四半期決算短信(連結)の売上高は259億1,400万円。 ※2021年8月6日

各事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。

※2022年3月期第1四半期決算短信(連結)

① 地域薬局ネットワーク事業

② 賃貸・設備関連事業

③ 給食事業

④ その他事業

① 地域薬局ネットワーク事業

本事業については、医薬品サプライチェーン全体に対する価値の提供を推進することを目指し、医薬品ネットワークによる薬局等の経営支援、調剤薬局の運営、医薬品の製造販売及びLINEを活用したデジタルシフト事業を行っています。
医薬品ネットワーク部門においては、2021年4月に薬価の中間年改定が開始されるなど、薬局業界を取り巻く環境は厳しさを増していますが、経営安定化へのニーズの高まりから、引き続き新規加盟件数は概ね堅調に推移したようです。
2021年6月30日現在の医薬品ネットワーク加盟件数は、同社グループ417件、一般加盟店5,950件の合計6,367件(前連結会計年度末比251件増)となっています。

調剤薬局部門においては、処方箋単価は下落したものの、処方箋応需枚数が一定程度回復しており、2021年6月30日現在の店舗数は、調剤薬局417店舗、ケアプランセンター1店舗、コスメ・ドラッグストア8店舗となったようです。

医薬品製造販売部門においては、2021年6月には3成分6品目を新発売し、2021年6月30日現在、37成分74品目を販売しています。

デジタルシフト部門については、2021年6月末時点でLINE公式アカウントの友だち登録数は8.7万人を突破し、導入店舗数は350店舗となっています。
これらの結果、第1四半期連結累計期間の売上高は246億5,700万円(前年同期比3.1%増)、営業利益12億200万円(同176.5%増)となっています。

② 賃貸・設備関連事業

本事業については、不動産賃貸収入は概ね堅調に推移した一方、サービス付き高齢者向け住宅の入居件数は、新型コロナウイルス感染症の影響により、営業活動が制限されたことから伸び悩んだようです。 また、新型コロ ナウイルス感染症対策費用の支出の増加等もあったようでした。
これらの結果、第1四半期連結累計期間の売上高は7億3,900万円(前年同期比2.3%増)、営業損失200万円(前年同期は営業利益600万円)となっています。

③ 給食事業

本事業については、新型コロナウイルス感染症の影響により給食提供数が減少したことや、不採算施設の撤退及び仕入業者変更による収益改善等により、売上高5億8,600万円(前年同期比4.4%減)、営業損失100万円 (前年同期は営業損失1,900万円)となっています。

④ その他事業

訪問看護事業は売上高7,400万円(前年同期比46.4%増)、営業損失700万円(前年同期は営業損失1,100万円)となっています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額: 220億6,300万円 ※※2021年11月2日終値ベース
・総資産: 630億2,900万円 ※2022年3月期第1四半期
・資本金: 21億2,800万円 ※2022年3月期第1四半期
・売上高: 259億1,400万円 ※2022年3月期第1四半期
・従業員数: 3,521名(連結) ※2021年3月期

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2019年3月 98,232 1,428 1,501 462 15.3 10
2020年3月 105,241 1,615 1,560 -895 -29.5 10

2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年3月 104,257 3,429 3,479 2,198 72.5 10

最新決算である2022年3月期第1四半期決算短信(連結)は以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円)
2022年3月 25,914 667 935 583 19.37

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:720円(2021年11月2日終値)
・予想PER:12.06倍    ※2022年3月期の予想EPS59.69より算出
・実績PBR:1.86倍    ※BPS387.80(2021年3月期) 
・予想配当利回り:1.39%  ※2022年3月期10円予想
・年初来高値:994円(2021年4月20日)
・年初来安値:554円(2021年1月29日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、メディカルシステムネットワークの現状を把握します。2021年3月期の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

・総資産     644億4,800万円
・自己資本比率      17.3%
・有利子負債   315億1,700万円
・利益剰余金   83億500万円

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が315億1,700万円、自己資本比率も17.3%と2割をきっています。
また実績PBRは1.86倍ですが、利益剰余金は83億500万円とプールはしっかりあります。 同社の来期業績予想などを考慮すると、財務的に極端な問題はないとも考えられます。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2021年3月期)の売上高を2020年度の1,052億4,100万円と比較すると-0.9%減となっていますが、来期業績予想は1,057億円を見込んでおり、復調の兆しをはらんでもいます。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年3月期

営業活動によるキャッシュ・フローは、52億500万円の収入(前年同期は42億3,200万円の収入)となっています。主な要因は、税金等調整前当期純利益39億6,700万円及び減価償却費18億5,900万円並びにのれん償却額11億3,600万円によるものとしています。
本業でしっかり稼げているようです。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動によるキャッシュ・フローは、14億8,500万円の支出(前年同期は23億8,300万円の支出)となっています。主な要因は、有形固定資産の取得による支出13億7,500万円によるものとしています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動によるキャッシュ・フローは、53億1,200万円の支出(前年同期は16億8,700万円の支出)となっています。主な要因は、借入金の減少額46億3,400万円及びリース債務の返済による支出3億6,800万円によるものとしています。
現金及び現金同等物は、前期より15億9,200万円減少し100億8,800万円となっています。

6. トピック:成功の鍵を握る3つの行動原点

① 安心を届けること

② つながりを生み出すこと

③ 挑戦を続けること

① 安心を届けること

医療と健康に携わるプロフェッショナルとして、気持ちに寄り添い笑顔ある暮らしを支えます。

② つながりを生み出すこと

理念を共有する仲間とともに、互いに認め合い地域を支えるネットワークの起点となります。

③ 挑戦を続けること

あるべき姿を求め、一人ひとりが成長し、新たな価値の創造にチャレンジします。


2022年3月期の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2022年3月 105,700 3,500 4,000 1,800 59.69 10

7. まとめ

今回はメディカルシステムネットワークを分析しました。

株価は720円(2021年11月2日現在)で時価総額も220億6,300万円(2021年11月2日現在)と値動きは軽い銘柄です。
実績PBRは1.86倍(2021年11月2日現在)、同社の予想PERは12.06倍(2021年11月2日現在)また、東証一部の小売業における平均PERは42.30倍(2021年11月2日現在)です。
ファンダメンタルズでは、PBRこそやや割高指標ではありますが、PERはかなり割安水準にあると考えられます。

また、同社は2021年10月28日に、2022年3月期第2四半期連結業績予想の上方修正を発表しました。 これに伴い、2022年3月期(通期)連結業績予想の修正にも自然と期待が込められます。
医療オンライン化の動向と業績の行方を見定めながら、同社は1~3年間など長期的な投資が向いていると思います。 今後も同社の行方には要注目です。