ホットリンク(3680)

ホットリンクは、SNS、ブログ、掲示板などのソーシャルビッグデータ解析の、SNSマーケティング支援を軸とする企業です。
現在、新型コロナウイルスの影響もあって、業務効率化に際し、企業のデジタル化投資需要は旺盛を極めています。また、デジタル庁創設に伴うDX化への流れも追い風となり、同社の商機は高まるとの見方があります。 そこで今回は、DX化の流れに乗るホットリンクを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。

1. 会社概要

2000年、株式会社ホットリンクを設立以来、生活者とAIをつなぐグローバル規模の情報流通のプラットフォーム提供を担い、知識循環型社会の一端を支えてきました。
そして、ネットの次なる進化において、今度こそ、世界をリードし、世界中の人々にサービスを提供し、人類の進化に貢献できるグローバル企業を目指してもいます。

同社の沿革は、以下のとおりです。


2000年:東京都渋谷区代々木にて株式会社ホットリンク設立

2005年:株式会社オプトと資本業務提携。

2008年:ソーシャル・ビッグデータ分析ツール「クチコミ@係長」正式版をリリース

2010年:「Infinity Ventures Summit 2011 Fall in Kyoto」の新サービスコンテストにおいて、「株ロボット (金融予測サービス)」が1位受賞

2011年:「クチコミ@係長」が、「ASP・SaaS・クラウドアワード2011」先進技術賞を受賞

2012年: 2ちゃんねるサイトを運営する東京プラス株式会社及び有限会社未来検索ブラジルと2ちゃんね るサイトの掲載情報に関し独占商用利用許諾契約の締結を得る(個人向けサービスは含まない)

2013年:東京証券取引所マザーズに株式を上場

2018年:SNSマーケティング支援サービスを提供開始

2019年:ブロックチェーン研究開発プロジェクトを開始、第1弾としてSAMURAI Security株式会社と投資 契約締結

2. 事業の特徴

SNSマーケティング支援の他、ビッグデータの販売と中国市場向け販促支援も手掛けています。新規のインスタグラム向けも伸長し、新規事業の越境ECプラットフォームも拡大中です。 そして、世界のビッグデータを保有し、データ分析を通じた原因特定や仮説検証、プロモーションの提案を行っています。
また、若年層に強い動画ティックトック向けのマーケティング支援商品を準備中で、来期リリース予定としているようです。
最新決算である2021年12月期第3四半期決算短信(連結)の売上高は43億1,600万円。 ※2021年11月12日

※同社はソーシャルメディアマーケティング支援事業の単一セグメントでありますが、事業区分は、SNSマーケティング支援事業、クロスバウンド事業及びDaaS事業の各サービスにより構成されています。 ※2021年12月期第3四半期決算短信(連結)

・SNSマーケティング支援事業当事業

当事業の売上高は13億3,400万円(前年同期比43.5%増)となっています。これは主に、拡大する事業と位置づけているビジネスである、SNS広告・SNS運用コンサルティングが引き続き好調だったことによるものとしています。
また、SNS分析ツールについては、営業人員をSNS広告・SNS運用コンサルティングに集中したことによって、堅調に推移し、前年同期と比較し増加となったようです。

・クロスバウンド事業

当事業の売上高は17億800万円(前年同期比147.6%増)となっています。これは主に、訪日中国人向けプロモーション(インバウンド)需要は停止しているものの、安定して経済回復を続ける中国市場向けプロモーション(アウトバウンド)において、高まる顧客企業の需要の積極的な獲得に努めたことによるものとしています。
また、越境ECの新開発サービスが当第3四半期連結累計期間より売上に貢献したようです。

・DaaS事業 当事業

当事業の売上高は12億7,400万円(前年同期比7.3%減)となっています。これは主に、SNSデータアクセス権の1つが契約更新をしなかったことにより、前年同期から微減したことによるとしています。
また、これは地政学的な問題によるものと捉えており、同社の米国子会社であるEffyis,Inc.は引き続き、世界中のソーシャル・ビッグデータを保有するメディアとの間で良好な関係を維持し、安定したデータ提供や新規メディアからのデータアクセス権の契約を順調に獲得していくとしています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額: 147億2,700万円 ※2021年12月7日終値ベース
・総資産: 68億6,200万円 ※2021年12月期第3四半期
・資本金: 24億2,700万円 ※2021年12月期第2四半期
・売上高: 43億1,600万円 ※2021年12月期第3四半期
・従業員数: 152名(連結) ※2020年12月期

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 税前利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2018年12月 3,241 328 305 111 7.8 0
2019年12月 3,695 -1,699 -1,707 -1,634 -106.4 0

2020年12月期(2020年1月1日~2020年12月31日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 税前利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2020年12月 4,385 -25 -84 18 1.2 0

最新決算である2021年12月期第3四半期決算短信(連結)は以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 税前利益 当期利益 1株益(円)
2021年12月 4,316 170 735 547 35.27

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:929円(2021年12月7日終値)
・予想PER:25.46倍    ※2021年12月期の予想EPS36.49より算出
・実績PBR:4.02倍    ※BPS231.24(2020年12月期)
・予想配当利回り:0%  ※2021年12月期0円予想
・年初来高値:1,067円(2021年11月29日)
・年初来安値:469円(2021年1月18日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、ホットリンクの現状を把握します。2021年12月期第3四半期の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

・総資産     68億6,200万円
・自己資本比率      52.5%
・有利子負債   11億800万円 ※十万円以下切り捨て
・利益剰余金   -14億5,800万円 ※十万円以下切り捨て

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が11億800万円ありますが、自己資本比率は52.5%と5割強です。
しかし実績PBRは3.85倍、利益剰余金もマイナス14億5,800万円となっています。 財務や配当金の可能性などを慎重に見定めていく必要性もあると考えます。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2021年12月期第3四半期)の売上高を2020年度の29億9,500万円と比較すると44.1%もの増加です。通期売上高予想も60億9,900円と復調の兆しをはらんでもいます。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

営業活動の結果得られた資金は4億8,000万円(前年同期は2億700万円の増加)となり、この主な要因は、税引前四半期利益7億3,500万円、非資金項目の調整である減価償却費及び償却費2億9,500万円により資金が増加した一方、非資金項目である金融収益5億4,900万円を調整したことによるものとしています。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動の結果使用した資金は、3億7,600万円(前年同期は2億2,900万円の使用)となり、この主な要因は、無形資産の取得による支出2億1,000万円、事業譲受による支出6,600万円、長期貸付による支出1億1,300万円によるものとしています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動の結果得られた資金は、3億3,400万円(前年同期は1,800万円の使用)となり、この主な要因は、ストックオプションの行使による資本の増加による収入1億2,300万円、長期借入金による収入3億9,000万円、長期借入金の返済1億3,200万円及びリース負債の返済4,600万円を行ったことによるものとしています。
現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べて4億9,000万円増加し、25億5,700万円となっています。

6. トピック:ホットリンク 5つのバリュー

ホットリンクは、「データとAIで意思決定をサポートする」ミッションと、「ソーシャルメディアマーケティングにスタンダードを創る」ビジョンを達成するため、5つのバリューを掲げています。

① Focus on essence :本質を貫く

② Growth hack:成長し続ける

③ One team:チームで成し遂げる

④ Enjoy change:変化を楽しむ

⑤ Go global:世界を目指す


ミッション、ビジョンを達成するためには、目先の数値や表面的な課題に飛びついてはいけない。スタンダードを創るには何が必要なのか、クライアントにとって本質的な価値とは何か、貢献するには何が必要なのかを考え続け、行動することでミッション、ビジョンの達成に近づくことができる。


市場、業界が変化する中でも、クライアントに価値提供し続ける必要がある。そのために、常に情報をキャッチアップし、学び、自ら成長し続けられるかが重要。現状維持ではなく、自らを高める努力を惜しまない。


一人でできることは限られている。クライアントや社会に対して本質的な価値を提供するためには、チーム、部門、時には会社を超えて協力し、一つの目的を達成するために共に戦う。


市場・業界が劇的に変化する中で自らも変化対応が求められる。むしろスタンダードを創るためには、従来の『概念』や『当たり前』を破壊し、変化を起こすゲームチェンジャーになる。そのために変化を楽しむことが重要である。


ミッション、ビジョンの達成のためには高い志と情熱が必要である。目の前のことに捉われず、世界に影響を与えられる企業を目指す。

2021年12月期(通期)の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年12月 6,099 222 787 566 36.49 0

7. まとめ

今回はホットリンクを分析しました。

株価は929円(2021年12月7日現在)で時価総額も147億2,700万円(2021年12月7日現在)と値動きは比較的軽い銘柄です。
実績PBRは4.02倍(2021年12月7日現在)、同社の予想PERは25.46倍(2021年12月7日現在)また、東証マザーズの情報・通信業における平均PERは75.48倍(2021年12月7日現在)です。
ファンダメンタルズではPBRこそ割高ではありますが、PERはまだ割安水準にあると考えられます。

また同社は2021年11月12日、2021年12月期通期業績予想の上方修正(従来予想売上高・前期比39%増)を発表しました。さらに来期も、大幅増益が期待されているようです。 ただ、今後も業績を見定めながら、同社は1~3年間など長期的な投資が向いていると思います。
国策でもあるDX化の流れに乗る同社の行方には、今後も要注目です。