理経(8226)

理経は、IT機器の輸入販売を軸とする技術商社です。
現在、米マイクロソフト、ウォルト・ディズニー・カンパニーなどの巨大企業が、インターネットで共有するバーチャル世界、メタバース産業へ相次いで参入し、メタバースは本格的な経済圏に成長しつつあります。 12月9日には、中国通信大手OPPOの市場参入が伝わり、メタバースの話題がさらに株式市場を駆けめぐってもいます。
そこで今回は、米画像半導体大手のエヌビディアとの協業を発表し、メタバース市場への参入をあらわにした、理経を取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。

1. 会社概要

理経は創業以来、海外の優れた製品、アプリケーション、ソリューションに付加価値をつけ、国内の官公庁、自治体、民間企業、文教市場の顧客ニーズである、理想の形を一緒に具現化させてきました。
さらに、近年脚光を浴びる、IOT、AI、VR/AR、再生可能エネルギー、サイバーセキュリティなどの新しい事業領域にも果敢にチェレンジを続けています。

同社の沿革は、以下のとおりです。


1957年:創業者の石川忠造が電子工学における世界の最新技術及び製品の紹介を目的に、東京都港区 芝新橋(現西新橋)に理経産業株式会社を設立

1964年:日本初のDEC社製ミニコンピュータPDP5を東京大学原子核研究所へ納入

1971年:商号を株式会社理経に変更

1975年:理経コンピュータ株式会社を設立

1988年:東京証券取引所市場第2部に上場・ 郵政省 電波研究所に34m電波望遠鏡納入

1993年:奈良先端科学技術大学院大学に電子図書館システムを納入

1997年:NHK国際放送向けデジタル放送通信設備納入・自動二輪車用ライディングシミュレータをホ ンダと共同開発

2007年: Jアラート受信機を696自治体へ納入

2017年:消防庁技術研究において弊社提案の「有線ドローンによる災害情報把握の実証実験」が採用

2021年:本社を東京都新宿区西新宿新宿三井ビルディング二号館に移転 日本橋営業所を開設

2. 事業の特徴

理経は新技術の目利きと衛星通信技術や、大学、官庁向けに強みがあるのも特徴です。 防衛省向け電子部品は航空機エンジン廻りの消耗品用ですが、レーダー関係用も模索しているようです。また、導電性樹脂接着剤は光学用を視野に拡大を図っています。 また、IOT、AI、VR/AR、再生可能エネルギー、サイバーセキュリティの他、ドローンや防災など多岐に渡って積極展開中です。
最新決算である2022年3月期第2四半期決算短信(連結)の売上高は59億9,900万円。 ※2021年11月8日

事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。
※2022年3月期第2四半期決算短信(連結)

① システムソリューション事業

② ネットワークソリューション

③ 電子部品及び機器事業

① システムソリューション事業

大学向けシステム案件減少により、売上高は13億8,800万円(前年同 期は16億9,600万円)、営業損失は3,000万円(前年同期は4,800万円の営業損失)となっています。

② ネットワークソリューション

防災情報システムは減少してますが、保守案件増加により、売上高は3億6,900万円(前年同期は3億6,700万円)、営業損失は1億2,400万円(前年同期は1億1,500万円の営業損失)となっています。

③ 電子部品及び機器事業

子会社エアロパートナーズにおいて防衛省向け案件の前倒しがあったため、売上高は42億4,100万円(前年同期は29億4,200万円)、営業利益は2億6,800万円(前年同期比189.3%増)となっています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額: 48億5,600万円 ※2021年12月14日終値ベース
・総資産: 82億1,400万円 ※2022年3月期第2四半期
・資本金: 34億2,600万円 ※2022年3月末日
・売上高: 59億9,900万円 ※2022年3月期第2四半期
・従業員数: 162名(連結) ※2021年3月期

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2019年3月 10,090 150 150 122 8.1 3
2020年3月 10,275 54 54 41 2.8 3

2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年3月 10,139 216 226 157 10.4 3

最新決算である2022年3月期第2四半期決算短信(連結)は以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円)
2022年3月 5,999 113 66 -25 -1.69

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:313円(2021年12月14日終値)
・予想PER:67.60倍    ※2022年3月期の予想EPS4.63より算出
・実績PBR:1.11倍    ※BPS281.49(2021年3月期)
・予想配当利回り:2022年3月期未定
・年初来高値:460円(2021年11月11日)
・年初来安値:196円(2021年3月5日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、理経の現状を把握します。2022年3月期第2四半期決算の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

※2022年3月期第2四半期決算

・総資産     82億1,400万円
・自己資本比率      51.8%
・有利子負債   15億3,100万円 ※十万円以下切り捨て
・利益剰余金   3億4,100万円 ※十万円以下切り捨て

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が15億3,100万円ありますが、自己資本比率は51.8%と5割を超えています。
また実績PBRは1.11倍、利益剰余金も3億4,100万円とプールもあります。 財務的に、大きな問題はないと考えられます。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2022年3月期第2四半期)の売上高を、2021年度3月期第2四半期の売上高50億500万円と比較すると約19%の増加となっています。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2022年3月期第2四半期決算

当第2四半期連結累計期間において、10億4,500万円の減少(前年同期は2億9,700万円の増加)となっています。これは主に、税金等調整前四半期純利益5,500万円による増加があったものの、第2四半期の売上が前期比で増加したことにより売上債権の増加6億9,700万円や前受金の減少1億1,600万円が発生したこと、その他未収消費税等の増加3,800万円及び未払消費税の減少9400万円によるものとしています。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

当第2四半期連結累計期間において、5,500万円の減少(前年同期は400万円の減少)となっています。 これは主に、本社移転等による差入保証金の回収による収入1億100万円があったものの、有形固定資産の取得による支出5,800万円と投資有価証券の取得8,500万円の支出によるものとしています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

当第2四半期連結累計期間において、11億9,200万円の増加(前年同期は6,600万円の増加)となっています。 これは主に、短期借入金の増加12億4,400万円の収入と配当金の支払4,500万円の支出によるものとしています。
現金及び現金同等物は、前期より9,100万円増加し31億700万円となっています。

6. トピック:理経の強味 3つの事業領域

理経はシステムインテグレータ、専門商社では見られない、3つの事業領域を強みとしています。

① システムソリューション

② ネットワークソリューション

③ 電子部品および機器

① システムソリューション

今日のコンピューティングの姿は、DEC社製コンピュータを日本にいち早く導入した私たちにとっても、想像以上のものです。 こうした変化の先を見据えながら、インフラ基盤や文教系システム等のソリューションをトータルシステムとしてご提供。幅広い分野で貢献しています。

② ネットワークソリューション

スマートフォンやタブレット端末の普及に伴うマルチスクリーン対応のシステムに対する需要や、ますます高まる防災・減災の意識に答えるべく、最先端のネットワークソリューションを提供するとともに、無線および衛星通信を利用したユニークなマルチベンダーインテグレーターとしても多数の実績を有しています。

③ 電子部品および機器

インターネットの爆発的な普及にともない、より高度な通信インフラが求められています。それを支える高性能・高信頼性の光通信デバイスを提供するのも、私たちの仕事です。 また、日本ならではの精密電子部品をアメリカ、香港を中心に海外の通信機器・電子機器メーカーに供給しています。

2022年3月期の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2022年3月 11,000 220 160 70 4.63 未定

7. まとめ

今回は理経を分析しました。

株価は313円(2021年12月14日現在)で時価総額も48億5,600万円(2021年12月14日現在)と値動きも軽い銘柄です。
実績PBRは1.11倍(2021年12月14日現在)、同社の予想PERは67.60倍(2021年12月14日現在)また、東証二部の卸売業における平均PERは47.59倍(2021年12月13日現在)です。
ファンダメンタルズでは、PBR、PERともにやや割高指標であると考えられます。

同社は2021年12月7日、「NVIDIA Omniverse Enterprise(エヌビディア・オムニバース・エンタープライズ)」の導入支援を図っていくための団体へ参加表明をしました。そしてこの参画により、顧客向けにOmniverseを活用したシミュレーションやメタバース活用についての提案を開始するとしています。
今後もコロナ渦の動向とメタバース事業に関する進捗などを見定めながら、同社は2~3年間など長期的な投資が向いていると思います。 今後、市場規模の拡大が観測されるメタバース関連の一角として、注目され始めている同社の行方には要注目です。