ソーバル(2186)

ソーバルはキャノンやソニー向けのエンジニアリングに強みを持つ、組み込みソフトの受託開発及び技術者派遣を展開する企業です。

アベノミクス相場として定義される2012年から20年までの期間で最も時価総額を増加させた企業群は人材サービス関連でした。そして、ここに至って最重要視すべき項目として浮上しているのが、“AIを扱う”データサイエンティストなど先端IT人材の確保です。これを商機として取り込む企業群は要注目の存在となりえます。
そこで今回は、AI・IoT分野を中軸としたビジネスに経営の重心を置く、ソーバルを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。

1. 会社概要

ソーバルは1983年創業以来、「技術で社会に貢献する」という理念のもと、社員が技術力と人間力を高めることのできる環境を一貫して構築してきました。
そして、コンシューマ向け製品をはじめ、WEB、医療、自動車関連など幅広い分野で顧客のニーズに応え、従来のソフトウエア開発に留まらず、組込み・ハードウエア開発、マニュアル制作、品質評価、自動運転技術、IoT、AIなど技術の提供領域を拡大しています。

同社の沿革は、以下のとおりです。


1983年:電子計算機販売及びソフトウエア開発等を目的に、美和産業株式会社設立

1988年:キヤノン株式会社との開発受託取引が開始

1989年:美和産業株式会社からトオタス株式会社に商号変更

1994年:東海テック株式会社(平成3年11月設立)が同社との株式交換により持株会社となる

2005年:RFID開発センターの前身となるコアテクノロジー研究開発センターを立上げ、RFIDの本格 的研究を開始・トオタス株式会社をソフトイングローバル株式会社に商号変更

2006年:ソフトイングローバル株式会社をソーバル株式会社に商号変更

2008年:ジャスダック証券取引所に株式を上場

2013年:株式会社大阪証券取引所と株式会社東京証券取引所の合併に伴い、東京証券取引所JASD AQ(スタンダード)に株式を上場

2015年:RFID事業を譲渡

2017年:株式会社ユビキタスよりIoTプラットフォームに関連する事業を譲受け

2. 事業の特徴

ソーバルは、自動運転分野における実績も高く、AIエンジニアリングでは映像機器開発で培った画像処理技術を武器に、ディープラーニングを活用した開発も手掛けます。また、ソニーグループ やトヨタ自動車など大企業を主要顧客としており、成長に向けた強固な収益基盤を持っているのが特徴です。 さらに、AI関連に的を絞った直接受注型の新規企業の開拓を強化中で、M&Aにも意欲的な姿勢があります。
最新決算である2022年2月期第2四半期決算短信(連結)の売上高は40億2,700万円。 ※2021年9月30日

事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりですが、同社グループは単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしていません。 ※2022年2月期第2四半期決算短信(連結)

当第2四半期連結累計期間においては、新型コロナウイルス感染症の影響による景気の低迷、生産活動も停滞するという厳しい状況が続きました。このような経済環境の中、同社グループにおいては、堅調な受注とともに、人材の確保・育成への注力およびテレワークの定着・支援をはじめとする感染症対策の徹底を行いました。稼働・営業への影響を軽微に抑えたことで、当初の想定を上回る稼働の増加につながり、顧客からのニーズにも応えることができたようです。

これらの結果、当第2四半期連結累計期間における売上高は40億2,700万円(前年同期比10.5%増)、営業利益は2億9,000万円(同103.3%増)、経常利益は3億1,800万円(同23.8%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は2億800万円 (同36.9%増)となっています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額: 86億5,800万円 ※2021年12月21日終値ベース
・総資産: 43億3,400万円 ※2022年2月期第2四半期
・資本金: 2億1,400万円 ※2022年2月期第2四半期
・売上高: 40億2,700万円 ※2022年3月期第2四半期
・従業員数: 963名(連結) ※2021年2月期

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2019年2月 8,190 621 631 417 51.2 27
2020年2月 8,344 633 645 436 55.0 30

2021年2月期(2020年3月1日~2021年2月28日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年2月 7,531 251 557 378 48.1 32

最新決算である2022年2月期第2四半期決算短信(連結)は以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円)
2022年2月 4,027 290 318 208 26.52

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:1060円(2021年12月21日終値)
・予想PER:22.18倍    ※2022年2月期の予想EPS47.79より算出
・実績PBR:2.52倍    ※BPS420.22(2021年2月期)
・予想配当利回り:3.11%  ※2022年2月期33円予想
・年初来高値:1,129円(2021年8月2日)
・年初来安値:900円(2021年1月5日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、ソーバルの現状を把握します。2021年2月期と2022年2月期第2四半期決算の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

※2022年2月期第2四半期決算

・総資産     43億3,400万円
・自己資本比率      76.3%
・有利子負債   0円
・利益剰余金   33億600万円 ※十万円以下切り捨て

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が0円、自己資本比率も76.3%と7割を超えています。 また実績PBRは2.52倍ですが、利益剰余金は33億600万円とプールもしっかりあります。 財務的に大きな問題はないと考えられます。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2022年2月期第2四半期)の売上高を、2021年度2月期第2四半期の売上高36億4,500万円と比較すると10.5%の増加となっています。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年2月期決算

営業活動の結果得られた資金は3億6,900万円(前連結会計年度に得られた資金は9億900万円)となっています。これは主に、税金等調整前当期純利益5億5,700万円の計上などの資金増加要因が、法人税等の支払額2億6,000万円などの資金減少要因を上回ったことによるものとしています。 本業でしっかり稼げているようです。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動の結果使用した資金は1,300万円(前連結会計年度に使用した資金は2,100万円)となっています。これは主に、有形固定資産の取得による支出700万円、無形固定資産の取得による600万円の支出などによるものとしています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動の結果使用した資金は2億4,200万円(前連結会計年度に使用した資金は5億7,300万円)となっています。これは、配当金の支払額2億4,200万円によるものとしています。
現金及び現金同等物は、前期より1億1,300万円増加し、22億9,200万円となっています。

6. トピック:顧客の求める「高・守・即」を実践

ソーバルは今後も事業拡大を推し進めるため、顧客の求める「高・守・即」を実践しています。

① 高
高信頼・高技術・高品質・高性能・高意欲・高知識・高効率

② 守
守納期・守環境・守機密・守法令

③ 即
即対応

2022年2月期の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2022年2月 8,100 580 600 376 47.79 33

7. まとめ

今回はソーバルを分析しました。

株価は1060円(2021年12月21日現在)で時価総額も86億5,800万円(2021年12月21日現在)と値動きも軽い銘柄です。
実績PBRは2.52倍(2021年12月21日現在)、同社の予想PERは22.18倍(2021年12月21日現在)また、東証JASDAQのサービス業における平均PERは31.91倍(2021年12月17日現在)です。
ファンダメンタルズでは、PBRこそ割高指標ですがPERはまだ割安であると考えられます。

同社は、2022年2月期の営業利益を前期比2.3倍の5億8000万円予想と、ほぼV字に近い形での収益回復を見込みます。また今期予想については、一段の上振れ余地があるほか、23年2月期も2ケタ成長が有力視されてもいるようです。さらに配当利回りが3.3%と高く、株主還元に前向きな点も高く評価できます。 ただ、見込み通りとなるか業績の行方を見定めていく必要もあるため、同社は1~3年間など長期的な投資が向いていると思います。
加速的拡大を遂げるAI市場において、時代の要請ともいえる、デジタル人材を成長のキーワードとする同社の行方には要注目です。