キョウデン(6881)
キョウデンは、産業機器向けを軸にプリント配線基板を展開する企業です。
経済産業省は11月26日、閣議決定された2021年度補正予算案に375億円の「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」が盛り込まれたことを明らかにしました。実際の制度実施には国会での補正予算案の成立が必要となりますが「グリーン成長戦略」で掲げた35年までに乗用車新車販売で電動車100%とする政府目標の達成につなげたいようです。
英国ではジョンソン首相が11月22日に、新築の住宅や商業施設などの建築物にEV充電設備の設置を義務付ける方針を表明しました。今後はEV普及に欠かせない充電設備の増設が国内外で本格化することが予想されます。
そこで今回は、ワイヤレス給電対応の銅コイル基板の量産対応を開始することで市場の注目を集める、キョウデンを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。
1. 会社概要
キョウデンは家電販売店からスタートしました。電子機器、工業用ロボット、一般電化製品を販売し、その家電販売店の裏で数名がプリント基板を作り「今日から電器屋」という事から「キョウデン」と名付けられました。
この出発点であり、中心であり、基盤である「プリント基板」を大事な柱として、今では国内電子事業、海外電子事業、工業材料事業の3つのビジネスを展開。そして、半導体製造装置・産業機器・インフラ・医療機器向けプリント基板の、トップシェアメーカーにまで成長しています。
同社の沿革は、以下のとおりです。
1983年:電子機器、工業用ロボットの設計及び一般電化製品の販売を目的として、株式会社キョウデンを設立
1985年:設計から製造までの一貫メーカーとして、多品種少量プリント配線基板の製造・販売を開始
1993年:昭和鉱業株式会社(現昭和KDE株式会社)の第三者割当増資にて資本参加
1997年:日本証券業協会に株式を店頭登録
1999年:東京証券取引所市場第二部に株式を上場
2001年:トーエイ電資株式会社(現当社)及びTOEIDENSHI(THAILAND)CO.,LTD(現KYODEN (THAILAND) CO.,LTD.)を連結子会社化
2008年:株式会社アイレックスより新設分割した株式会社キョウデンファインテック(現当社)の全株 式を取得し、同社を連結子会社化
2010年:子会社である昭和KDE株式会社、富士機工電子株式会社(現当社)の全株式を取得し、完全子会社化
2015年:子会社である昭和KDE株式会社が、ジャンテック株式会社の株式を取得し、同社を連結子会社化
2020年:子会社である昭和KDE株式会社が、ジャンテック株式会社を吸収合弁
2. 事業の特徴
キョウデンは、産業機器軸に設計開発から実装、組み立てまで一貫体制なのが特徴です。そして工業材料事業も手掛けています。
基板は産業機器向けの受注が想定超で、タイも車載用が伸長、22年3月期から3年間で200億円の設備投資も計画しているようです。
また、ビルドアップ基板向け設備も増強し、パワー半導体向け高速厚銅メッキ工法による高放熱基板も開発。さらに長野工場を拠点に、高速通信規格5G対応の電子基板の開発にも積極的に取り組む姿勢をみせています。
最新決算である2022年3月期第2四半期決算短信(連結)の売上高は273億900万円。 ※2021年11月11日
事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。 ※2022年3月期第2四半期決算短信(連結)
① 電子事業
② 工業材料事業
① 電子事業
国内及び海外基板に関しては、2021年3月期第3四半期から需要が急速に回復し、車載・インフラ関係・センサーモジュールデバイスいずれも前年同期比を上回る結果になったようです。特にアミューズメント機器に関しては前年同期比68%増、産業機器においてはロボット・制御装置を中心に前年同期比20%を上回っています。
EMS事業に関しても、インフラ関連・精密機器を中心に堅調に推移し、電子事業全体の売上高は前年同期比22.5%増の216億3,400万円の増収となっています。
セグメント利益に関しては、タクト改善及び省人化・ロボット化をベースとした生産効率の改善効果もあり、前年同期比256.3%増の 21億4,700万円となっています。
② 工業材料事業
工業材料事業においては、国内製造業における景気回復を背景に、主力製品であるグラスファイバー原料と耐火物の売上が伸びたほか、都市インフラ関連製品の一部が需要の端境期に当たり、前年同期の水準を下回った以外は全般的に堅調に推移しています。一方で原料費も含めた製造原価の低減や経費の圧縮、生産効率化等による利益確保に努めたようです。
これらの結果、売上高は前年同期比8.9%増の56億7,500万円、セグメント利益は前年同期比27.5%増の4億6,900万円となっています。
3. 会社規模
会社規模は、以下のとおりです。
・時価総額: 402億300万円 ※2021年12月28日終値ベース
・総資産: 481億5,000万円 ※2022年3月期第2四半期
・資本金: 43億5,800万円 ※2022年3月期第2四半期
・売上高: 273億900万円 ※2022年3月期第2四半期
・従業員数: 2,408名(連結) ※2021年3月31日現在
4. 業績
過去2年間の業績は次のとおりです。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2019年3月 | 56,357 | 3,972 | 3,971 | 3,036 | 61.1 | 10 |
2020年3月 | 53,160 | 2,188 | 2,142 | 1,621 | 32.6 | 5 |
2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績は、以下のとおり。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2021年3月 | 47,016 | 2,366 | 2,504 | 2,631 | 53.0 | 10 |
最新決算である2022年3月期第2四半期決算短信(連結)は以下のとおり。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) |
---|---|---|---|---|---|
2022年3月 | 27,309 | 2,616 | 2,634 | 1,796 | 36.15 |
株価・株価指標は以下のとおりです。
・株価:769円(2021年12月28日終値)
・予想PER:13.65倍 ※2022年3月期の予想EPS56.35より算出
・実績PBR:1.74倍 ※BPS443.20(2021年3月期)
・予想配当利回り:1.95% ※2022年3月期15円予想
・年初来高値:769円(2021年12月28日)
・年初来安値:298円(2021年4月27日)
5. 財務分析
BS・PL・CS分析から、キョウデンの現状を把握します。2022年3月期第2四半期決算の数字で検討します。
① BS分析
まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ
※2022年3月期第2四半期決算
・総資産 481億5,000万円
・自己資本比率 45.7%
・有利子負債 102億1,500万円 ※十万円以下切り捨て
・利益剰余金 146億8,500万円 ※十万円以下切り捨て
総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が 102億1,500万円 ありますが、自己資本比率は45.7%と4割を超えています。
また実績PBRは1.74倍とやや割高指標にはなりますが、利益剰余金も146億8,500万円とプールもしっかりあります。
財務的には、まず大きな問題はないと考えられます。
② PL分析
損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2022年3月期第2四半期)の売上高を、2021年度3月期第2四半期の売上高228億6,600万円と比較すると19.4%の増加となっています。
③ CS分析
キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。
※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる
<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2022年3月期第2四半期決算
営業活動により得られた資金は15億6,700万円(前第2四半期連結累計期間は20億3,000万円の獲得)となっています。これは主に、税金等調整前四半期純利益26億3,400万円、減価償却費9億5,600万円、棚卸資産の増加額13億4,200万円及び法人税等の支払額7億5,600万円によるものとしています。 本業でしっかり稼げているようです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動により使用した資金は7億8,500万円(前第2四半期連結累計期間は11億4,900万円の使用)となっています。 これは主に、固定資産の取得による支出7億9,300万円及び固定資産の売却による収入1,000万円によるものとしています。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動により使用した資金は26億4,100万円(前第2四半期連結累計期間は17億300万円の獲得)となっています。これは主に、借入金の純減少額18億1,000万円、ファイナンス・リース債務の返済による支出2億1,000万円及び配当金の支払額5億100万円によるものとしています。
現金及び現金同等物は、前期より17億7,700万円減少し69億300万円となっています。
6. トピック:快進撃 3つの強み
キョウデンは今後も発展の極みに向けて、3つの強みを掲げています。
① 最先端技術
② 業界最速レベルの短納期
③ 国内・海外での量産体制
① 最先端技術
5G通信対応、高多層、ビルドアップ基板や高周波、高密度、高放熱、大電流基板など、最先端の技術で対応。
② 業界最速レベルの短納期
貫通基板1日、ビルドアップ基板2日の圧倒的な短納期製造を実現。キョウデン史上最速の「ミラクルα」もサービス開始。
③ 国内・海外での量産体制
半導体製造装置をはじめとした産業機器、医療機器、通信モジュールの小ロット多品種にも対応。
2022年3月期の業績予想は、以下のとおりです。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2022年3月 | 54,500 | 4,100 | 4,000 | 2,800 | 56.35 | 15 |
7. まとめ
今回はキョウデンを分析しました。
株価は769円(2021年12月28日現在)で時価総額も402億300万円(2021年12月28日現在)と値動きも極端に重くはない銘柄です。
実績PBRは1.74倍(2021年12月28日現在)、同社の予想PERは13.65倍(2021年12月28日現在)また、東証二部の電気機器における平均PERは15.13倍(2021年12月28日現在)です。
ファンダメンタルズでは、PBRこそ割高指標ですが、PERはまだ割安圏内にあると考えられます。
また同社は、プリント配線基板を主力展開していますが、車載向けやセンサーモジュール向けなどでも高水準の需要を獲得しており、通期見通しについては10月13日の段階で上方修正を発表。営業利益は前期比73%増の41億円を見込み、続く2023年3月期は、2007年3月期に達成した過去最高利益45億5,200万円に迫る可能性も秘めています。
今後も業績の行方を見定めながら、同社は2~3年間など長期的な投資が向いていると思います。
パワー半導体、EV関連、さらには5G関連でもある、同社の行方には要注目です。