ユニバンス(7254)

ユニバンスは、日産自動車を主要販売先とする自動車部品メーカーです。
カーボンニュートラルの実現に向けて、各国の自動車メーカーがEVシフトを加速しています。トヨタも本気度をアピールしたことで、EV関連への関心が株式市場では再び高まりを見せ始めました。
そこで今回は、EVシフトへの動きに早くから対応するユニバンスを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。

1. 会社概要

ユニバンスは創業以来、鍛造・切削加工・熱処理・仕上げ加工等、生産現場のあらゆるニーズに応えてきました。そこで磨いた独自の技術力は、多くの顧客から高い評価を受けています。現在は、アメリカ、インドネシア、タイの3カ国に工場を構えます。各工場では、FF車用のトランスファーやメインギヤ等、日本国内と変わらぬクオリティの製品を生産し、現地のユーザーに供給しています。

同社の沿革は、以下のとおりです。


1937年:鈴木一郎、名古屋市に富士鉄工所を創業

1944年:鷲津(現湖西市)に工場移転。航空機部品の生産を行う

1960年:資本金1,250万円で湖西市鷲津にて(株)鈴木鉄工所として創業・鈴木自動車工業(株)(現スズキ(株))、(株)富士鉄工所の自動車部品の製造開始

1962年:浜松市小沢渡団地内に新工場を建設し移転・いすゞ自動車(株)とトラック部品の取引開始

1963年:東証2部に上場

1973年:(株)クボタと農業機械部品の取引開始

1977年:NTN(株)と等速ジョイント部品の取引開始

1986年:日産品質管理賞(NQC賞)受賞・ アイエス精機株式会社に社名変更

1990年:米国フォード社のQ-1賞受賞

1991年:社名を株式会社富士鉄工所から株式会社フジユニバンスに変更

2005年:株式会社フジユニバンスとアイエス精機株式会社は対等合併し株式会社ユニバンスとなる

2006年:四輪駆動装置「トランスファー」の生産累計600万台を達成

2018年:米国現地法人UNIVANCE AMERICA INC.設立

2. 事業の特徴

同社は、ミッション、アクスル等が主力で、農機向けも手掛けています。自動車部品はコロナ渦が薄れ、国内外で回復基調です。 また、EV向け駆動装置「eアクスル」への引き合いも旺盛で、独立系の強みを生かし22年度以降の販売に向け戦力を詰めています。 最新決算である2022年3月期第2四半期決算短信(連結)の売上高は245億1,500万円。 ※2021年11月8日

事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。 ※2022年3月期第2四半期決算短信(連結)

① ユニット事業

② 部品事業

③ その他

① ユニット事業

売上高は、新型コロナウイルス感染症による顧客カーメーカーの操業低下の影響を受けた前年同期に比べ北米市場を中心に大幅に回復し、160億9,300万円でした。セグメント利益については、売上増加の影響等により14億7,200万円(前年同期は18億1,900万円の損失)となっています。

② 部品事業

売上高は、ユニット事業と同様、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた前年同期に比べ大幅に回復し、83億9,800万円でした。セグメント利益については、売上増加の影響に加え商品収益力の向上等により4億3,300万円(前年同期は5億8,000万円の損失)となっています。

③ その他

セグメント利益については、3,100万円(前年同期は1,600万円の損失)となっています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額: 248億9,400万円 ※2022年1月11日終値ベース
・総資産: 446億2,900万円 ※2022年3月期第2四半期
・資本金: 35億円 ※2022年3月期
・売上高: 245億1,500万円 ※2022年3月期第2四半期
・従業員数: 2,187名(連結) ※2021年3月31日現在

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2019年3月 59,924 1,646 1,453 935 44.9 8
2020年3月 56,288 -517 -1,153 -3,562 -171.0 3

2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年3月 46,249 -661 -253 -1,313 -63.1 2

最新決算である2022年3月期第2四半期決算短信(連結)は以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円)
2022年3月 24,514 1,938 1,847 1,586 76.17

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:1,064円(2022年1月11日終値)
・予想PER:9.64倍    ※2022年3月期の予想EPS110.41より算出
・実績PBR:1.29倍    ※BPS826.62(2021年3月期)
・予想配当利回り:0.56%  ※2022年3月期6円予想
・年初来高値:1,152円(2022年1月5日)
・年初来安値:210円(2021年1月7日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、ユニバンスの現状を把握します。2021年3月期と2022年3月期第2四半期決算の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

※2022年3月期第2四半期決算

・総資産    446億2,900万円
・自己資本比率     38.6%
・有利子負債  95億3,700万円 ※十万円以下切り捨て
・利益剰余金  105億8,700万円 ※十万円以下切り捨て

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が95億3,700万円で、自己資本比率は38.6%と4割をきっています。 実績PBRは1.29倍ですが、利益剰余金は105億8,700万円とプールはしっかりあります。 財務的には、大きな問題はないと考えられます。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2022年3月期第2四半期)の売上高を、2021年度3月期第2四半期の売上高169億8,200万円と比較すると約44%も増加しています。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年3月期

営業活動の結果得られた資金は29億4,700万円(前年同期比44.8%増)となっています。資金の主な増加要因は、減価償却費38億2,200万円、仕入債務の増加14億3,100万円。資金の主な減少要因は、売上債権の増加21億3,500万円、税金等調整前当期純損失5億5,400万円によるものとしています。
本業でしっかり稼げているようです。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動の結果使用した資金は38億700万円(前年同期比35.5%減)となっています。これは主に、有形固定資産の取得による支出38億4,400万円によるものとしています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動の結果得られた資金は5億2,900万円(前年同期比85.3%減)となっています。これは主に、長期借入金の増加17億4,000万円によるものとしています。
現金及び現金同等物は、前期より3億円減少し28億2,700万円となっています。

6. トピック:社名に込めた5つの思い

ユニバンスという社名は、以下の「UNIQUE」「UNIVERSAL」「UNIT/UNITED」「ADVANCE」からなる造語です。

・独自(UNIQUE)
・駆動系ユニット(UNIT)
・世界(UNIVERSAL)
・前進(ADVANCE)
・団結(UNITED)

ユニバンスには、個性を大切にし、団結しながら、主要製品である駆動系ユニットを中心に、世界を相手に、前進していこうという思いが込められています。

2022年3月期の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2022年3月 48,000 3,000 2,900 2,300 110.41 6

7. まとめ

今回はユニバンスを分析しました。

株価は1,064円(2022年1月11日現在)で時価総額は248億9,400万円(2022年1月11日現在)と値動きも比較的軽い銘柄です。
実績PBRは1.29倍(2022年1月11日現在)、同社の予想PERは9.64倍(2022年1月11日現在)また、東証二部の輸送用機器における平均PERは14.10倍(2022年1月11日現在)です。
ファンダメンタルズでは、PBRこそやや割高指標ですが、PERはまだ割安水準にあると考えられます。

また同社へは、モーターやインバーター、車軸などをコンパクトに統合した電気自動車向け駆動装置「eアクスル」販売への期待が大きいようです。さらに、2022年3月期の営業損益を30億円と予想しており、14年ぶりの過去最高利益更新を見込んでもいます。
今後もコロナ渦やEVシフトへの同行を見定めながら、同社は2~4年間など長期的な投資が向いていると思います。 好調な業績に加え、EV関連の頭角を現し始めた同社の行方には要注目です。