ディア・ライフ(3245)

ディア・ライフは、都市型マンションの開発事業・収益不動産の投資事業などのリアルエステート事業、 セールスプロモーション事業を展開する企業です。
コロナ渦によって、リーマンショックを想像させる不透明感が業界全体を覆う中、同社は2021年9月期に当初目標を超え過去最高益を更新しました。さらに、自己資本比率は54.8%と業界平均を大きく上回ります。 そして、2022年9月期も最高益更新予想となっており、まさに利益が青天井の様相を呈しているようです。
そこで今回は、さらなる業容拡大の期待が高まる同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。

1. 会社概要

ディア・ライフは、2004 年の会社設立以来、東京圏に特化した、主に単身者・DINKS向けマンションの開発(リアルエステート事業)を主軸として急成長を遂げてきました。 2007年8月、会社設立から3年弱で東証マザーズへ上場、2015年8月には東証1部に昇格し、その後も著しい成長を見せ続けています。

同社の沿革は、以下のとおりです。


2004年:株式会社ディア・ライフ設立

2006年:一級建築士事務所登録

2007年年:東京証券取引所 マザーズ市場に上場

2009年:株式会社パルマファイナンシャルサービシーズ(現 株式会社パルマ)を子会社化

2010年:中古マンションのリニューアル再販事業を開始

2015年:子会社パルマ 東京証券取引所 マザーズ市場に上場

2015年:東京証券取引所 市場第一部へ上場市場を変更

2018年:株式会社パルマ 日本郵政キャピタル株式会社と資本提携 当社の子会社から関連会社へ移行

2021年:株式会社N-STAFFを傘下に持つ株式会社DLXホールディングスを子会社化

2. 事業の特徴

同社は、投資用マンション開発、販売の他にも、人材派遣やトランクルーム入金管理、滞納保証業も手掛け、コロナ渦の影響を受けた人材派遣も復調。不動産業界のみならず、金融、保険業界まで進出しています。 また、不動産投資対象を商業施設やオフィスビルにまで規模を拡大しているようです。 最新決算である2021年9月期決算短信(連結)の売上高は263億6,700万円。 ※2021年11月12日

事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。 ※2021年9月期決算短信(連結)

① リアルエステート事業

② セールスプロモーション事業

① リアルエステート事業

当連結会計年度においては、不動産投資会社・デベロッパー・不動産販売会社・海外事業者など幅広い需要に対応しています。その結果、「DeLCCS 新大塚(東京都豊島区)」などの自社開発の都市型マンションと、「八幡山(東京都杉並区)」などのアセット・デザイン&リセール(土地の開発適地化)と合わせて、合計29件を売却。 加えて、管理コストの見直しやリノベーションなどにより収益価値を高め、「DeLCCS 中野新橋(東京都中野区)」などの東京都心部に立地する収益不動産を7棟売却しています。

また、仕入に関しては、より需要の見込めるエリアを中心として、「神楽坂5丁目(東京都新宿区)」など21件の都市型マンション開発用地や、「DeLCCS 神楽坂矢来町Ⅱ(東京都新宿 区)」など11件の収益不動産の仕入を行ったようです。
これらの結果、売上高247億300万円(前期比9.9%減)、営業利益47億1,000万円(前期比46.2%増)となっています。

② セールスプロモーション事業

株式会社ディアライフエージェンシーにおいては、クライアントである大手不動産会社のモデルルームが徐々に再開されたのに加え、新たにコンシェルジュの営業を獲得する等、質の高い人材を活用した派遣先業態の多様化と拡大に努め、派遣先案件数はコロナ禍以前並みに回復したようです。

一方で、巣籠もりや在宅勤務の需要の高まりを受け、物件が早期に完売したことなどにより、派遣期間が短期化。 2021年1月に子会社化した株式会社DLXホールディングスについても、株式会社N-STAFFによる非対面での保険営業人材の派遣が、コロナ禍で対面での保険販売を避ける金融・保険業界各社のニーズを捉え、派遣先が大きく拡大したようです。
これらの結果、売上高16億6,500万円(前期比639.3%増)、営業損失1,500万円(前期は営業利益1,200万円)となっています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額: 215億1,400万円 ※2022年1月18日終値ベース
・総資産: 277億3,800万円 ※2021年9月期
・資本金: 31億2,600万円 ※2021年9月期
・売上高: 263億6,700万円 ※2021年9月期
・従業員数: 479名(連結) ※2021年9月期

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2019年9月 19,866 3,333 3,409 2,363 59.5 27記
2020年9月 27,649 2,603 2,717 1,851 47.7 19

最新決算である2021年9月期(2020年10月1日~2021年9月30日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年9月 26,367 4,016 4,114 2,686 70.4 30記

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:526円(2022年1月18日終値)
・予想PER:6.20倍    ※2022年9月期の予想EPS84.78より算出
・実績PBR:1.31倍    ※BPS402.96(2021年9月期)
・予想配当利回り:6.46%  ※2022年9月期34円予想
・年初来高値:661円(2021年11月16日)
・年初来安値:402円(2021年1月5日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、ディア・ライフの現状を把握します。2021年9月期の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

・総資産    277億3,800万円
・自己資本比率     54.8%
・有利子負債  98億1,500万円 
・利益剰余金  96億4,200万円 

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が98億1,500万円ですが、自己資本比率は54.8%と5割を超えています。 また実績PBRは1.31倍、利益剰余金も96億4,200万円とプールもしっかりあります。 財務的に大きな問題はないと考えられます。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2021年9月期)の売上高を2020年度の276億4,900万円と比較すると4.9%減となっています。来期売上高予想は非設定ですが、経常、純利益は更新予想です。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年9月期

営業活動の結果得られた資金は17億5,200万円となっています。これは主に、税金等調整前当期純利益が40億1,500万円あった一方で、仕入債務の減少額が6億8,800万円、法人税等の支払額が7億4,000万円あったことによるものとしています。 本業で稼げているようです。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動の結果得られた資金は2億7,800万円となっています。これは主に、有価証券の売買による収支が6億100万円あった一方で、子会社株式の取得による支出が2億3,400万円あったことによるものとしています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動の結果使用した資金は3億6,900万円となっています。これは主に、長期借入れによる収入が121億6,700万円、 社債の発行による収入が5億円あった一方で、長期借入金の返済による支出が119億円、配当金の支払いによる支出が7億3,700万円、自己株式取得による支出が4億9,900万円あったことによるものとしています。
現金及び現金同等物は、前期より16億6,000万円増加し147億1,700万円となっています。

6. トピック:砕けない経営方針

ディア・ライフは、企業の継続的な発展と企業価値を拡大するため、次のような経営方針を固持しています。

「私たちと出会った全ての方々の<大切な人生~dear life~>をもっと豊かにしていただきたい」との経営理念に基づき、さまざまな機会に存在し得る潜在価値を具現化し最大限に高める。そして、関係者の満足度の向上、さらには地域社会及び業界の発展に繋がると常に意識し、ビジネスに取り組む。

2022年9月期の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2022年9月 非開示 非開示 5,000 3,200 84.78 34

7. まとめ

今回はディア・ライフを分析しました。

株価は526円(2022年1月18日現在)で時価総額も215億1,400万円(2022年1月18日現在)と、比較的値動きも軽い銘柄です。
実績PBRは1.31倍(2022年1月18日現在)、同社の予想PERは6.20倍(2022年1月18日現在)また、東証一部の不動産業における平均PERは31.08倍(2022年1月18日現在)となっています。
ファンダメンタルズでは、PBRこそやや割高指標ですが、PERはまだ割安圏内です。

また同社は、業績好調に伴い来期配当利回り予想も6.46%と、上場企業(2,963社)の中でも6位(ヤフーファイナンス・2022年1月18日現在)にランクインしています。
見込み通りとなるか業績の行方を見定めていく必要もあるため、同社は2~5年間など長期的な投資が向いていると思います。 さらなる業容拡大への期待が高まる、同社の行方には要注目です。