SEホールディングス・アンド・インキュベーションズ(9478)

SEH&Iは、出版やソフトウェア開発を主軸とするグループ会社です。
現在、デジタル庁の発足に伴い市場ではDX祭りの様相を呈し始めてもいます。また、コロナ渦においては、リスキリング(学び直し)、GIGAスクール構想、AIなど、デジタル社会への推進が加速することも予測されます。
そこで今回は、電子書籍をはじめ、技術者研修やセミナーのオンライン化などに力点を置く、SEH&Iを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。

1. 会社概要

SEホールディングス・アンド・インキュベーションズは、2006年10月に株式会社翔泳社として培ってきた出版事業、ソフトウェア・ネット ワークサービス事業、コーポレートサービス事業などすべての事業を、新たに設立されたグループ会社が引き継ぐことで、SEホールディングス・アンド・インキュ ベーションズ株式会社を、純粋持株会社とする企業集団(グループ)として誕生しました。

現在、 より高い効率性と機動性を備えた新たな事業体制のもと、4つの戦略的投資分野を位置付け、IT市場における積極的なインキュベーション、企業集団の形成を行いながら、事業価値の最大化に取り組んでいます。

同社の沿革は、以下のとおりです。


1985年:東京都千代田区麹町に、資本金2000千円で株式会社翔泳社を設立・コンピューターソフトウェアのマニュアル受注制作事業を開始

1987年:書籍流通の取次口座を取得・「日本語Windowsプログラマーズガイド」を出版し、パソコン関連書籍の出版事業を開始

1995年:ゲーム開発局を新設し、ゲーム開発事業を開始

1998年:本社を東京都新宿区舟町に移転し、全部局を統合・当社株式を日本証券業協会に店頭登録

1999年:一般システム受注、携帯電話向けソフト開発事業を開始

2004年:日本証券業協会への店頭登録を取消し、ジャスダック証券取引所(現東京証券取引所)に株式を上場

2006年: SEホールディングス・アンド・インキュベーションズ株式会社へ社名変更。会社分割により純粋持株会社へ移行

2011年:有価証券投資事業を行う子会社SEインベストメント株式会社を設立

2019年:SEモバイル・アンド・オンライン株式会社がオンライン婚活支援サービス「スマリッジ」リリース

2021年:YouTubeにて「SEプラスIT教育チャネル【公式】」開設

2. 事業の特徴

SEH&Iは、翔泳社の技術書出版事業の他、マーケティング支援、スマホコンテンツ作成、技術者派遣や研修を手掛けます。
電子書籍の伸びは顕著で、IT書籍出版はWeb販売が続伸、技術者研修やセミナーもオンライン化が奏功しています。また、自社直販の書籍販売サイトも期間限定セールを継続するなど、さらなる拡大を図っているようです。
最新決算である2022年3月期第2四半期決算短信(連結)の売上高は34億3,100万円。 ※2021年10月26日

事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。 ※2022年3月期第2四半期決算短信(連結)

① 出版事業

② コーポレートサービス事業

③ ソフトウェア・ネットワーク

④ 教育・人材事業

⑤ 投資運用事業

① 出版事業

既刊書籍販売、Webメディア、イベント及び電子書籍各事業売上が期を通じて好調だ ったことから、売上高21億4,600万円(前年同期比20.0%増)、セグメント利益(営業利益)6億4,300万円(前年同期比44.5 %増)となっています。 なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は6,600万円減少し、セグメント利益(営業利 益)は100万円増加しています。

② コーポレートサービス事業

前連結会計年度後半からの業績回復基調を維持し、主要顧客中心に 一定の受託案件を確保出来たこと、及びコスト削減効果もあり、売上高3億2,200万円(前年同期比19.7%増)、セグメン ト利益(営業利益)1,400万円(前年同期はセグメント損失26百万円)となっています。

③ ソフトウェア・ネットワーク

ゲーム・アプリ受託開発事業、既存ゲームコンテンツ売上及びソリューション事業などが期初から引き続き好調に推移したことを主因に、売上高4億3,800万円(前年同期比22.1% 増)、セグメント利益(営業利益)4,500万円(前年同期比297.4%増)となっています。

④ 教育・人材事業

オンライン研修を中心としたIT人材研修事業及び医療関連人材紹介事業共に総じて好調に推移し、売上高4億3,300万円(前年同期比14.9%増)、セグメント利益(営業利益)1億3,200万円(前年同期比78.5%増)となっています。

⑤ 投資運用事業

有価証券投資運用額増加や景気回復に伴う増復配などにより配当金収入が増加し、事業環境が概ね良好に推移したことを主因に、売上高9,000万円(前年同期比30.4%増)、セグメント利益(営業利益)7,100万円(前年同期比102.0%増)となっています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額: 60億1,200万円 ※2022年1月25日終値ベース
・総資産: 105億5,500万円 ※2022年3月期第2四半期
・資本金: 15億3,400万円 ※2021年9月30日
・売上高: 34億3,100万円 ※2022年3月期第2四半期
・従業員数: 266名(連結) ※2021年9月30日

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2019年3月 5,441 403 372 255 11.3 1.4
2020年3月 6,038 450 442 206 9.2 1.4

2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年3月 6,317 924 901 573 25.6 2

最新決算である2022年3月期第2四半期決算短信(連結)は以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円)
2022年3月 3,431 722 719 476 21.69

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:256円(2022年1月25日終値)
・予想PER:6.61倍    ※2022年3月期の予想EPS38.71より算出
・実績PBR:0.95倍    ※BPS270.03(2021年3月期)
・予想配当利回り:0.78%  ※2022年9月期2円予想
・年初来高値:310円(2021年12月29日)
・年初来安値:181円(2021年7月19日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、SEH&Iの現状を把握します。 2021年3月期と2022年3月期第2四半期決算の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

※2022年3月期第2四半期決算

・総資産     105億5,500万円
・自己資本比率     56.1%
・有利子負債  26億5,100万円 ※十万円以下切り捨て
・利益剰余金   26億500万円 ※十万円以下切り捨て

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が26億5,100万円ありますが、自己資本比率は56.1%と5割を超えています。 また実績PBRは0.95倍、利益剰余金も26億500万円とプールもあります。 財務的に、大きな問題はないと考えられます。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2022年3月期第2四半期)の売上高を、2021年度3月期第2四半期の売上高28億6,300万円と比較すると約19.8%の増加となっています。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年3月期決算

営業活動の結果得られた資金は4億2,500万円(前連結会計年度比53.7%増)となっています。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益8億7,200万円、たな卸資産の減少額6,600万円であり、支出の主な内訳は、営業投資有価証券の増加額3億3,700万円及び売上債権の増加額2億9,800万円によるものとしています。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動の結果使用した資金は7,800万円(前連結会計年度比11.0%増)となっています。収入の主な内訳は、投資有価証券の売却による収入500万円であり、支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出5,200万円、無形固定資産の取得による支出2,000万円、及び投資有価証券の取得による支出1,000万円によるものとしています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動の結果得られた資金は1億1,500万円(前連結会計年度比1億8,800万円増)となっています。収入の主な内訳は、短期借入金の純増額3億2,000万円及び社債の発行による収入2億9,200万円であり、支出の主な内訳は、社債の償還による支出3億3,000万円及び長期借入金の返済による支出1億1,800万円によるものとしています。
現金及び現金同等物は、前期より4億6,400万円増加し28億5,700万円となっています。

6. トピック:SEH&Iグループ基本的な価値観

SEH&Iグループは、長期にわたる社会への貢献と自らの発展を実現させるため、『本当に正しいことに取り組み続けていくこと』を基本的な価値観としています。
そして、事業活動を通じたIT技術・サービスへの貢献による社会的寄与、業績向上への努力による資本市場への寄与、納税や雇用の創出による社会基盤への寄与など、こうした社会的価値を永続的に実現できる企業集団を目指して、高い志を持ち、全社一丸となって邁進していくとしています。

2022年3月期の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2022年3月 6,600 1,300 1,300 850 39.5 2

7. まとめ

今回はSEH&Iを分析しました。

株価は256円(2022年1月25日現在)で時価総額も60億1,200万円(2022年1月25日現在)と値動きも軽い銘柄です。
実績PBRは0.95倍(2022年1月25日現在)、同社の予想PERは6.61倍(2022年1月25日現在)また、東証JASDAQの情報・通信業における平均PERは20.09倍(2022年1月25日現在)です。
ファンダメンタルズでは、PBR、PERともに割安圏内にあると考えられます。

また同社は、2022年1月20日に2022年3月期連結業績予想の上方修正を発表しました。営業利益、経常利益は25%、当期純利益は26.9%、前回発表予想からそれぞれ上振れる予想数値となっています。
今後も業績を見定めながら、同社は2~3年間など長期的な投資が向いていると思います。 小型ながらも、着実に好業績を積み増す同社の行方には要注目です。