総合金融会社のオリックスってどんな会社?
皆さん、オリックスという会社をご存知でしょうか?2021年のプロ野球で25年ぶりに優勝したことで、オリックスについて聞く機会が増えました。
しかし、オリックスは、一体どのような事業を行っている会社なのでしょうか?オリックスという会社の名前を知っていても意外とオリックスが何をしている会社なのか知らない方は多いのではないでしょうか?
答えは、オリックスは、リース会社として設立され、現在は不動産、信託銀行、証券会社・保険などを手がけている総合金融会社です。
そこで今回は、オリックスについて説明します。かなり詳しく説明しますので、ぜひ銘柄研究や企業研究の役に立てていただければ幸いです。
1. 会社概要
まずは、オリックスの沿革を見ていきましょう。
<沿革>
1964年:オリエント・リース株式会社(現 オリックス株式会社)として設立。
1970年:大阪証券取引所第二部上場。
1971年:東京証券取引所第二部上場。
1972年:名古屋証券取引所第二部上場。オリエント・リース・インテリアを設立。
1973年:東京・大阪・名古屋証券取引所第一部上場、オリエント・オートリース(現オリックス自動車)設立。
1973年:オリエント・オート・リース(現 オリックス自動車)を設立。
1979年:ファミリー信販(現オリックス・クレジット)を設立。
1980年:宮内義彦が代表取締役社長に就任。
1988年:阪急ブレーブスを買収しプロ野球界に参入。
1989年:商号をオリエント・リース株式会社からオリックス株式会社に変更した。1998年9月16日にはニューヨーク証券取引所に上場を果たす。日本の金融業としては三菱UFJフィナンシャル・グループ(当時:三菱銀行)に次いで2番目であった。
1991年:オリックス・オマハ生命保険(現オリックス生命保険)を設立。
1998年:山一信託銀行を買収し、現在のオリックス銀行とする。
1998年:ニューヨーク証券取引所上場。オリックス環境を設立。
1999年:オリックス・リアルエステート(株)(現 オリックス不動産(株))を設立。
1999年:オリックス債権回収を設立。
2009年:オリックスグループ(CPI2008投資事業組合)傘下(持株比率39.2%)の不動産業者ジョイント・コーポレーションが会社更生法を申請した、とリリースされた。
2010年5月:マネックス証券とオリックス証券合併。
2. 事業の特徴
オリックスの事業の特徴についてまとめました。
法人営業・メンテナンスリース
セグメント収益は、IT関連機器のレンタルにおいてオペレーティング・リース収益が増加したものの、金融資産の減少に伴う金融収益の減少や商品売上高の減少により、前連結会計年度に比べて横ばいの429,799百万円になりました。
オペレーティング・リース原価およびサービス費用が増加したこと、および法人営業において買収した企業のバーゲン・パーチェス益を前連結会計年度に計上したことの反動により、セグメント利益は、前連結会計年度に比べて6%減の59,149百万円になりました。
セグメント資産は、リース純投資、営業貸付金およびオペレーティング・リース投資が減少したことにより、前連結会計年度末に比べて7%減の1,658,571百万円になりました。
不動産
セグメント収益は、新型コロナウイルス感染症の影響により当連結会計年度において運営施設の休館や稼働率低下のため運営事業のサービス収入が減少したこと、株式会社大京およびその子会社において前連結会計年度における消費税増税の駆け込み需要の反動により不動産請負工事事業のサービス収入が減少したことや不動産売上高が減少したこと、および賃 貸不動産の売却益が減少したことにより、前連結会計年度に比べて23%減の359,798百万円になりました。
上記に加え、セグメント利益は、運営事業のサービス費用が減少したものの、高齢者向け住宅の運営事業を行う子会社の売却益を前連結会計年度に計上したことの反動により、前連結会計年度に比べて69%減の24,684百万円になりました。 セグメント資産は、賃貸不動産の売却によりオペレーティング・リース投資が減少したものの、棚卸資産や賃貸資産前渡金が増加したことにより、前連結会計年度末に比べて6%増の872,095百万円になりました。
事業投資・コンセッション
セグメント収益は、前連結会計年度に子会社を売却したことによりサービス収入が減少したものの、投資先の商品売上高が増加したことにより、前連結会計年度に比べて12%増の331,222百万円になりました。
セグメント利益は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、関西3空港における旅客数や発着回数が著しく減少したことによりコンセッションにおいて持分法投資損益が減少したこと、および企業投資において子会社の売却益を前連結会計年度に計上したことの反動により、前連結会計年度に比べて92%減の3,431百万円になりました。
セグメント資産は、当連結会計年度に子会社取得に伴う営業権やオペレーティング・リース投資を計上したことにより、前連結会計年度末に比べて17%増の378,698百万円になりました。
環境エネルギー
セグメント収益は、電力販売の減少によりサービス収入が減少したため、前連結会計年度に比べて4%減の143,187百万円になりました。
セグメント利益は、インドで風力発電事業を行う投資先の売却益などを計上したことにより、前連結会計年度に比べて146%増の28,563百万円になりました。
セグメント資産は、事業用資産が減少したものの、関連会社投資が増加したことにより、前連結会計年度末に比べて6%増の506,666百万円になりました。
保険
セグメント収益は、保有契約の増加に伴う生命保険料収入の増加および変額保険にかかる資産運用益が増加したため、前連結会計年度に比べて32%増の491,894百万円になりました。
上記に加え、セグメント利益は、変額保険に関連する最低保証リスクの低減による責任準備金の戻入などを計上したことにより、前連結会計年度に比べて23%増の55,119百万円になりました。
セグメント資産は、投資有価証券の増加により、前連結会計年度末に比べて24%増の1,959,521百万円になりました。
銀行・クレジット
セグメント収益は、クレジットにおけるモーゲージバンク事業からのサービス収入および銀行事業における投資用不動産ローンからの金融収益が増加したものの、クレジットにおける営業貸付金の減少に伴う金融収益の減少により、前連結会計年度に比べて1%減の83,724百万円になりました。
セグメント利益は、クレジットにおいて新規実行件数の減少や事故発生率の低水準での推移の影響から、当連結会計年度の信用損失費用が減少したことにより、前連結会計年度に比べて23%増の48,030百万円になりました。
セグメント資産は、銀行事業において投資用不動産ローンの残高が増加したことにより、前連結会計年度末に比べて3%増の2,690,627百万円になりました。
輸送機器
セグメント収益は、航空機リース事業において自社保有機数および売却機数の減少に伴いオペレーティング・リース収益が減少したことや投資家への売却機数の減少に伴う手数料収入が減少したこと、および前連結会計年度に計上した船舶の売上高の反動により、前連結会計年度に比べて51%減の31,617百万円になりました。
上記に加え、セグメント利益は、Avolon Holdings
Limitedの持分法投資損益が減少したことにより、前連結会計年度に比べて92%減の3,755百万円になりました。
セグメント資産は、船舶関連の営業貸付金およびオペレーティング・リース投資が増加したことにより、前連結会計年度末に比べて3%増の601,762百万円になりました。
3. 会社規模
時価総額:3兆2329億円(2022年1月13日時点)
純資産総額:3兆1031億円(2021年3月時点)
資本金:2211億円(2021年3月時点)
従業員数:33139人(2021年9月時点)
4. 業績
【61.1%純利益増益】
22/3期の連結業績予想を上方修正。純利益2500億円→3100 億円(前期比61.1%増)。
前回発表予想には一定の売却益を含んでおり、本取引に伴い1,632億円を子会社株式売却益として当第4四半期に計上することで、前回発表における売却益想定を上回るため。
本取引に関連して、22/3期個別決算において営業外収益および特別損益を計上する可能性があります。このように上方修正するほど好調なオリックスですが、過去の業績も見ておきましょう。
決算期 | 売上高 | 営業益 | 経常益 | 最終益 | 修正1株益 | 1株配 |
---|---|---|---|---|---|---|
2018.03 | 2,862,771 | 336,195 | 435,501 | 313,135 | 244.4 | 66 |
2019.03 | 2,434,864 | 329,438 | 395,730 | 323,745 | 252.9 | 76 |
2020.03 | 2,280,329 | 269,681 | 412,561 | 302,700 | 237.4 | 76 |
2021.03 | 2,292,708 | 258,814 | 287,561 | 192,384 | 155.5 | 78 |
2022.03 | - | - | - | 310,000 | 259.3 | 78 |
このようにかなり高いレベルで安定していることがわかります。今後もオリックスの業績は安定して推移しそうです。
5. 財務分析
株式投資や企業研究を行う上で財務分析は非常に重要です。
いくら成長が期待できる企業でも財務基盤が安定していなければ、安定的な経営はできないからです。
財務基盤は企業にとって非常に重要なものになりますのでしっかり確認するようにしましょう。
財務分析を行う方法は様々ですが、一般的には「成長性」「収益性」「安全性」の3つの側面を見るべきだといわれています。
それではオリックスの財務基盤を「成長性」「収益性」「安全性」から見てみましょう。
(1) 成長性
成長性は一般的には増収率 (売上がどれくらいのびているかを示す指標)で判断されます。
年20%以上の増収率を達成していればかなり優秀であるといわれています。
オリックスの2020年の売上高は2兆2803億円に対し2021年の売上高は2兆2927億円とほぼ横ばいです。
しかし、売り上げの規模が非常に大きく、しかも安定しているので何の問題もないでしょう。
(2) 収益性
オリックスの最終利益は2020年が3027億円、2021年が1923億円です。 減益ではありますが、日本有数の収益力に変わりはありません。
(3) 安全性
安全性は自己資本比率が高いと良いとされています。安全性が高いとされている目安は33%です。オリックスの自己資本比率は、22.33%です。 この規模の会社であれば何の問題もないでしょう。
6. トピック:オリックス売却の弥生、 SaaSの熱狂が導いた 2400億円
オリックスが子会社で会計ソフト大手の弥生(東京·千代田)を米投資ファンドのKKRに売却すると発表しました。オリックスが2014年に買収した当時の価格が800億円超だったのに対し、今回の売却額は3倍の約2400億円に膨らみました。
弥生の評価額が7年間で急拡大した背景には、クラウド経由でソフトを提供するSaaS(ソフトウエア·アズ・ア・サービス)市場への高い成長期待があります。
「全く歯が立たなかった」。弥生の売却入札に顔を出した投資ファンドの幹部は話します。オリックスの開示資料によると、21年3月期の弥生の部門別利益は60億円。単純計算すれば、KKRによる買収額は弥生の約40年分の稼ぎに相当します。
入札手続きが始まったのは21年夏ごろ。当初はIT(情報技術)系の事業会社も関心を示していました。
しかし、最初からある程度競争力のある買収価格を示せたのはファンドのみだったようです。
最終入札に進んだのはKKRを含めた米系ファンド3社。
低金利下のカネ余りでファンドには運用マネーが大量に流れ込んでおり、ファンド勢の資金力の高さを示す買収劇となりました。
弥生は14年12月にオリックスの傘下に入って以降、業績を着実に伸ばしてきました。
初年度の15年9月期こそ前年の消費税増税に伴う特需の反動で減収だったものの、その後は6期連続で増収を達成。
21年9月期の売上高は212億円と、買収前に比べて3割増えました。
とはいえ、買収当初の3倍という売却額は、増収率を大幅に上回ります。
企業評価額が急拡大したのは業績が伸びたからというよりも、むしろ弥生の潜在的な競争力が7年間で一段と高まったためだといえます。
KKRは弥生の事業の中でも、インターネット経由でソフトを利用してもらうクラウド型のサービスを高く評価したようです。
企業の間ではソフトを各従業員のパソコンにインストールして利用する従来のデスクトップ型から、クラウド型に切り替える動きが広がっています。
導入コストが低いうえ、自動で最新版に更新するなど使い勝手が良いためです。
ソフト会社側にとっても、顧客に一度契約してもらえば継続利用を期待しやすく、機能拡充なども容易に提案できる利点があります。
半面、一度他社に顧客を奪われると奪い返すのが難しい。利益を度外視しても市場シェア獲得を急いだ方が中長期の業績拡大が狙えます。
クラウドでサービスを提供する会社をSaaS企業と呼びますが、これらの企業で赤字が続いても株式市場で高く評価されているのはこのためです。
上場企業の割高・割安を判断するには株価を一株あたり純利益で割ったPER(株価収益率)が一般的ですが、まだ利益が出ていないSaaS企業の場合は株価を一株あたり売上高で割ったPSR(株価売上高倍率)を使うのが通例です。
弥生と同じくクラウド会計ソフトを提供するマネーフォワードやフリーのPSRはそれぞれ今期業績予想ベースで23倍、22倍。
一方、KKRによる買収額と前期売上高を基に単純計算した弥生のPSRは11倍にとどまります。
上場する競合他社と比べれば、今回の買収額は割安感があると評価できます。
MM総研(東京・港)の21年4月の調査によると、会計ソフトを利用する個人事業主のうち、クラウド版の利用率は26%にとどまります。
その中で弥生は首位の57%のシェアを握ります。拡大余地の大きい市場で優位に戦えるなら弥生の企業価値を2400億円からさらに高めることは可能だとKKRは判断したようです。
数年かけて弥生を一段と成長させた後、新規株式公開(IPO)などで投資資金を回収するとみられます。
弥生の高値売却を実現したオリックスは近年、投資会社の色合いを強めています。もともとは旧社名オリエント・リースの通り、リースを軸とした金融サービスを手がけてきました。
2000年代前半には不動産ファンドなどへのローンを主力事業としていましたが、08年のリーマン・ショックで債権が焦げ付き、資金調達も難航して経営が危ぶまれたこともありました。 リーマン危機後、金利低下が一段と進んだことでリースやローンの収益が厳しくなりました。
融資から投資に事業の軸足を移すなか、リーマン危機の反省から常に信用格付けに配慮してバランスシートを膨らませすぎない方針を貫く。
投資先の事業の収益性を重視し、オリックスのもとでの成長余地が狭まったとみれば売却します。
実際にこれまでも業界内で大手の一角に数えられていたゴルフ場や高齢者向け住宅を売ってきました。
株価は21年に入ってから騰勢を強め、足元では07年以来、約14年ぶりの高値圏にあります。
投資会社への事業モデルの切り替えが投資家の間でようやく評価されてきたとみられます。PBR(株価純資産倍率)は約0.9倍と、目安となる1倍の回復が見えてきました。
もっとも、投資事業は全て好調というわけではありません。
20年1月に買収した後発薬メーカーの小林化工(福井県あわら市)では品質不正問題が発覚し、21年2月に行政処分を受けました。
22年3月期の業績には小林化エに関する投資損失も相当額、発生する可能性があり、弥生の売却益1632億円の一部を相殺する恐れがあります。
弥生への投資が成功したのは市場環境が追い風となった面も否めません。投資実績を着実に積み上げることが、投資会社としてのオリックスの評価を定着させるうえで必要になりそうです。
7. 今後の業績予想
オリックスは、総合金融会社ではありますがホテルや旅館などの運営も行っています。またリース会計なので航空機のリースも行っている会社です。
皆さんご存知の通り新型コロナウィルスの影響でインバウンドは激減しました。
ホテルや航空業界はもろにこの影響を受けています。オリックスもまさに甚大なコロナウイルスの影響受けた会社のひとつといえます。
新型コロナウィルスの影響次第というところもありますが、オリックスは金融業が主な会社なので、金融業が回復し、ワクチンがうまくいきインバウンドの需要が戻ってくれば業績のV字回復も考えられます。
もし、業績が回復しなくても、オリックスには潤沢な手元資金があります。この手元資金がある限り、すぐに倒産する事はあり得ません。
また事業を多角化していることもあり1つの事業が悪くなっても他の事業で補えるメリットがあります。
今後の業績に不透明な面はありますが、長期投資で考えれば潤沢な資金を保有するオリックスに投資する妙味は充分あるといえるでしょう。
8. まとめ
今回は、オリックスについて説明しました。オリックスは、2007年以来の株高になっており、今後の業績に不安を持っている方は多いかもしれません。 しかし、投資会社に変貌を遂げた今、さらなる利益をたたき出す可能性は十分にあります。
現在の株価は、上昇傾向にありますが決して高いわけではないと私は思います。 ぜひ今回の記事を参考にしていただきオリックスの株の購入を検討してみてはいかがでしょうか。