石井表記(6336)
石井表記は、プリント基板製造装置の大手メーカーです。
全体相場は新型コロナウイルスの動向をにらみながら神経質な展開が続いています。一方個別では、半導体や電気自動車関連を中心に依然として物色意欲は強く、プリント基板関連は人気化素地が高いようです。
そこで今回は、5Gや半導体向けパッケージ基板の需要増加が追い風となっている石井表記を取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。
1. 会社概要
石井表記は、1963年にネームプレート製造で創業しました。以来、ネームプレート製造技術をプリント基板製造に展開、印刷技術と電子技術を合わせ持つ事で機械装置の操作表示パネル分野で独創性のある製品を提供しています。
また現在では、プリント基板製造装置、自動車部品製造装置、さらには液晶パネル製造装置の設計・製造・販売へと、部品製造装置メーカーとして世界展開するに至りました。
同社の沿革は、以下のとおりです。
1973年:ネームプレートの製造および販売を目的として株式会社石井表記(広島県福山市)を設立
1978年:本社を広島県福山市春日町能島424番地に移転・ネームプレート製造機器の製造販売を開始
1981年:プリント基板製造装置の製造販売を開始
1989年:半導体製造機器の製造販売を開始
1990年:伊藤忠商事株式会社と半導体製造機器の販売代理店契約を締結
1996年:DESライン(プリント基板製造装置)の製造販売を開始
1999年:広島証券取引所に上場
2000年:広島証券取引所と東京証券取引所の合併により東京証券取引所市場第二部に上場
2001年:JPN, INC.にてプリント基板製造装置の製造販売を開始
2004年:太陽電池ウェーハ製造機器の製造販売を開始
2007年:液晶配向膜塗布装置の製造販売を開始
2010年:石井表記ソーラー株式会社(広島県福山市)の全株式を取得し子会社化(現 連結子会社)
2016年:車載向け印刷製品の製造販売を開始
2019年:石井表記ソーラー株式会社の清算完了
2. 事業の特徴
石井表記のインクジェット塗布機はテレビ液晶用で高シェア、印刷技術にも強みを持ちます。さらに、車載向け印刷製品や工作機械向け操作パネルも想定超となっているようです。
また、中国の電子部品実装も好調で、23年1月期は部品調達難の懸念もありますが、受注残もあり堅調が続きます。
最新決算である2022年1月期第3四半期決算短信(連結)の売上高は107億8,800万円。 ※2021年12月10日
事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。 ※2022年1月期第3四半期決算短信(連結)
① 電子機器部品製造装置
② ディスプレイおよび電子部品
① 電子機器部品製造装置
プリント基板分野は、次世代通信規格「5G」市場並びに半導体向けのパッケージ基板の需要拡大に伴い、同分野での設備投資が増加したことなどから、前年同期と比較し売上高は増加したようです。
液晶関連分野においては、液晶パネル需要の増加に伴いパネルの生産が高水準で推移し生産消耗品の販売は増加しましたが、インクジェットコーターの販売台数は減少したため、前年同期と比較し売上高は減少しています。
これらの結果、売上高は38億3,200万円(前年同期比19.4%増)、営業利益は8億4,300万円(前年同期比51.9%増)となっています。
② ディスプレイおよび電子部品
自動車向け印刷製品は、前年からスタートした新規顧客向けの生産が順調に推移し、前年同期と比較し売上高が増加したようです。 工作機械および産業用機械分野については、半導体などの電子部品の供給不足による納期の長期化を見越した客先からの先行発注の動きが増加する中、部材調達先の拡大など生産体制維持に努めた結果、売上高は前年同期と比較し増加しています。
連結子会社であるJPN,INC.は、フィリピン国内において新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中でも引き続き通常の生産体制を維持し顧客の需要増加に対応した結果、前年同期に比べ増収増益となったようです。
上海賽路客電子有限公司についても、次世代通信規格「5G」、電気自動車(EV)、産業機械、家電製品などを中心に中国経済の回復傾向が続く中、電子部品実装の需要も増加し、前年同期に比べ増収増益となっています。
これらの結果、売上高は69億4,900万円(前年同期比36.3%増)、営業利益は6億900万円(前年同期比277.0%増)となっています。
3. 会社規模
会社規模は、以下のとおりです。
・時価総額: 62億3,000万円 ※2022年2月1日終値ベース
・総資産: 136億2,600万円 ※2022年1月期第3四半期
・資本金: 3億円 ※2021年7月末現在
・売上高: 107億8,800万円 ※2022年1月期第3四半期
・従業員数: 647名(連結) ※2021年7月末現在
4. 業績
過去2年間の業績は次のとおりです。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2019年1月 | 13,191 | 1,456 | 1,464 | 1,056 | 129.5 | 10 |
2020年1月 | 10,368 | 321 | 212 | 105 | 12.9 | 10 |
2021年1月期(2020年2月1日~2021年1月31日)の業績は、以下のとおり
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2021年1月 | 11,588 | 1,078 | 1,069 | 726 | 89.2 | 10 |
最新決算である2022年1月期第3四半期決算短信(連結)は以下のとおり。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) |
---|---|---|---|---|---|
2022年1月 | 10,788 | 1,452 | 1,426 | 1,127 | 138.25 |
株価・株価指標は以下のとおりです。
・株価:762円(2022年2月1日終値)
・予想PER:5.13倍 ※2022年3月期の予想EPS148.66より算出
・実績PBR:1.26倍 ※BPS606.77(2021年1月期)
・予想配当利回り:1.31% 2022年1月期10円予想
・年初来高値:1,183円(2021年9月15日)
・年初来安値:670円(2021年5月17日)
5. 財務分析
BS・PL・CS分析から、石井表記の現状を把握します。 2021年1月期と2022年1月期第3四半期決算の数字で検討します。
① BS分析
まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ
※2022年1月期第3四半期決算
・総資産 136億2,600万円
・自己資本比率 36.3%
・有利子負債 41億7,300万円 ※十万円以下切り捨て
・利益剰余金 37億2,100万円 ※十万円以下切り捨て
総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が41億7,300万円、自己資本比率は36.3%と4割以下となっています。
ただ実績PBRは1.26倍程度で、利益剰余金も37億2,100万円とプールもあります。
財務的に、極端な問題はないとも考えられます。
② PL分析
損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2022年1月期第3四半期)の売上高を、2021年度1月期第3四半期の売上高83億1,600万円と比較すると約29.7%の増加となっています。復調の兆しもはらんでいるようです。
③ CS分析
キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。
※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる
<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年1月期決算
営業活動の結果得られた資金は21億2,300万円(前連結会計年度比475.4%増加)となっています。主な増加要因は税金等調整前当期純利益10億2,600万円、減価償却費4億7,500万円、たな卸資産の減少額3億9,000万円であり、 主な減少要因は仕入債務の減少額2億7,100万円としています。 本業で稼げているようです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動の結果使用した資金は5億500万円(前連結会計年度比33.5%減少)となっています。主な減少要因は有形固定資産の取得による支出3億2,100万円、無形固定資産の取得による支出1億5,300万円としています。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動の結果使用した資金は6億8,500万円(前連結会計年度は3,100万円の獲得)となっています。主な増加要因はセール・アンド・リースバックによる収入1億5,700万円であり、主な減少要因は長期借入金の返済による支出4億2,200万円、短期借入金の純減額3億100万円としています。
現金及び現金同等物は、前期より9億3,500万円増加し23億4,600万円となっています。
6. トピック:経営戦略・4つの指針
石井表記は世界的な競争に勝ち抜くため、中長期的な経営戦略として4つの指針があります。
1.高収益の技術集団を目指す。
2.財務体質を強化する。
3.環境に配慮した企業であること。
4.人を活かした経営。
また同社は、以下のような企業理念を掲げています。
「独創的」な製品作りに情熱を持って「挑戦」し、会社と社員の永遠の幸福を目指します。
2022年1月期の業績予想は、以下のとおりです。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2022年1月 | 13,802 | 1,556 | 1,484 | 1,212 | 148.67 | 10 |
7. まとめ
今回は石井表記を分析しました。
株価は762円(2022年2月1日現在)で時価総額も62億3,000万円(2022年2月1日現在)と値動きも軽い銘柄です。
実績PBRは1.26倍(2022年2月1日現在)、同社の予想PERは5.13倍(2022年2月1日現在)また、東証二部の機械における平均PERは67.69倍(2022年2月1日現在)です。
ファンダメンタルズでは、PBRこそやや割高指標ですが、PERはまだ割安圏内にあると考えられます。
また同社は、2022年1月期第3四半期決算で営業利益は前年同期比2倍で着地、営業利益ベースでみると通期計画に対する進捗率は93%となっています。業績上振れへの期待感が高まっているようです。
今後も業績を見定めながら、同社は3~5年間など長期的な投資が向いていると思います。
プリント基板製造装置の大手として、スポットライトを浴び始めた同社の行方には要注目です。