エスユーエス(6554)

エスユーエスは、開発系の技術者派遣やITコンサル、システム開発事業などを展開する企業です。
現在、米マイクロソフト、旧フェイスブックなどの巨大企業が、インターネットで共有するバーチャル世界、メタバース産業へ相次いで参入し、メタバースは本格的な経済圏に成長しつつあります。 株式市場でも、メタバース人気は根強く、今後も各企業の開発いかんによってはさらなる巨大経済圏へと発展する可能性も秘めています。
そこで今回は、XR(クロスリアリティ)事業にも注力しているエスユーエスを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。

1. 会社概要

エスユーエスは1999年創業以来、「人と企業の笑顔が見たい」という経営理念のもと、「社会人学校」を目指し、社員の夢の実現・顧客満足・豊かな社会の創出できる環境を一貫して構築してきました。
そして、IT分野、機械分野、電気・電子分野、化学・バイオ分野における技術者派遣事業、AI、IoT等の分野における研究・開発など、技術の提供領域を拡大しています。

同社の沿革は、以下のとおりです。


1999年:京都市下京区東塩小路町に労働者派遣を目的として、資本金300万円で有限会社ジャパンスタッフリーシング(現当社)を設立

2001年:テクニカルスキル育成とマネジメントを行うため、WEBを用いた独自システム「SUS(Skill Up System)」を開発、運用を開始

2002年:一般労働者派遣事業の許認可を取得(派26-020056)・・有料職業紹介事業の許認可を取得 (26-ユ-020044)

2003年:京都市中小企業支援センターからSUSシステムでオスカー賞を受ける・京都市目利き委員会Aクラス認定(新卒SUS)・「新卒SUS」運用開始(大学内にSUS教室設置)

2004年:IT技術者のスキル把握を促進するため「ITSS(経済産業省制定)」を採用

2007年:事業モデル「社会人学校」を制定

2010年:Web制作・システム関連の受託事業強化を目的として、株式会社Qriptの株式を取得し子会社化

2013年:株式会社エスユーエスに商号変更・自社製品・サービスの研究開発を目的として、「 SUS-Lab」を開始

2016年:AIを活用した新規事業開発のため、「HAIQプロジェクト」を開始

2017年:東京証券取引所マザーズ市場に上場

2019年:VRおよびARに関するエンジニア育成とソリューションの販売・開発を目的として、株式会社クロスリアリティを設立・VRおよびARベースの、産業および教育向け知識移転における世界的リーダー企業であるEON Reality社(所在地:米国)との間で、京都におけるVRIAの設立に向けた業務提携契約を締結

2021年:再生医療の導入を希望する医療機関への支援を目的として、プライムロード株式会社を設立。

2. 事業の特徴

エスユーエスは、開発系技術者派遣・請負とERP導入等のコンサルが2本柱です。成長牽引狙うXRとAI事業に人材を投入し戦略シフトもしています。
また、VR空間で入学説明会なども見られる自社開発ソフトを教育機関向けに展開。派遣事業と連動したXR事業へも積極展開しています。
最新決算である2021年9月期(連結)の売上高は94億1,900万円。  ※2021年11月12日

事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。 ※2021年9月期決算短信(連結)

① 技術者派遣事業

② コンサルティング事業

③ AR/VR事業

① 技術者派遣事業

IT分野の強化及び技術社員の教育等による高付加価値化に取り組み、派遣単価の向上に努めています。一方、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年4月入社の新卒技術社員及び既存技術社員の 一部に契約獲得の遅れが生じていたことに加え、採用抑制等の影響により在籍技術社員数が前年同期比で減少したため、わずかに減収となったようです。
なお、稼働率については、当連結会計年度末にはコロナ前の水準まで回復してます。 請負業務は、プロジェクト単位及びチーム体制での受注を踏まえ、積極的に受注拡大に注力したようです。その結果、製造請負、IT請負ともに受注件数が増加し、取引が拡大しています。
これらの結果、技術者派遣事業の売上高は8,641,996千円(対前年同期比2.9%増)、セグメント利益は336,309千円(対前年同期比14.8%増)となっています。

② コンサルティング事業

システムコンサルティングサービス市場は、SAPをはじめとした既存の大規模基幹システムにおいてIT基盤の統合・再構築が企業の重要課題とされ、機能拡張やグローバル展開案件が継続して堅調に推移したようです。このような 中、システムコンサルティングサービス市場における新型コロナウイルス感染症の影響は軽微であり、同社が携わるクラウド系基幹システムであるSAP S/4 HANAの受注は拡大傾向となっています。
これらの結果、コンサルティング事業の売上高は583,361千円(対前年同期比17.1%増)、セグメント利益は 68,308千円(対前年同期比75.5%増)となっています。

③ AR/VR事業

AR(拡張現実)、VR(仮想現実)と言われる第4次産業革命に対応する取り組みとして、AR/VRクリエイターの育成、企業や教育機関が求めるAR/VRコンテンツやプラットフォームの販売及び開発等を目的に事業を行っています。
当連結会計年度については、新型コロナウイルス感染症による外出自粛等の影響により、教育機関や観光業でVRツアーへの需要が高まり、受注を獲得したようです。また、株式会社クロスリアリティ(連結子会社)において、AR/VRクリエイターの育成を行うVRIA京都(VRイノベーションアカデミー京都)の開校を2020年5月に予定していましたが、コロナ禍の影響等により延期となり、2020年10月の開校となっています。一方で、AR/VRコンテ ンツの受注を獲得するべく、人件費及び設備投資費用が発生したようです。
これらの結果、AR/VR事業の売上高は75,866千円(前年同期は1,180千円の売上高)、セグメント損失は204,934千 円(前年同期は64,516千円の損失)となっています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額:77億9,900万円 ※2022年2月8日終値ベース
・総資産:42億3,700万円 ※2021年9月期
・資本金:4億3,100万円 ※2021年9月期
・売上高:94億1,900万円 ※2021年9月期
・従業員数:1,696名(連結) ※2021年2月期

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2019年9月 8,117 494 504 337 38.6 7
2020年2月 8,967 208 410 270 30.8 7

最新決算である2021年9月期(2020年10月1日~2021年9月30日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年9月 9,419 195 648 448 50.9 7

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:883円(2022年2月8日終値)
・予想PER:18.40倍    ※2022年9月期の予想EPS48.08より算出
・実績PBR:2.80倍    ※BPS315.04(2021年9月期)
・予想配当利回り:1.13%  ※2022年9月期10円予想
・年初来高値:1,631円(2021年11月19日)
・年初来安値:359円(2021年1月18日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、エスユーエスの現状を把握します。 2021年9月期決算の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

※2021年9月期決算

・総資産     42億3,700万円
・自己資本比率      65.5%
・有利子負債       0円
・利益剰余金   18億1,900万円

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が0円、自己資本比率も65.5%と6割を超えています。 また実績PBRは2.80倍ですが、利益剰余金は18億1,900万円とプールもしっかりあります。 財務的に大きな問題はないと考えられます。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2021年9月期)の売上高を、2020年9月期の売上高89億6,700万円と比較すると5%の増加となっています。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年9月期決算

営業活動によるキャッシュ・フローは、473,936千円の増加(前連結会計年度は327,525千円の増加)となっています。資金の増加の主な要因は、税金等調整前当期純利益の計上646,667千円よるもので、資金の減少の主な要因は、法人税等の支払額213,856千円によるものとしています。本業でしっかり稼げているようです。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動によるキャッシュ・フローは、69,261千円の増加(前連結会計年度は301,548千円の減少)となっています。資金の増加の主な要因は、定期預金の純減額107,842千円によるもので、資金の減少の主な要因は、無形固定資産の取得による支出33,023千円によるものとしています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動によるキャッシュ・フローは、61,531千円の減少(前連結会計年度は265,470千円の減少)となっています。 資金の減少の主な要因は、配当金の支払額61,298千円によるものとしています。
現金及び現金同等物は、前期より481,666千円増加し、2,275,776千円となっています。

6. トピック:社名に込められた3つのキーワード

エスユーエスは、3つのキーワードの頭文字を社名にしています。

① Skill

② Up

③ Smile

「Skill Up」には、社員が技術力だけでなく、社会人として周囲から信頼されて活躍できる人財になってほしいという想い、そして「Smile」には、さまざまなスキルアップを通して、社員自身、パートナー、お客様、そして関わるすべての人に、笑顔になってもらいたいという想いを込めています。

2022年9月期の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2022年9月 10,775 601 668 423 48.08 10

7. まとめ

今回はエスユーエスを分析しました。

株価は883円(2022年2月8日現在)で時価総額も77億9,900万円(2022年2月8日現在)と値動きも軽い銘柄です。
実績PBRは2.80倍(2022年2月8日現在)、同社の予想PERは18.40倍(2022年2月8日現在)また、東証マザーズのサービス業における平均PERは24.67倍(2022年2月8日現在)です。
ファンダメンタルズでは、PBRこそ割高指標ですがPERはまだ割安圏内であると考えられます。

また同社は、京都技術大学と共同で、アバターで教員と高校生・受験生が交流できる「バーチャル・オープンキャンパス」を開催するなど、メタバース分野におけるノウハウや実績で先駆してもいます。 さらに、2022年9月期の営業利益は前期比3.1倍と過去最高益更新を見込みます。
ただ、見込み通りとなるか業績の行方を見定めていく必要もあるため、同社は2~5年間など長期的な投資が向いていると思います。
今後、市場規模の拡大が観測されるメタバース関連の一角として、注目され始めている同社の行方には要注目です。