株式会社NO.1(3562)
NO.1は、OA機器や自社企画の情報セキュリティ機器の販売が柱の企業です。
デジタル庁創設以降、DX化へのシフトが加速する中、同社への商機が高まるとの見方があります。
そこで今回は、DXアドバイザーにも注力するNo.1を取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。
1. 会社概要
1989年の設立以降、「日本の会社を元気にする一番の力へ。私たちNo.1はトータルビジネスパートナーとして顧客を支え、日本経済の原動力になる」ことを経営理念と掲げ、日本全国に約400万社存在する法人の様々なニーズ、経営上の悩み、問題や課題に対してソリューション提供を通して活動を続けてきました。
そして現在では、クレディセゾン、アスクル、オリックス、シャープマーケティングジャパンなどの大手企業が主要取引先として肩を並べるに至っています。
同社の沿革は、以下のとおりです。
1989年:法人向けのソフトウェアの販売会社として神奈川県横浜市に株式会社ジェー・ビー・エム (現当社)を設立
1993年:東京都渋谷区に東京支店開設 OA機器販売事業開始
1994年:東京都渋谷区に渋谷サービスセンター開設 自社による保守・メンテナンス事業開始
2004年: 東京都豊島区に株式会社No.1発足・株式会社ジェー・ビー・エム(現当社)と株式会社ビッ グ・ウィンが合併し社名変更・地域密着型の保守・メンテナンス業務を目的として株式会社 No.1システムサポート設立
2008年:株式会社No.1と株式会社No.1システムサポートが合併
2011年:東日本電信電話株式会社と取引開始、NTT東日本情報機器特約店となる。西日本電信電話株式会社と取引開始、NTT西日本情報機器特約店となる。
2017年:東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に株式上場
2018年:情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)を一部の拠点範囲にて取得
2019年:情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)を全拠点にて取得
2021年:情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)を全拠点にて再認証
2. 事業の特徴
情報セキュリティ機器が UTM (統合脅威管理)を始め増勢、オンライン市場も広がりモバイル wi-fi
も堅調となっています。また、官公庁向けOA機器も着実にこなしているようです。
さらに、DXアドバイザーを増やし、建設など中小企業顧客のコンサルタント事業も拡充しています。23年度の売上高も営業利益率8%以上を目標にしているようです。
最新決算である2022年2月期第3四半期決算短信(連結)の売上高は99億8,800万円。 ※2022年1月14日
※同社は単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しています。 ※2022年2月期第3四半期決算短信(連結)
同社グループが属する情報セキュリティ機器の商品市場においては、企業の業務の効率化やテレワークの拡大などによる情報危機管理に対するニーズは引き続き高く、政府主導によるDXの流れも後押
しとなり、セキュリティ機器の供給は順調に推移したようです。
また、OA機器の商品市場においては、ペーパレス化の流れで市場が縮小傾向にある一方、同社は顧客の需要に応え、複合機の販売も順調に進捗しています。
中小企業のコンサルタント事業である「No.1ビジネスサポート」は、順調に顧客の獲得を伸ばし、顧客サポートを行う「ビジコン」も計画通り順調に増員したようです。更に下期から従来の基本サービスに新たなサービスのラインナップを加え、更なるストック収益の拡大に取組む体制となっています。
また、連結子会社である株式会社No.1デジタルソリューションが日本オラクル株式会社と提携して開発したフルマネージド型クラウドサービス「デジテラス」の受注も進んでいます。
これらの結果、当第3四半期連結累計期間における売上高は99億8,800万円(前年同期比20.1%増)、経常利益は4億7,5,00万円(前年同期比12.8%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は2億2,600万円(前年同期比1.4%減)となっています。
3. 会社規模
会社規模は、以下のとおりです。
・時価総額:52億6,400万円 ※2022年2月22日終値ベース
・総資産:64億5,300万円 ※2022年2月期第3四半期
・資本金:5億9,500万円 ※2021年2月末現在
・売上高:99億8,800万円 ※2022年2月期第3四半期
・従業員数:562名(連結) ※2021年2月末現在
4. 業績
過去2年間の業績は次のとおりです。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2019年2月 | 8,164 | 330 | 323 | 218 | 34.9 | 7.5記 |
2020年2月 | 8,818 | 361 | 383 | 266 | 43.2 | 15 |
2021年2月期(2020年3月1日~2021年2月28日)の業績は、以下のとおり。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2021年2月 | 11,838 | 615 | 697 | 403 | 64.2 | 22.5 |
最新決算である2022年2月期第3四半期決算短信(連結)は以下のとおり。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) |
---|---|---|---|---|---|
2022年2月 | 9,988 | 446 | 475 | 226 | 34.52 |
株価・株価指標は以下のとおりです。
・株価:781円(2022年2月22日終値)
・予想PER:10.70倍 ※2022年2月期の予想EPS73より算出
・実績PBR:2.12倍 ※BPS368.71(2021年2月期)
・予想配当利回り:3.33% ※2022年2月期26円予想
・年初来高値:1,666円(2021年4月9日)
・年初来安値:704円(2022年1月28日)
5. 財務分析
BS・PL・CS分析から、NO.1の現状を把握します。 2021年2月期と2022年2月期第3四半期決算(連結)の数字で検討します。
① BS分析
まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ
※2022年2月期第3四半期決算(連結)
・総資産 64億5,300万円
・自己資本比率 37.4%
・有利子負債 16億4,100万円 ※十万円以下切捨て
・利益剰余金 13億2,700万円 ※十万円以下切捨て
総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が16億4,100万円、自己資本比率は37.4%と4割をきっています。
実績PBRも2.12倍ですが、利益剰余金は13億2,700万円(十万円以下切捨て)とプールはあるようです。
② PL分析
損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2022年2月期第3四半期決算連結)の売上高を2021年2月期第3四半期の83億1,300万円と比較すると20.1%もの増加となっています。来期売上高予想も130億円と復調の兆しをはらんでいます。
③ CS分析
キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。
※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる
<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年2月期
営業活動によるキャッシュ・フローは、809,514千円の収入(前期比600,659千円の増加)となっています。これは主に税金等調整前当期純利益が711,495千円、減価償却費133,699千円に対し、売上債権の増加による資金の減少が 224,546千円、法人税等の支払額が214,246千円となったことによるものとしています。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,797,607千円の支出(前期比1,668,893千円の増加)となっています。 これは主に貸付金の回収による収入27,634千円があった一方で、有形固定資産の取得による支出134,722千円並びに連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出1,635,333千円があったことによるものとしています。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動によるキャッシュ・フローは、1,431,675千円の収入(前期は342,639千円の支出)となっています。これは主に短期借入金による収入120,000千円並びに長期借入金による収入1,500,000千円に対し、長期借入金の返済による支出130,931千円、配当金の支払による支出91,606千円があったことによるものとしています。
現金及び現金同等物は、前年より443,582千円増加し、1,780,838千円となっています。
6. トピック:3つの事業ドメイン
NO.1は顧客の今と未来に向けたサービスとして、大きく三つの事業ドメインを展開しています。
「今に向けたサービス」
①オフィス環境効率化による生産性の向上とコストダウン
②経営支援サービスによる経営の効率化や経営状況の可視化
「未来に向けたサービス」
③販売支援サービスによる売上向上施策のサポート
2022年2月期の連結業績予想は、以下のとおりです。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2022年2月 | 13,000 | 808 | 794 | 478 | 76.15 | 26 |
7. まとめ
今回はNO.1を分析しました。
株価は781円(2022年2月22日現在)で時価総額も52億6,400万円(2022年2月22日現在)と値動きは軽い銘柄です。
実績PBRは2.12倍(2022年2月22日現在)、同社の予想PERは10.70倍(2022年2月22日現在)また、東証JASDAQの卸売業における平均PERは45.74倍(2022年2月22日現在)です。
ファンダメンタルズではPBRこそ割高ではありますが、PERはまだ割安水準にあると考えられます。
また今年1月、改正電子帳簿保存法が施行されるなど、中小企業のデジタル化が急務となっています。中小企業向けのOA機器やセキュリティ関連機器の販売、さらにはDXアドバイザー業務などを手がけている同社は、このメリットを取り込んでいくことが予想されます。
ただ、今後も同社の業績を見定めていく必要はある為、同社は1~3年間など長期的な投資が向いていると思います。
国策の流れに乗り始めた同社の行方には、今後も要注目です。