サイバーセキュリティクラウド(4493)
サイバーセキュリティクラウドは、人工知能技術を駆使してクラウドによるサイバーセキュリティサービスを展開する企業です。
現在、企業のデジタルトランスフォーメーション投資が旺盛の中、Webセキュリティーに対するニーズも高まっており、同社はその商機を捉えているようです。
また、2月23日経済産業省はサイバー攻撃事案の潜在的なリスクが高まっているとして対策強化を注意喚起したことで、再びサイバーセキュリティ関連は脚光を浴び始めました。
そこで今回は、サイバーセキュリティサービスで増収効果をあげている、サイバーセキュリティクラウドを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。
1. 会社概要
サイバーセキュリティクラウドは2010年に創業後、2013年にWebセキュリティ事業を開始。以来、Webセキュリティサービスを100%自社で開発し提供しています。また、顧客の声を常に聞きつつ、最新のサイバー攻撃を防ぐため常にアップデートを繰り返してきました。 そして現在でも、数少ない日本発のサイバーセキュリティサービスのメーカーとして、誰もが安心してテクノロジーの恩恵を受けられるよう、ひたむきにプロダクトの提供を続けています。
同社の沿革は、以下のとおりです。
2010年:東京都渋谷区渋谷に「株式会社アミティエ」を設立
2013年:Webセキュリティ事業を開始
2014年:商号を「株式会社サイバーセキュリティクラウド」に変更
2017年:AWS WAFのルール自動運用サービス「WafCharm AWS版」を提供開始
2018年:クラウド型WAFにおける外部からの攻撃に対する防御ルールに関連する特許「ファイア ウォール装置」(特許第6375047号)を取得/ Cyber Security Cloud Inc.(米国法人)を設立
2019年:Webアプリケーションを保護するルールセットであるManaged RulesをAWS Marketplaceにて提供開始
2020年:東京証券取引所マザーズ市場に上場(証券コード:4493)
2021年:WAFの自動運用サービス「WafCharm for Google Cloud」を提供開始
2. 事業の特徴
サイバーセキュリティクラウドは、AI技術を活用した、クラウド提供のWebセキュリティサービス「攻撃遮断くん」を主力としてます。
2022年12月期はWebセキュリティ、ファイアウォール製品が好調。ファイアウォール自動運用サービスの米国展開も開始しているようです。
また、ソフトクリエイトとファイアウォール自動運用サービスで販売代理店契約を結んでいます。
最新決算である2021年12月期(連結)の売上高は18億1,700万円。 ※2022年2月14日
※同社は単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しています。 ※2021年12月期決算短信(連結)
当連結会計年度においては、採用活動の強化による人員増加、社内体制を変更し効率的な営業体制への移行、また多くのセミナーを開催するなどのマーケティング活動に注力しています。様々な施策の結果、同社グループが提供する主要プロダクトの「攻撃遮断くん」と「WafCharm」において、ユーザー数が順調に増加しています。
更に、2020年12月に子会社化した脆弱性管理サービス「SIDfm」と「脆弱性診断」を提供する株式会社ソフテックの業績が、当第1四半期連結累計期間より寄与したことで、売上高は大幅に増加したようです。
これらの結果、売上高1,817,470千円(前期比52.2%増)、営業利益297,268千円(前期比57.8%増)、経常利益297,700千円(前期比72.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益169,741千円(前期比26.4%増)となっています。
3. 会社規模
会社規模は、以下のとおりです。
・時価総額:199億9,300万円 ※2022年3月1日終値ベース
・総資産:17億1,000万円 ※2021年12月期
・資本金:3億8,700万円 ※2021年12月期第3四半期
・売上高:18億1,700万円 ※2021年12月期
・従業員数:74名(連結) ※2021年12月期第3四半期
4. 業績
過去2年間の業績は次のとおりです。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2019年9月 | 816 | 143 | 141 | 153 | 17.2 | 0 |
2020年2月 | 1,194 | 188 | 172 | 134 | 14.6 | 0 |
最新決算である2021年12月期(2021年1月1日~2021年12月31日)の業績は、以下のとおり。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2021年12月 | 1,817 | 297 | 297 | 169 | 18.1 | 0 |
株価・株価指標は以下のとおりです。
・株価:2,133円(2022年3月1日終値)
・予想PER:77.20倍 ※2022年12月期の予想EPS27.63より算出
・実績PBR:21.19倍 ※BPS100.66(2021年12月期)
・予想配当利回り:0% ※2022年12月期0円予想
・年初来高値:4,240円(2021年1月12日)
・年初来安値:1,102円(2021年1月28日)
5. 財務分析
BS・PL・CS分析から、サイバーセキュリティクラウドの現状を把握します。 2021年12月期決算の数字で検討します。
① BS分析
まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ
※2021年12月期決算
・総資産 17億1,000万円
・自己資本比率 55.2%
・有利子負債 2億6,600万円 ※十万円以下切捨て
・利益剰余金 1億7,400万円 ※十万円以下切捨て
総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が2億6,600万円ですが、自己資本比率は55.2%と5割を超えています。
実績PBRは21.19倍、利益剰余金は1億7,400万円とプールは極端に多くはないようです。
② PL分析
損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2021年12月期)の売上高を、2020年12月期の売上高11億9,400万円と比較すると52.2%の増加となっています。
③ CS分析
キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。
※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる
<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年12月期決算
営業活動によって得られた資金は382,044千円となっています。その主な内訳は、税金等調整前当期純利益267,781 千円の計上、減損損失23,900千円、のれん償却額25,325千円としています。本業でしっかり稼げているようです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動によって使用した資金は59,020千円となっています。その主な内訳は、敷金の差入による支出51,882千円としています。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動によって使用した資金は169,894千円となっています。その主な内訳は、短期借入金の純増減額△240,000
千円、長期借入れによる収入100,000千円としています。
現金及び現金同等物は、前期より153,130千円増加し、1,052,180千円となっています。
6. トピック:CSC Core Values
同社には、シンプルで派⼿さや驚きはなくとも⼤切にしていきたい想い、3つの言葉「CSC」があります。
① Customer:お客様に安⼼安全を届けることが、私たちの存在意義である。
② Support:一人では実現できない未来を創る。
③ Challenge:現状維持は停滞だ。
2022年12月期の業績予想は、以下のとおりです。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2022年12月 | 2,300 | 390 | 387 | 259 | 27.6 | 0 |
7. まとめ
今回はサイバーセキュリティクラウドを分析しました。
株価は2,133円(2022年3月1日現在)で時価総額も199億9,300万円(2022年3月1日現在)と極端に値動きも重くない銘柄です。
実績PBRは21.19倍(2022年3月1日現在)、同社の予想PERは77.20倍(2022年3月1日現在)また、東証マザーズの情報・通信業における平均PERは67.44倍(2022年3月1日現在)です。
ファンダメンタルズでは、PBR、PER共に割高指標となっています。
トヨタ自動車では、取引先の部品メーカーにサイバー攻撃とみられるトラブルが発生し、国内全工場の操業を停止するなど、市場ではサイバーセキュリティへの関心が再び高まりました。
また同社も、2022年3月1日、「日本国内15,000以上のサイトを対象とした調査で、2月16日以降不審な攻撃者による不正アクセス、正確にはBOTや脆弱性スキャンツールなどによる攻撃の検知が急増していることを確認。直近3ヶ月平均と比べて最大25倍もの攻撃が検知されており、早急に対策を強化することをおすすめします。」とのIRを発表し注意喚起を行いました。
ただ、同社のニーズや売上高が見込み通りとなるかは、業績などの行方を見定めていく必要もある為、2~5年間など長期的な投資が向いていると思います。
今後も市場規模の拡大が予測されるWebセキュリティで再び脚光を浴び始めた同社の行方には、要注目です。