サイバーリンクス(3683)

サイバーリンクスは、官公庁や流通業界向けのクラウドサービスを展開する企業です。
現在、企業のデジタルトランスフォーメーション投資が旺盛となる中、同社は2022年3月1日付で経済産業省が定めるDX認定制度に基づき、「DX認定事業者」の認定を取得したと発表しました。
そこで今回は、推進力が日増しに高まるDX化の流れに乗る格好となる、サイバーリンクスを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。

1. 会社概要

同社は1956年に創業者である村上正義が、洋書を頼りにテレビ製作したことをきっかけとして、和歌山県に村上テレビサービスステーションを開業。 1964年、この技術が評判となり、松下通信工業㈱(現パナソニック㈱)から声がかかり、官公庁向けの無線設備を取り扱うようになりました。 ベンチャースピリットで立ち上げた各事業は、長い期間をかけ蓄積してきたノウハウにより、常に市場変化を先取りしながら着実な成長を続けています。
現在は、「LINK Smart ~もたず、つながる時代へ~」をブランドコンセプトとして、「シェアクラウド」による安心、安全、低価格で高品質なクラウドサービスを積極展開し、さらなる成長を目指すとしています。

同社の沿革は、以下のとおりです。


1956年:テレビの組立・修理業として村上テレビサービスステーションを創業

1964年:株式会社南海無線を設立

1974年:南海通信特機株式会社に商号変更

1982年:システム開発事業を開始

2000年:南海通信特機株式会社を存続会社として南海オーエーシステム株式会社、関西中部リテイル ネットワークシステムズ株式会社および株式会社エムディービーセンターを吸収合併し、(株)サイバーリンクスに商号変更

2001年:官公庁向け基幹業務提供サービスを開始

2014年:東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場

2015年:東京証券取引所市場第一部銘柄に指定

2021年:一般財団法人サイバーリンクス福祉財団を設立・監査等委員会設置会社に移行
トラスト事業分野に進出

2. 事業の特徴

サイバーリンクスは、和歌山県を地盤として食品流通、公共向けシステムのクラウド提供を全国に展開中です。また、ドコモ販売も収益の柱となっています。 主力となる食品クラウド、携帯販売は好伸、2022年は不動産関連を軸に「電子認証分野」への開発投資を加速するようです。
最新決算である2021年12月期(連結)の売上高は132億4,100万円。 ※2022年2月14日
事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。 ※2021年12月期決算短信(連結)

① 流通クラウド事業

② 官公庁クラウド事業

③ トラスト事業

④ モバイルネットワーク事業

① 流通クラウド事業

小売業向けEDIサービス「BXNOAH」や棚割システム「棚POWE R」シリーズ、卸売業向けのEDIサービス「クラウドEDI-Platform」等のクラウドサービスの提供拡大により定常収入が増加。また、サービス導入時の作業費等定常収入以外の収入も増加したようです。

ソフトウェア償却費は、中大規模顧客向け「@rms基幹」の一部機能にかかる償却が終了したこと等により減 少しています。一方で、流通業界における商談のDXを実現する企業間プラットフォーム「C2Platfor m」の新機能開発や、既存サービスである「@rms生鮮」のリニューアル開発等に注力した結果、研究開発費が増加したようです。
これらの結果、売上高は4,021,658千円(前期比6.9%増)、セグメント利益(経常利 益)は565,543千円(前期比80.1%増)となっています。

② 官公庁クラウド事業

医療情報分野における大型のシステム更新案件等の寄与があったものの、防災行政無線デジタル化工事やGIGAスクール関連案件など特需への対応が2021年3月までに概ね終了し た影響が大きく、減収となったようです。

一方、開発を進めてきた総合防災サービスのリリースへ向けた取組や、校務システム「Clarinet」の新規受注等、今後の成長につなげるための取組を推進しています。
これらの結果、売上高は6,159,691千円(前期比1.3%減)、セグメント利益(経常利益)は596,507千円(前期比5.9%減)となっています。

③ トラスト事業

既存サービスであるタイムスタンプ対応ワークフロー(BPM(注))「Ts unAG」の導入を行っています。

一方で、マイナンバーカードをベースとした新たなトラストサービスを開発するため、人員増強を図ったことに加え、2021年12月には、ブロックチェーン技術(注)を利用した証明書発行サ ービス「Cloud Certs」を取得するなど、積極的な研究開発投資も行ったようです。
これらの結果、売上高は95,203千円(前期比556.6%増)、セグメント損失(経常損 失)は349,731千円(前期はセグメント損失78,567千円)となっています。

④ モバイルネットワーク事業

世界的な半導体不足の影響による端末の在庫不足等により端末販売台数は低調となっていますが、累計期間では、緊急事態宣言を受け2020年4月から同年5月にかけて 営業時間の短縮等を行った前連結会計年度と比べ増加しています。

一方、端末販売単価については、iPh one12および13シリーズ等の高価格帯商材の売れ行きが堅調に推移し、上昇したようです。
これらの結果、売上高は2,964,492千円(前期比7.3%増)、セグメント利益(経常利益)は381,977千円(前期比9.4%増)となっています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額:92億7,000万円 ※2022年3月8日終値ベース
・総資産:96億8,200万円 ※2021年12月期
・資本金:7億9,200万円  ※2020年12月31日現在
・売上高:132億4,100万円 ※2021年12月期
・従業員数:738名(連結) ※2020年12月31日現在

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2019年12月 10,449 449 460 280 28.4 8
2020年12月 12,777 924 951 644 62.4 10

最新決算である2021年12月期(2021年1月1日~2021年12月31日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年12月 13,241 945 958 645 62.55 12

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:878円(2022年3月1日終値)
・予想PER:13.55倍    ※2022年12月期の予想EPS64.78より算出
・実績PBR:1.70倍    ※BPS516.32(2021年12月期)
・予想配当利回り:1.48%  ※2022年12月期13円予想
・年初来高値:2,692円(2021年1月4日)
・年初来安値:792円(2022年1月28日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、サイバーリンクスの現状を把握します。 2021年12月期決算の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

※2021年12月期決算

・総資産     96億8,200万円
・自己資本比率      55.1%
・有利子負債   20億7,900万円 ※十万円以下切り捨て
・利益剰余金   34億9,600万円 ※十万円以下切り捨て

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が2億6,600万円ですが、自己資本比率は55.1%と5割を超えています。 実績PBRは1.70倍ですが、利益剰余金は34億9,600万円と、プールはしっかりあるようです。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2021年12月期)の売上高を、2020年12月期の売上高127億7,700万円と比較すると3.6%の増加となっています。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年12月期決算

営業活動によるキャッシュ・フローは1,964,738千円の資金の増加(前連結会計年度は、740,026千円の資金の増加)となっています。
資金の増加の主な要因は、税金等調整前当期純利益956,437千円、減価償却費636,525千円、売上債権の減少額628,936千円、たな卸資産の減少額307,547千円。資金の減少の主な要因は預り金の減少額203,862千円、法人税等の支払額190,080千円、未払消費税等の減少額108,353千円、仕入債務の減少額88,668千円としています。 本業でしっかり稼げているようです。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動によるキャッシュ・フローは685,176千円の資金の減少(前連結会計年度は、333,817千円の資金の増加)となっています。
資金の減少の主な要因は、有形固定資産の取得による支出610,789千円、無形固定資産の取得による支出256,224千円。資金の増加の主な要因は、敷金及び保証金の回収による収入176,959千円としています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動によるキャッシュ・フローは591,165千円の資金の減少(前連結会計年度は、595,564千円の資金の減少)となっています。
資金の減少の主な要因は、長期借入金の返済による支出304,200千円、自己株式の取得による支出299,888千円、配当金の支払額102,929千円。資金の増加の主な要因は、新株予約権行使による株式の発行による収入118,144千円としています。
現金及び現金同等物は、前期より689,309千円増加し、2,552,640千円となっています。

6. トピック:サイバーリンクスを支えてきた3つの理念

同社には、企業価値を支え続けてきた3つの経営理念があります。

① 気高く

② 強く

③ 一筋に

① 気高く

仕事とは、より良い社会の発展のための崇高な社会活動です。このことを社員ひとりひとりが心から理解し、自分の仕事に誇りをもち、仕事を通じて社会に貢献していかなければなりません。

② 強く

人々が豊かで幸せな生活をおくるため、素晴らしく、また大変厳しい競争原理が用意されています。 わたしたちがお客さまに心から満足いただけるサービスを提供し続けるためには、激しい闘志にも似た強烈な思いで事業に取り組み、企業として発展し続けなければなりません。

③ 一筋に

厳しい競争原理の中で、いくつもの障壁を乗り越えていくためには、スタッフ全員の思いをひとつのベクトルにあわせ、地道な努力とチームワークで目標に向かって、まっすぐ一筋につき進んでいかなければなりません。


2022年12月期の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2022年12月 13,267 1,043 1,046 670 64.78 13

7. まとめ

今回はサイバーリンクスを分析しました。

株価は878円(2022年3月8日現在)で時価総額も92億7,000万円(2022年3月8日現在)と値動きは軽い銘柄です。
実績PBRは1.70倍(2022年3月8日現在)、同社の予想PERは13.55倍(2022年3月8日現在)また、東証1部の情報・通信業における平均PERは26.78倍(2022年3月8日現在)です。
ファンダメンタルズではPBRこそやや割高ですが、PERはまだ割安と考えられます。

また同社は、2022年12月期連結経常利益を前期比9.2%増の10億4,000万円と予想しており、3期連続で過去最高益を更新する見通しとなっています。
ただ、売上高が見込み通りとなるかは業績の行方を見定めていく必要もある為、同社は2~5年間など長期的な投資が向いていると思います。
今後も市場規模の拡大が予測される、DX化の推進で脚光を浴び始めた同社の行方には要注目です。