ANAP(3189)
ANAPは、若い女性向けに衣料品や雑貨を販売している企業です。
昨今、米マイクロソフト、ウォルト・ディズニー・カンパニーなどの巨大企業が、メタバース産業へ相次いで参入し、メタバースは本格的な経済圏に成長しつつあります。
紛争による地政学的リスクが高まる中、メタバース関連は依然として人気を集めてもいます。
そこで今回は、メタバースにおける新たなファッションブランドに注力し注目を浴びつつある、ANAPを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。
1. 会社概要
ANAPは1992年の創業以降、一貫してお客様目線で楽しい空間を創造し、様々なイメージが詰まった楽しい買い物をするということに着眼してきました。そして、多彩な商品バリエーションとスピード感を持った供給を強みとし、時代のニーズへ柔軟に対応し続けています。 2022年には創業30周年も迎え、新たなステージへの「リ・オープニング」を強力に推し進めるとしています。
同社の沿革は、以下のとおりです。
1992年:東京都渋谷区千駄ヶ谷三丁目55番12号に資本金1,000万円にて株式会社エイ・エヌアートプラン ニングを設立/1号店としてANAP原宿店を出店
2002年:ANAPオンラインショップの運営を開始
2006年:株式会社ヤタカ・インコーポレーテッドと合併し、フランチャイズ11店舗を直営店とする 社名をアナップヤタカインコーポレーテッドとし資本金を1億1,800万円に増資
2007年:社名を株式会社ANAPに変更
2013年:東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)市場に上場
2017年:子会社株式会社ATLABを設立
2019年:本社を東京都港区南青山四丁目20番19号に移転
2. 事業の特徴
若年層向け衣料、雑貨が柱で、ネット比率は約5割となっています。ECの伸びは少し鈍いですが、既存店は郊外店舗を軸に客数も戻り基調のようです。
また、EC強化に向けてライブコマースに本腰、専用サイトを設立し新規事業化を視野に入れています。商品企画に販売員も参加し、顧客の声をより反映させ商品力を高めてもいるようです。
最新決算である2022年8月期第1四半期決算短信(連結)の売上高は12億8,300万円。 ※2022年1月11日
各事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです ※2022年8月期第1四半期決算短信(連結)
① インターネット販売事業
② 店舗販売事業
③ 卸売販売事業
④ ライセンス事業
① インターネット販売事業
ファッションECサイトのサービス競争激化の影響もあり売上高は減少しています。そのような中、値引販売の抑制や、著名なインフルエンサーを起用したライブコマ ースに注力し、集客のための広告効果も上げるなど、事業としての収益性を高める取り組みを行い、効果が現れ始めてもいます。
これらの結果、売上高は4億8,600万円(前年同四半期比31.4%減)、セグメント損失は300万円(前年同四半期はセグメント利益900万円)となっています。
② 店舗販売事業
前連結会計年度末より出店1店舗を行った結果、当第1四半期連結会計期間末における店舗数は38店舗になっています。 売上高は既存店舗、新規出店店舗ともに前述の感染者数の推移の影響により9月は大きく苦戦したようですが、10月以降は回復傾向であり、前連結会計年度から出店している影響もあり、増加しています。
これらの結果、売上高は7億6,700万円(前年同四半期比19.4%増)、セグメント利益は1,700万円(前年同四半期比 68.8%減)となっています。
③ 卸売販売事業
既存の取引先に対する販売減少に伴い、売上高は減少したようです。
これらの結果、売上高は1,700万円(前年同四半期比74.9%減)、セグメント損失は300万円(前年同四半期はセグメント利益0万円)となっています。
④ ライセンス事業
既存のライセンシーにおけるロイヤリティ収入減少に伴い、売上高は減少したようです。
これらの結果、 売上高は1,000万円(前年同四半期比24.9%減)、セグメント利益は900万円(前年同四半期比8.4
%減)となっています。
3. 会社規模
会社規模は、以下のとおりです。
・時価総額:15億4,600万円 ※2022年3月15日終値ベース
・総資産:28億3,100万円 ※2022年8月期第1四半期
・資本金:4億1,480万円 ※2021年8月31日現在
・売上高:12億8,300万円 ※2022年8月期第1四半期
・従業員数:205名(連結) ※2021年8月期
4. 業績
過去2年間の業績は次のとおりです。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2019年8月 | 6,261 | 88 | 91 | 62 | 14.4 | 6 |
2020年8月 | 5,659 | -329 | -284 | -371 | -85.5 | 3 |
2021年8月期(2020年9月1日~2021年8月31日)の業績は、以下のとおり。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2021年8月 | 5,078 | -644 | -633 | -791 | -175.6 | 0 |
最新決算である2022年8月期第1四半期決算短信(連結)は以下のとおり。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) |
---|---|---|---|---|---|
2022年8月 | 1,283 | -60 | -61 | -46 | -10.21 |
株価・株価指標は以下のとおりです。
・株価:312円(2022年3月15日終値)
・予想PER:11.19倍 ※2022年8月期の予想EPS27.88より算出
・実績PBR:2.67倍 ※BPS117.07(2021年8月期)
・予想配当利回り:0% ※2022年3月期0円予想
・年初来高値:754円(2021年12月14日)
・年初来安値:274円(2021年12月2日)
5. 財務分析
BS・PL・CS分析から、ANAPの現状を把握します。 2021年8月期の数字で検討します。
① BS分析
まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ
・総資産 24億1,600万円
・自己資本比率 23.7%
・有利子負債 10億5,000万円 ※十万円以下切り捨て
・利益剰余金 -3億7,200万円 ※十万円以下切り捨て
総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が10億5,000万円、自己資本比率も23.7%と3割以下となっています。
また実績PBRは2.67倍、利益剰余金も-3億7,200万円(※十万円以下切捨て)です。
財務的には、まだ安定感がないとも考えられます。
② PL分析
損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2021年8月期)の売上高を2020年度の56億5,900万円と比較すると10.3%減となっています。ですが、来期は64億2,800万円の売上予想となっており、復調の兆しもはらんでいます。
③ CS分析
キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。
※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる
<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年8月期
営業活動の結果支出した資金は3億9,700万円(前連結会計年度は44百万円の支出)となっています。これは主に、減価償却費5,700万円、事業構造改善費用8,500万円、売上債権の減少額1億1,200万円、たな卸資産の減少額1億400万円、未払金の増加額4,700万円、助成金の受取額6,500万円による増加。
税金等調整前当期純損失 7億3,400万円、賞与引当金の減少額1,000万円、退職給付に係る負債の減少額5,100万円、助成金収入1,800万円、未収消費税等の増加額1,300万円、仕入債務の減少額3,100万円、法人税等の支払額1,100万円によるものとしています。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動の結果支出した資金は2億3,000万円(前連結会計年度は1億1,900万円の支出)となっています。これは主に、敷金及び保証金の回収による収入400万円による増加、投資有価証券の取得による支出3,000万円。
有形固定資産の取得による支出1億1,600万円、無形固定資産の取得による支出2,000万円、敷金及び保証金の差入による支出6,200万円、長期前払費用の取得による支出400万円によるものとしています。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動の結果得られた資金は4億3,500万円(前連結会計年度は1億2,500万円の収入)となっています。これは主に、短期借入金の純増加額4億5,000万円、新株予約権の行使による株式の発行による収入1,400万円による増加。
ファイナンス・リース債務の返済による支出1,100万円、配当金の支払額1,300万円によるものとしています。
現金及び現金同等物は、前期より1億9,200万円減少し6億6,600万円となっています
6. トピック:対処すべき6つの課題
ANAPは、経営環境の変化に対応し企業価値を高めるため、6つの課題解決に注力しています。
① コスト削減
② オンラインショッピングサイトの販売力回復
③ 業務効率化、内製化の推進
④ 社員教育による全社統制の強化及びお客様満足度の向上
⑤ 新規販売チャネルの展開
⑥ 新型コロナウイルス感染症への対応
① コスト削減
事業運営コストの削減に関しては、大きく踏み込んだ施策を実施しております。当該状況が長期化することも想定しながら、事業効率の改善については引き続き、重点的に取り組んでまいります。
② オンラインショッピングサイトの販売力回復
他社以上の集客戦略やサイト自体の使い勝手の向上を通じて、より快適な、お客様に選んでいただけるサイト作りに取り組んでまいります。
③ 業務効率化、内製化の推進
当社は以前より、AIをはじめとした最先端技術への投資を積極的に進めてまいりました。今後もEC分野をはじめ、さらなる業務効率化、また外部業者に委託していた業務についても内製化を進め、より合理的な経営を実現できるよう注力してまいります。
④ 社員教育による全社統制の強化及びお客様満足度の向上
管理職を含めた全社員に対する社内研修制度をより一層充実させ、全社統制の強化を図るとともに、各事業運営、経営体制を支える人材の早期育成及びレベルアップを達成し、企業価値向上に努めてまいります。
⑤ 新規販売チャネルの展開
当社は、継続的な成長及び企業価値の拡大を図り、より多くの消費者ニーズに応えるため、新規販売チャネルの開拓を推進してまいります。消費者の購買行動の変化に対して、適時・適切に対応するとともに、事業拡大に伴う新たな顧客層の獲得を通じて、経営の安定化に取り組んでまいります。
⑥ 新型コロナウイルス感染症への対応
当社は、お客様、取引先、従業員の安全を最優先と考え、従業員の体調管理の徹底、出張の制限や勤務形態の見直し、Web会議の導入など、感染予防・感染拡大の防止に努めております。今後もこうした環境変化をいち早く感知し、柔軟に対応していくための組織体制の強化を実行してまいります。
2022年8月期の業績予想は、以下のとおりです。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2022年8月 | 6,428 | 137 | 142 | 126 | 27.93 | 0 |
7. まとめ
今回はANAPを分析しました。
株価は312円(2022年3月15日現在)で時価総額も15億4,600万円(2022年3月15日現在)と値動きは軽い銘柄です。
実績PBRは2.67倍(2022年3月15日現在)、同社の予想PERは11.19倍(2022年3月15日現在)また、東証JASDAQの小売業における平均PERは32.55倍(2022年3月15日現在)です。
ファンダメンタルズではPBRこそ割高指標ではありますが、PERはまだ割安水準にあると考えられます。
また同社は、2022年3月9日にSuishowとメタバース領域で業務提携すると発表しました。同社の女性向けデザイン、ブランド力と、Suishowが保有するメタバース構築とブロックチェーン技術によって、次世代ファッションの事業創出を目指すとしています。
ただ、メタバース領域のニーズやそれに伴った業績となるかは、今後も動向を見定めていく必要があります。同社は1~3年間など長期的な投資が向いていると思います。
今後、メタバース関連として頭角をあらわすか、同社の行方には今後も要注目です。