テクノホライゾン(6629)

テクノホライゾンは、映像&IT及びロボティクス事業の分野において製品開発とサービスを軸とする企業です。
現在、デジタル庁創設に伴うDX化への流れが勢いを増し、また新型コロナウイルスの影響もあって、業務効率化を目的に、企業のデジタル化投資需要が旺盛を極めています。
そこで今回は、DX化など最新テクノロジーのニーズへ商機を見出すテクノホライゾンを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。

1. 会社概要

テクノホライゾンは創業以来、教育、安全・生活、医療、FA市場を通じて「人と社会」に貢献することを目的として事業活動を行ってきました。
2021年4月1日には、グループの活動力とシナジー効果を一層高めるために、4社統合を実施し、事業会社としてのテクノホライゾン株式会社を始動しています。今後もグローバル化への対応もさることながら、ベンチャーの機動力と大手の力強さを兼ね備え、他社には出来ないことを実現していくとしています。

同社の沿革は、以下のとおりです。


2010年:株式会社タイテックと株式会社エルモ社の株式移転により、共同持株会社「テクノホライゾン・ ホールディングス株式会社」が誕生/当社普通株式を株式会社大阪証券取引所JASDAQ市場に 上場

2011年:株式会社タイテックの情報通信機器部門を新設分割し、株式会社ファインフィットデザインを設立

2013年:株式会社東京証券取引所と株式会社大阪証券取引所の統合に伴い、株式会社東京証券取引所JA SDAQ(スタンダード)市場に上場

2015年:株式会社タイテックが株式会社エルモ社の子会社である株式会社エルモシステムビジネスの株式を取得し子会社化

2017年:株式会社タイテックが株式会社ケーアイテクノロジーの株式を取得し子会社化

2018年:株式会社タイテックが社内カンパニー 「OFFICE ITANZI」を設立

2020年:テクノホライゾン・ホールディングス株式会社からテクノホライゾン株式会社に商号を変更

2021年:株式会社エルモ社、株式会社タイテック、および株式会社中日諏訪オプト電子の3社を吸収合併し、持株会社から事業会社へと移行。

2. 事業の特徴

光学はレンズ技術の応用、電子機器はFA関連に強みがあり、M&Aに力を入れているのも特徴です。
また、国立長寿医療研究センターと共同研究を開始し、同社の睡眠見守りシステムのデータを蓄積、介護分野に生かし、自社展示会も企画しています。 最新決算である2022年3月期第3四半期決算短信(連結)の売上高は234億7,500万円。 ※2022年1月31日
事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。 ※2022年3月期第3四半期決算短信(連結)

① 映像&IT事業

② ロボティクス事業

① 映像&IT事業

主力である教育市場向けの書画カメラや電子黒板の販売は、国内市場では前期の需要増の反動や競合参入による販売価格の低下により、想定を下回る状況が続いたようです。
欧米市場ではコンテナ船の輸送や荷揚げに遅延が発生した影響が一部でありましたが、堅調に推移。業務用車載機器(ドライブレコーダー・デジタルタコグラフ)においては、堅調な需要に対して半導体等電子部品の調達難が継続していることにより、予想を下回る結果となっています。このほかに連結子会社が増加したことが売上の伸長に貢献したようです。

これらの結果、映像&IT事業における売上高は183億7,800万円(前年同四半期比 48.3%増)、営業利益は1億6,000万円(前年同四半期比80.3%減)となっています。

② ロボティクス事業

主力であるFA関連機器は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響からいち早く回復した中国市場を 中心に、労働力不足から来る自動化・省力化ニーズが高く、販売強化に注力したことにより売上が伸長したようです。
国内市場は、期初から続くCOVID-19による需要減や半導体等電子部品の調達難が影響して想定を下回っています。

これらの結果、ロボティクス事業における売上高は50億9,700万円(前年同四半期 比46.4%増)、営業利益は1億3,700万円(前年同四半期比22.8%増)となっています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額:156億2,900万円 ※2022年3月29日終値ベース
・総資産:318億6,300万円 ※2022年3月期第3四半期
・資本金:25億円 ※2022年3月期第3四半期
・売上高:234億7,500万円 ※2022年3月期第3四半期
・従業員数:1,320名(連結) ※2022年3月期第3四半期

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2019年3月 19,615 1,141 1,110 646 48.0 4
2020年3月 22,357 1,443 1,384 1,319 97.9 15

2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年3月 26,481 2,420 2,533 2,147 159.3 20記

最新決算である2022年3月期第3四半期決算(連結)は以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円)
2022年3月 23,475 315 430 -23 -1.74

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:742円(2022年3月29日終値)
・予想PER:6.67倍   ※2022年3月期の予想EPS111.3より算出
・実績PBR:1.10倍   ※BPS674.56(2021年3月期)
・予想配当利回り:2.70% ※2022年3月期20円予想
・年初来高値:2,262円(2021年7月15日)
・年初来安値:571円(2022年3月9日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、テクノホライゾンの現状を把握します。 2021年3月期決算と2022年3月期第3四半期決算の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

※2022年3月期第3四半期決算

・総資産     318億6,300万円
・自己資本比率      28.5%
・有利子負債  144億6,700万円 ※十万円以下切り捨て
・利益剰余   44億7,500万円 ※十万円以下切り捨て

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が144億6,700万円、自己資本比率は28.5%と3割以下となっています。 また実績PBRは1.10倍、利益剰余金も44億7,500万円です。 財務的にはまだ、脆弱とも考えられます。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2022年3月期第3四半期)の売上高を、2021年度3月期第3四半期の売上高158億7,600万円と比較すると約47.9%も増加しています。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年3月期決算

営業活動により得られた資金は16億5,400万円となっています。これは主に、税金等調整前当期純利益26億7,400万円、減価償却費4億6,400万円、のれん償却額3億900万円、退職給付に係る負債の減少額8,800万円、売上債権の増加額 22億6,700万円、たな卸資産の減少額7億700万円、仕入債務の増加額6億1,600万円、法人税等の支払額4億5,000万円等によるものとしています。
本業で稼げているようです。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動により支出した資金は23億2,900万円となっています。これは主に、有形固定資産の取得による支出2億9,600万円、有形固定資産の売却による収入2億7,000万円、無形固定資産の取得による支出1億7,400万円、連結の範囲の変更 を伴う子会社株式の取得による支出13億6,800万円、関係会社株式の取得による支出2億800万円等によるものとしています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動により得られた資金は40億1,400万円となっています。これは主に、新型コロナウイルスの影響を加味して借入を行ったことによる短期借入金の純増加額18億2,800万円、シンジケートローン実行等による長期借入れによる収入34億円、長期借入金の返済による支出9億3,600万円等によるものとしています。

現金及び現金同等物は、前期より33億3,000万円増加し82億8,400万円となっています。

6. トピック:運営の基本原則

テクノホライゾンにはミッションを達成する為、運営の基本原則が3つあります。

テクノホライゾングループは、事業のミッションである『グローバルな「人と社会」に貢献する』に向けて、核となる事業である「映像&IT及びロボティクス事業」、それを展開させるための「マーケティング力」及び「プロダクト開発」の強化に力を入れ、さらなる「グローバル化」に取り組んでまいります。
また、運営の基本原則として「コンプライアンスの徹底」「顧客満足に徹すること」「公正かつ透明な事業活動を行うこと」を実行してまいります。


2022年3月期の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2022年3月 36,500 2,000 2,000 1,500 111.3 20

7. まとめ

今回はテクノホライゾンを分析しました。

株価は742円(2022年3月29日現在)で時価総額も156億2,900万円(2022年3月29日現在)と値動きも極端に重たくはありません。
実績PBRは1.10倍(2022年3月29日現在)、同社の予想PERは6.67倍(2022年3月29日現在)また、東証JASDAQの電気機器における平均PERは12.49倍(2022年3月29日現在)です。
ファンダメンタルズでは、PBRこそ1.10倍ですが、PERはまだ割安圏内であると考えられます。

また同社は2022年3月22日、スバル用品向けの純正商品として、360度ドライブレコーダー「SAA3060370」の提供を開始したと発表しています。同商品は、スバル車の純正商品「アイサイト」との同時搭載が可能で、アイサイトの機能に何ら悪影響を及ぼさないようです。

大手への商品提供を獲得した同社ですが、今後も売上の影響や予想通りの決算になるかなどを見定めていく必要もあるため、同社は3~5年間など長期的な投資が向いていると思います。
今後も、DX化の流れに乗り市場の注目を集めていくか、同社の行方には要注目です。