ウェーブロックホールディングス(7940)
ウェーブロックホールディングスは、複数の素材と各種加工技術を組み合わせた、様々な付加価値製品の製造、販売を手掛ける企業体です。
自然エネルギーは太陽光・地中熱・風力・再生可能なバイオマスなど、無くなることがほぼ無い非枯渇性エネルギーとして注目されています。
現在、世界的に新エネルギーの利用技術が開発される中、自然エネルギーを利用することはとても重要となります。
そこで今回は、地中熱を利用したビジネス展開にも注力している、ウェーブロックホールディングスを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。
※東証の区分変更に伴い、同社は東証スタンダードへ変更となっています。
1. 会社概要
ウェーブロックホールディングスは、1964年に糸強化プラスチックシートに関する製法特許「ウェーブロック」をイタリアから導入するために、日商(株)(現
双日)日本カーバイド工業、丸登化成工業(株)(現
龍田化学(株))の3社が均等出資し設立した日本ウェーブロック(株)が起源です。
農業用雨合羽から技術導入を図り、その後、その特性を生かせる分野としてビニルハウスやレインコート、産業用資材等へと市場の裾野を広げながら、事業を拡大してきました。また、海外市場やM&Aも積極的に展開しています。
同社は経営難から2009年に株式を非上場化していますが、組織再編等を進めながら経営基盤の強化を推し進め、2017年には東証2部への再上場を果たしました。翌年には、東証1部へ指定変更もしています。
同社の沿革は、以下のとおりです。
1964年:日商(株)[現、双日(株)]、日本カーバイド工業(株)、丸登化成工業(株)[現、龍田化学(株)] 3社で均等出資し資本金6,000万円の日本ウェーブロック(株)を設立
1965年:ウェーブロック製品の生産、販売を開始
1979年:壁紙業界に参入、塩化ビニル壁紙ベースの生産、販売を開始
1990年:日本証券業協会に店頭売買銘柄として登録、当社株式を公開
1996年:東京証券取引所市場第二部に上場
2003年:公開買付けにより、ダイオ化成(株)の発行済株式の50.1%を取得し同社を連結子会社化
2005年:商号を「ウェーブロックホールディングス(株)」に変更し、新設会社「日本ウェーブロック (株)」に事業の全てを承継し純粋持株会社化/株式交換によりダイオ化成(株)を完全子会社化
2009年:東京証券取引所市場上場廃止
2013年:日本ウェーブロック(株)を会社分割により製販分離。製造会社が日本ウェーブロック(株)の商号を引き継ぐ。販売会社は(株)イノベックス(2013年2月設立)へ吸収し、同時にダイオ化成(株)の産業資材販売部門を統合
2017年:東京証券取引所市場二部再上場
2018年:東京証券取引所市場一部指定
2022年:(株)イノベックスが、(株)エイゼンコーポレーションの発行済株式全株100%を取得し 完全子会社化
2. 事業の特徴
同社は防虫網で首位となっていますが、地中熱ビジネスにも本格参入しています。
また、産業や農業資材、金属調加飾フィルムなども手掛け、米新興EVリビアンのトラックへ加飾フィルムの量産を開始しており、同社のSUVへの供給も決定しているようです。
最新決算である2022年3月期第3四半期決算短信(連結)の売上高は154億8,000万円。 ※2022年1月31日
事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。 ※2022年3月期第3四半期決算短信(連結)
① マテリアルソリューション事業
② アドバンストテクノロジー事業
① マテリアルソリューション事業
ビルディングソリューションおよびインダストリアルソリューション分野において、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種会場向けシートおよび東京オリンピック・パラリンピック に係る工事等の特需もあり、また、回復の動きが見られる建設工事の需要を引き続き取り込み、好調に推移したようです。
パッケージングソリューション分野においては、原材料価格上昇分の販売価格への転嫁を進め、コロナ禍におけ る健康志向の高まりを背景とするヨーグルト関連のシート需要が増加したことや、主要取引先との連携も強化し、取引拡大を図っています。
アグリソリューション分野においても、国内農業における資材等への投資意欲に回復が見られたこともあり、農業用資材等の販売が堅調に推移したようです。
一方で、リビングソリューション分野においては、販売先となるホームセンター業界において、昨年の巣ごもり需要からの反動減が続き、さらに、需要期となる夏場での長雨等の気候影響も受け、販売が落ち込んでいます。
これらの結果、事業全体の売上高は120億3,100万円(前年同期比0.8%増) 。セグメント利益は7億5,000万円(前年同期比21.9%減)となっています。
② アドバンストテクノロジー事業
デコレーション&ディスプレー分野(金属調加飾フィルム分野および PMMA/PC二層シート分野から名称変更)において、ロックダウン解除後のインドや東南アジア市場での需要が回復、また、国内市場においても自動車用途中心に需要が堅調に推移したようです。
さらに、欧米市場においても、新規案件の立ち上げが進み、大きく伸長し、自動車用内装ディスプレー用途においても、新規案件獲得等の成果が順調に推移した為、売上が伸長しています。 これらの結果、事業全体の売上高は34億7,000万円(前年同期比9.4%増)。セグメント利益は3億600万円(前年同期比 331.1%増)となっています。
3. 会社規模
会社規模は、以下のとおりです。
・時価総額:74億5,100万円 ※2022年4月12日終値ベース
・総資産:236億7,200万円 ※2022年3月期第3四半期
・資本金:21億8,500万円 ※2022年3月期第3四半期
・売上高:154億8,000万円 ※2022年3月期第3四半期
・従業員数:572名(連結) ※2021年3月期
4. 業績
過去2年間の業績は次のとおりです。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2019年3月 | 28,229 | 1,521 | 1,943 | 1,429 | 146.4 | 28 |
2020年3月 | 29,251 | 1,622 | 1,598 | 1,108 | 116.3 | 30 |
2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績は、以下のとおり。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2021年3月 | 29,248 | 1,489 | 1,428 | 2,386 | 244.8 | 30 |
最新決算である2022年3月期第3四半期決算(連結)は以下のとおり。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) |
---|---|---|---|---|---|
2022年3月 | 15,480 | 572 | 792 | 597 | 61.75 |
株価・株価指標は以下のとおりです。
・株価:670円(2022年4月12日終値)
・予想PER:8.17倍 ※2022年3月期の予想EPS82より算出
・実績PBR:0.43倍 ※BPS1,560.58(2021年3月期)
・予想配当利回り:4.48% ※2022年3月期30円予想
・年初来高値:752円(2022年1月5日)
・年初来安値:665円(2022年4月11日)
5. 財務分析
BS・PL・CS分析から、ウェーブロックホールディングスの現状を把握します。 2021年3月期決算と2022年3月期第3四半期決算の数字で検討します。
① BS分析
まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ
※2022年3月期第3四半期決算
・総資産 236億7,200万円
・自己資本比率 59.3%
・有利子負債 38億6,500万円 ※十万円以下切り捨て
・利益剰余金 124億3,400万円 ※十万円以下切り捨て
総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が38億6,500万円ですが、自己資本比率は59.3%と5割を超えています。
また実績PBRは0.43倍、利益剰余金も124億3,400万円あります。 財務的に大きな問題はないと考えられます。
② PL分析
損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2022年3月期第3四半期)の売上高を、2021年度3月期第3四半期の売上高217億2,800万円と比較すると約28.8%減となっています。
③ CS分析
キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。
※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる
<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年3月期決算
営業活動の結果得られた資金は21億1,400万円(前年同期は28億6,400万円の収入)となっています。これは主に、子会社株式売却益20億9,400万円、仕入債務の減少額3億4,500万円等の資金の減少要因があったものの、税金等調整前当期純利益34億2,000万円、減価償却費10億7,900万円、売上債権の減少額4億4,600万円等の資金の増加要因によるものとしています。
本業で稼げているようです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動の結果得られた資金は12億9,100万円(前年同期は4億6,500万円の支出)となっています。これは主に、有形固定資産の取得による支出8億2,200万円等の資金の減少要因があったものの、有形固定資産売却による収入7億1,300 万円、連結範囲の変更を伴う子会社売却による収入14億5,600万円等の資金の増加要因によるものとしています。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動の結果使用した資金は8億8,400万円(前年同期は21億1,400万円の支出)となっています。これは主に、短期借入れによる収入171億1,000万円、長期借入れによる収入12億9,000万円等の資金の増加要因があったものの、短期借 入金の返済による支出163億5,000万円、長期借入金の返済による支出26億7,000万円等の資金の減少要因によるものとしています。
現金及び現金同等物は、前期より25億1,400万円増加し48億8,200万円となっています。
6. トピック:企業価値を最大化する、ビジョン・ミッション・バリューズ
ウェーブロックホールディングスは、企業価値を最大化させるために以下のようなビジョン・ミッション・バリューズを掲げています。
ビジョン:ウェーブロックグループのステークホルダーの幸せを最大化するために、業界の中でも世界トップクラスの収益性を誇る存在感のある企業になることを目指す。
ミッション:ウェーブロックグループの製造技術、ノウハウ、ビジネス上のリレーションやネットワークを駆使して、社会が抱えるさまざまな「不」を解決する。
バリューズ:<個人の尊重>
・企業の価値は結局のところ「人」にある。
・一人一人の成長が企業の成長につながることを意識し研鑽を積み重ねる。
・ウェーブロックグループの従業員一人一人がかけがえのない仲間である。
・一人一人の「アイデア」や「思い」を大切にする。
<正直であり誠実>
・ビジネスの成功には「ロゴス(ロジック=論理)」と「パトス(パッション=情熱)」 は当然必要。
・しかし、「エトス(エシックス=倫理)」のない結果は認めない。
<前向きな失敗は問わない>
・失敗を恐れるがあまり、チャレンジをせずに現状を維持することは後退を意味する。
・前向きな失敗は個々人のキャリアの肥やしであり、企業の成長の源泉と考えよう。
2022年3月期の業績予想は、以下のとおりです。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2022年3月 | 20,400 | 750 | 1,070 | 770 | 82 | 30 |
7. まとめ
今回はウェーブロックホールディングスを分析しました。
株価は670円(2022年4月12日現在)で時価総額も74億5,100万円(2022年4月12日現在)と値動きは軽い銘柄です。
実績PBRは0.43倍(2022年4月12日現在)、同社の予想PERは8.17倍(2022年4月12日現在)また、東証一部(※2022年4月4日から東証は3区分に変更)の科学における平均PERは16.16倍(2022年4月1日現在)です。
ファンダメンタルズでは、PBR、PERともにまだ割安圏内であると考えられます。
また同社は2022年3月24日に、グループ中核会社のイノベックスを軸に、地中熱の利用計画から設置工事、地中熱システム運用コンサルまでをワンストップで対応すると発表しています。具体的には、農業分野向けでの展開をまずは開始した後、病院や老人ホームなど施設向けへの展開も推進していくとしています。
ただ、今後も売上や予想通りの決算になるかなどを見定めていく必要もあるため、同社は3~5年間など長期的な投資が向いていると思います。
今後も、自然エネルギー分野でニーズを捉えていくのか、市場の注目を集め始めた同社の行方には要注目です。