NCS&A(9709)

NCS&Aは、様々なシステム開発やシステムの構築に携わってきたソフト業界の老舗企業です。
現在、loT、ビッグデータ、人工知能、ロボットなどの新たな技術基盤が新たなる産業構造をもたらす社会基盤として期待が高まっています。 そこで今回は、この流れに乗り事業環境が明るいとの期待感が高まりつつある、NCS&Aを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。
※東証の区分変更に伴い、同社は東証スタンダードへ変更となっています。

1. 会社概要

NCS&Aは1961年の創業以来50数年にわたり、「コンピューターは社会に奉仕する」との創業精神に基づき、ソリューションリーディングカンパニーとして多岐にわたるシステム開発やシステム構築に携わってきました。
2014年に、ソフトウエア開発・保守、パッケージ販売会社の「株式会社アクセス」を吸収合併し 「NCS&A株式会社」に商号を変更しています。セキュリティソリューション、AI、loT、ビッグデータなど、現在もITサービスを提供し続ける老舗企業として発展を続けています。

同社の沿革は、以下のとおりです。


1961年:同社の前身である日本システム・マシン株式会社に電子計算機部を新設し、コンピュータの専門会社設立に備える

1962年:日本電気株式会社と販売特約店契約を結び、NEAC電子計算機システムの販売およびサービス業務を開始

1966年:日本コンピューター・システム株式会社に商号を変更する

1983年:京都営業所を開設コンピュータの保守専門子会社として、オーエーエンジニアリング株式会 社を設立

1989年:大阪証券取引所市場第二部に株式を上場

1999年:プライバシーマーク使用許諾事業者の認定を受ける

2012年:NCSサポート&サービス株式会社を設立

2013年:東京証券取引所市場第二部に上場

2014年:ソフトウエア開発・保守、パッケージ販売会社の「株式会社アクセス」と合併、NCS&A株式会社に商号を変更

2016年:ベルギー・Luciad社の地理空間情報ソフトウェア製品の販売を開始

2017年:日本アイ・ビー・エム株式会社とのパートナーシップにより、IBM Watson Explorerの取扱い を開始

2022年:東京証券取引所の市場区分再編に伴い、東京証券取引所スタンダード市場に上場

2. 事業の特徴

同社は、SI、アウトソーシングなどの総合情報サービスを展開していて、NEC経由の請け負いが多いのも特徴です。 官庁向けシステム開発は着実で、自社開発の可視化ソリューションや外資系保険向けソフトも好調となっています。また、市役所向けAI窓口ナビゲーションの実証実験も開始し、非接触対話で窓口案内の利便性を推進しているようです。
最新決算である2022年3月期第3四半期決算短信(連結)の売上高は146億200万円。 ※2022年1月31日

※同社は顧客の利用目的に応じたコンピュータ機器の選定とソフトウエアの開発を主とするITサービスを事業内容としており、不可分の営業形態の単一のセグメントであるため、記載を省略しております。 ※2022年3月期第3四半期決算短信(連結)

同社グループが属する情報サービス産業においては、AI、IoT、ビッグデータ、RPA(ロボティックプロセス オートメーション)等の技術を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通じて価値を創造し、競争上の優位性を確立する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」への関心が高まっています。
このような環境のもと、同社グループは、中長期的な目標である「収益性の安定と向上」に向けて、積極的な投資による主力ソリューション強化の取り組みを継続するとともに、研究開発を通して新しい事業の芽を創出する活動として2020年度下期から「社内スタートアップ制度」を開始しています。

また、製品別や顧客業種別に細分化されていた営業部門を集約し、部門間の垣根を取り払うことで、主力ソリューションの販売先業種の拡大や既存顧客へのクロスセルの促進を図る取り組みを当期より開始したようです。
これら取り組みなどの結果、売上高は前年同四半期に比べ5億1,000万円増収の146億200万円となっています。

利益面については、増収効果に加えて売上総利益率の改善や販売費及び一般管理費の減少により営 業利益は前年同四半期に比べ3億6,200万円増加の8億7,500万円、経常利益は前年同四半期に比べ3億5,000万円増加の9億3,000万円、特別損失として事務所移転費用8,000万円を計上し、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同四半期に比べ2億3,400万円増加の6億3,200万円となっています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額:89億1,000万円 ※2022年4月19日終値ベース
・総資産:166億7,300万円 ※2022年3月期第3四半期
・資本金:37億7,500万円 ※2022年3月期第3四半期
・売上高:146億200万円 ※2022年3月期第3四半期
・従業員数:1,316名(連結) ※2021年3月期

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2019年3月 20,457 688 791 573 31.1 12
2020年3月 22,408 896 1,014 1,133 61.8 24記

2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年3月 19,751 830 958 789 45.0 15

最新決算である2022年3月期第3四半期決算(連結)は以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円)
2022年3月 14,602 875 930 632 38.1

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:495円(2022年4月19日終値)
・予想PER:10.02倍   ※2022年3月期の予想EPS49.48より算出
・実績PBR:0.84倍   ※BPS589.74(2021年3月期)
・予想配当利回り:4.44% ※2022年3月期22円予想
・年初来高値:530円(2022年3月28日)
・年初来安値:476円(2022年1月27日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、NCS&Aの現状を把握します。 2021年3月期決算と2022年3月期第3四半期決算の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

※2022年3月期第3四半期決算

・総資産     166億7,300万円 
・自己資本比率      58.4%
・有利子負債    1,200万円 ※十万円以下切り捨て
・利益剰余金   26億1,000万円 ※十万円以下切り捨て

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社の有利子負債は1,200万円、自己資本比率も58.4%と5割を超えています。 また実績PBRは0.84倍、利益剰余金も26億1,000万円とプールもあります。 財務的に大きな問題はないと考えられます。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2022年3月期第3四半期)の売上高を、2021年度3月期第3四半期の売上高140億9,100万円と比較すると約3.6%の増加となっています。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年3月期決算

営業活動の結果得られた資金は2億5,000万円(前連結会計年度は21億8,500万円の収入)となっています。
この主な要因は、税金等調整前当期純利益の計上(9億5,300万円)、減価償却費の計上(2億7,600万円)、たな卸資産の減少(2億1,800万円)等による収入に対して、売上債権の増加(5億5,500万円)、法人税等の支払(3億1,500万円)、未払消費税等の減少(1億9,000万円)、差入保証金の増加(1億9,000万円)等の支出によるものとしています。 本業で稼げているようです。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動の結果使用した資金は1億300万円(前連結会計年度は1億2,500万円の支出)となっています。
この主な要因は、定期預金の払戻(1億1,500万円)等による収入に対して、無形固定資産の取得(8,000万円)、定期預金の預入(6,500万円)、有形固定資産の取得(6,300万円)等の支出によるものとしています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動の結果使用した資金は12億7600万円(前連結会計年度は3億8,000万円の支出)となっています。
この主な要因は、自己株式の取得(7億5,200万円)、配当金の支払(4億3,900万円)、リース債務の返済(8,400万円) 等の支出によるものとしています。

現金及び現金同等物は、前期より11億2,800万円減少し81億7,900万円となっています。

6. トピック:創業精神「コンピューターは社会に奉仕する」

NCS&Aには創業精神を支え続けるため、以下のような経営理念と行動指針を掲げています。

経営理念:私たちは、確かな技術で新たな価値を創造し、社会に貢献します。

行動指針:私たちは宣言します。夢と未来にむかって、あたらしさへ挑戦します。お客様の心の声に、しなやかな発想で応えます。的確な判断と責任のもと、すばやく行動します。


2022年3月期の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2022年3月 20,000 1,150 1,260 820 49.48 22

7. まとめ

今回はNCS&Aを分析しました。

株価は495円(2022年4月19日現在)で時価総額も89億1,000万円(2022年4月19日現在)と値動きは軽い銘柄です。
実績PBRは0.84倍(2022年4月19日現在)、同社の予想PERは10.02倍(2022年4月19日現在)また、東証二部(※2022年4月4日から東証は3区分に変更)の情報・通信業における平均PERは313.65倍(2022年4月1日現在)です。
ファンダメンタルズでは、PBR、PERともにまだ割安圏内であると考えられます。

また同社は2022年2月28日に、2022年3月期連結予想を経常利益、純利益ともに上方修正すると発表しました。さらに、期末配当を従来予想の18円から22円に増額しています。2022年3月期の上方修正と配当増額は2度目の発表となっており、今後も収益拡大への期待が高まっているようです。
ただ、今後も売上や予想通りの決算になるかなどを見定めていく必要もあるため、同社は3~5年間など長期的な投資が向いていると思います。

今後も、老舗の真価を発揮し、新たなる技術の社会基盤として頭角を現すか、同社の行方には要注目です。