カメイ株式会社(8037)

カメイ株式会社は、東北最大の石油、LPガス卸の大手企業です。
未だ先行きが不透明なコロナ、さらには紛争による地政学的リスクの緊張が続く中、FRBの利上げなど株式市場も気迷い感の強い展開となっています。
そこで今回は、大荒れの中でも直実に利益を積み増しているとの期待感が高まる、カメイを取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。
※東証の区分変更に伴い、同社は東証プライム市場へ変更となっています。

1. 会社概要

カメイは1903年に、石油、雑貨、砂糖、洋粉等の販売業を開始した老舗企業です。現在では、エネルギー関連を主軸に、食料品やオフィス製品、建設資材、医薬品など日常生活にあるほとんどの商品を取り扱うグループへと発展を遂げました。また東北のみではなく、関東や関西へも事業を拡大しています。

同社の沿革は、以下のとおりです。


1903年:初代社長亀井文平、宮城県塩釜にて石油、雑貨、砂糖、洋粉等の販売業を開始

1908年:日本石油㈱[現ENEOS㈱]と特約販売契約を締結/石油製品の本格販売開始

1919年:酒類販売開始

1933年:麒麟麦酒㈱[現キリンビール㈱]と特約販売契約を締結/のちに酒類販売の柱となる

1949年:ガソリンスタンドの運営を開始

1955年:日本石油瓦斯㈱[現ENEOSグローブ㈱]と特約契約を締結。プロパンガスの販売を開始 日本ダンロップ護謨㈱[現住友ゴム工業㈱]と特約販売契約を締結し、タイヤ販売を開始

1973年:貿易事業への進出、国際化への対応のため海外法人カメイ・ショウテン・オブ・アメリカを設立

1986年:東京証券取引所第二部上場

1988年:東京証券取引所第一部上場

1999年:全国カメイ特約販売店会を設立/山形トヨペット㈱の株式を取得

2000年:ファーマシー事業課を設置/調剤薬局事業を開始

2006年:東北ガス㈱の株式を取得/都市ガス事業を開始

2014年:新基幹システム稼働開始

2022年:㈱立花ADMの株式を取得

2. 事業の特徴

同社の傘下にはトヨタ販社があり、異業種を含めたM&Aを駆使して多角化を進めているのが特徴です。
また、建設資材でのシナジーを狙い、2月に大阪の土木会社・立花ADMを完全子会社化しました。さらに、海外事業でのM&Aも積極的に継続を検討しているようです。
最新決算である2022年3月期第3四半期決算短信(連結)の売上高は3,342億7,100万円。 ※2022年2月9日
事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。 ※2022年3月期第3四半期決算短信(連結)

① エネルギー事業

② 食料事業

③ 建設関連事業

④ 自動車関連事業

⑤ 海外・貿易事業

⑥ ペット関連事業

⑦ ファーマシー事業

⑧ その他の事業

① エネルギー事業

石油関係については、ガソリンスタンドでの販売は、新型コロナウイルスの感染防止に 配慮して営業するとともに、タイヤ・整備・洗車・コーティングなどトータルサービスの強化を図ったようです。その他産業用燃料などの法人需要向け販売は、石油製品価格の上昇や石油製品需要が減少する厳しい環境のなか、新規・深耕開拓や各種商材の提案営業を強力に推進しています。

LPガス関係については、コロナ禍による外食需要の減少により飲食店向けの販売が厳しいものの、新規顧客獲得やM&Aによる商圏獲得に取り組み、拡販に努めたようです。

これらの結果、売上高は1,660億3,400万円(前年同期比33.5%増)、営業利益は石油製品の販売競争激化による利益率の低下などにより22億5,200万円(前年同期比30.5%減)となっています。

② 食料事業

食品関係については、前年同期の外出自粛や営業時間短縮による大幅な外食需要減少の反動などにより、飲食店向けの畜産加工製品の販売が増加したようです。

酒類関係については、地酒などの差別化商品の販売強化や輸入ワインの取扱商品拡充に努めたものの、飲食店に対する酒類提供の制限などにより需要が減少し、やや厳しい状況となっています。

これらの結果、売上高は247億3,500万円(前年同期比8.7%減)、営業利益は5億500万円(前年同期は1億4,300万円の営業損失)となっています。

③ 建設関連事業

建設資材関係については、大型鉄骨工事やメガソーラー架台工事が増加したものの、鋼材価格上昇に伴う利益率の低下などにより営業利益は減少したようです。

ハウジング関係については、ハウスメーカー及び工務店への住宅設備機器の提案営業や、新規・深耕開拓に努めています。

これらの結果、売上高は323億5,800万円(前年同期比21.6%増)、営業利益は13億2,400万円(前年同期比6.6%減) となっています。

④ 自動車関連事業

国産車販売については、消費マインドが持ち直すなか法人営業の強化に努めたものの、 コロナ禍による生産遅れにより販売台数が減少し、やや厳しい状況となっています。

輸入車販売については、消費マインドの持ち直しや新車の拡販に努めたことなどにより販売台数が伸長し、 好調に推移したようです。

レンタカー関係については、法人客の新規・深耕開拓に努めたことや、前年同期に比べてビジネス需要やレジャー需要が増加したことにより好調に推移しています。

これらの結果、売上高は450億8,500万円(前年同期比3.3%増)、営業利益は16億7,300万円(前年同期比77.4%増) となっています。

⑤ 海外・貿易事業

海外事業関係については、コロナ禍での巣ごもり需要による米国内で展開する日系スー パーマーケットの販売伸長などにより好調に推移したようです。また、シンガポールの青果の輸入卸販売会社及び米国の日本食品の輸入卸販売会社をM&Aにより取得し、海外事業の拡大を推進してもいます。

貿易事業関係については、経済活動の再開や需要の回復などにより、アジア向け自動車用電装部品や米国向け日本食材などの輸出やロシア産水産物の輸入が増加したほか、海外ブランドシューズなどの販売が伸長し好調に推移したようです。

これらの結果、売上高は357億6,800万円(前年同期比19.5%増)、営業利益は23億200万円(前年同期比43.6% 増)となっています。

⑥ ペット関連事業

ペットフード・ 用品関係については、自社ブランド商品の開発強化とホームセンター などへの販路拡大に努めたものの、販売競争の激化により、やや厳しい状況となったようです。

これらの結果、売上高は95億8,500万円(前年同期比3.4%減)、営業利益は1億1,000万円(前年同期比46.4%増) となっています。

⑦ ファーマシー事業

新規出店による店舗網の拡充効果や地域の皆様から選ばれる「かかりつけ薬剤師・ 薬局」への取り組みなどにより処方箋枚数が伸長し、堅調に推移したようです。

これらの結果、売上高は132億6,000万円(前年同期比3.0%増)、営業利益は8,300万円(前年同期は48百万円の営業 損失)となっています。

⑧ その他の事業

その他の事業については、オフィス機器販売、リース業、運送業及び保険代理店業などを展開しており、新規顧客の獲得や提案営業の強化に努めたようです。

これらの結果、売上高は74億4,500万円(前年同期比11.9%減)、営業利益は8億4,700万円(前年同期比11.3%増) となっています。

3. 会社規模

会社規模は、以下のとおりです。

・時価総額:382億6,900万円 ※2022年4月26日終値ベース
・総資産:2,781億400万円 ※2022年3月期第3四半期
・資本金:81億3,200万円 ※2022年3月期第3四半期
・売上高:3,342億7,100万円 ※2022年3月期第3四半期
・従業員数:5,213名(連結) ※2021年3月期

4. 業績

過去2年間の業績は次のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2019年3月 472,995 9,945 11,076 6,598 196.4 27.5
2020年3月 453,844 10,399 11,747 6,755 201.0 30

2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績は、以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2021年3月 405,332 11,504 12,977 7,848 233.6 32.5

最新決算である2022年3月期第3四半期決算(連結)は以下のとおり。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円)
2022年3月 334,273 7,950 9,168 4,835 143.90

株価・株価指標は以下のとおりです。

・株価:1,018円 (2022年4月26日終値)
・予想PER:4.28倍 ※2022年3月期の予想EPS238.09より算出
・実績PBR:0.28倍 ※BPS3599.73(2021年3月期)
・予想配当利回り:3.44% ※2022年3月期35円予想
・年初来高値:1,099円 (2022年3月22日)
・年初来安値:971円 (2022年1月27日)

5. 財務分析

BS・PL・CS分析から、カメイの現状を把握します。 2021年3月期決算と2022年3月期第3四半期決算の数字で検討します。

① BS分析

まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ

※2022年3月期第3四半期決算

・総資産 2,781億400万円
・自己資本比率 43.5%
・有利子負債 583億6,100万円 ※十万円以下切り捨て
・利益剰余金 1,055億1,300万円 ※十万円以下切り捨て

総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社の有利子負債は583億6,100万円ありますが、自己資本比率も43.5%と4割を超えています。 また実績PBRは0.28倍、利益剰余金も1,055億1,300万円とプールもしっかりあります。 財務的に大きな問題はないと考えられます。

② PL分析

損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2022年3月期第3四半期)の売上高を、2021年度3月期第3四半期の売上高2,829億2,600万円と比較すると18.1%の増加となっています。

③ CS分析

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。

※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる

<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2021年3月期決算

営業活動の結果得られた資金は212億5,600万円(前期は144億800万円の収入) となっています。主な要因は、売上債権の増減額が58億5,400万円の増加(前期は27億5,400万円の減少)となった一方、仕入債務の増減額が42億5,800万円の増加(前期は81億6,000万円の減少)、たな卸資産が25億5,700万円減少(前期は23億8万円の増加)したことによるものとしています。
本業で稼げているようです。


<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動の結果使用した資金は108億4,200万円(前期は129億700万円の支出)となっています。主な要因は、有形固定資産の取得による支出が87億5,200万円(前期は123億9,900万円の支出)となったことによるものとしています。


<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動の結果使用した資金は33億3,100万円(前期は8億9,100万円の収入)となっています。主な要因は、短期借入金の純増減額が6億7,100万円の減少(前期は47億73百万円の増加)となったことによるものとしています。

現金及び現金同等物は、前期より65億7,000万円増加し418億1,200万円となっています。

6. トピック:カメイを発展させ続ける5つの社是

カメイには、企業を発展させ続けてきた5つの社是があります。

信用第一:当社は信義誠実にのっとった活動をおこない、これを積み重ねる。信用こそ当社最大の資産であり、活動の原点である。社会を構成する一員としての信用を得るために、倫理観を保ちながら、あらゆる企業活動においてリスク管理およびコンプライアンスを徹底する。

奉仕精神:企業の活動は社会に貢献し、利用者や取引先によろこばれてはじめて評価され、支持が得られる。当社はつねに仕事を通して良質の「サービス」を提供することをこころがける。

和心協同:いかなる職場においても人間関係を明朗に維持する。全社員はこころを一つに合わせて業務にあたり、より働きよい職場をつくるよう努力する。

積極挑戦:当社は仕事のカベに積極的に挑戦し、これを乗りこえる努力を続ける。商品の開発と調達、販売先の開拓と維持、コストダウン、コミュニケーションなど、仕事のあらゆる側面に見いだされる障害と限界に、当社は果敢にチャレンジし、これを一歩づつ克服していく。

未来開発:当社の明日の発展を実現するためには、現在の開発努力が必要である。開発とは新しい市場、新しい商品、新しいビジネスを当社が主体的に発見し、作り出し、新しい付加価値を生み出すことである。当社では未来のために今なすべき開発努力をおこたらない。


2022年3月期の業績予想は、以下のとおりです。

(単位:百万円)
年月 売上高 営業利益 経常利益 当期利益 1株益(円) 1株配(円)
2022年3月 467,000 12,200 13,700 8,000 238.09 35

7. まとめ

今回はカメイ株式会社を分析しました。

株価は1,018円(2022年4月26日現在)で時価総額も 382億6,900万円(2022年4月26日現在)と値動きも極端に重たい銘柄ではありません。 実績PBRは0.28倍(2022年4月26日現在)、同社の予想PERは4.28倍(2022年4月26日現在)また、東証一部(※2022年4月4日から東証は3区分に変更)の卸売業における平均PERは16.93倍(2022年4月1日現在)です。 ファンダメンタルズでは、PBR、PERともにかなり割安圏内であると考えられます。

また同社は、2022年3月期業績予想を2度上方修正しています。営業利益は、2012年3月期に記録した最高利益の120億600万円を更新する見込みです。また、2023年3月期についても海外・貿易事業・自動車関連事業の回復を支えに、同程度の営業利益が観測されてもいるようです。
ただ、今後も売上や予想通りの決算になるかなどを見定めていく必要もあるため、同社は3~5年間など長期的な投資が向いていると思います。

今後もM&Aなど多角化によって、堅実に成長を続けるとの期待が高まる同社の行方には要注目です。