ジェイリース株式会社(7187)
ジェイリース株式会社は、九州地盤の住居、事業用家賃保証の中堅企業です。
現在、新型コロナウイルス感染症の影響が残る中、終焉の見えない紛争が続き、市場も不透明な状況が続いています。 一方で、賃貸不動産業界においては、入居需要が底堅く、加えてオフィスやテナント等、事業用物件に対する賃料保証のニーズが増加傾向にあります。
そこで今回は、与信審査及び債権管理業務の強化によって堅調な売上を確保している、ジェイリース株式会社を取り上げ、同社の株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。
※東証の区分変更に伴い、同社は東証プライム市場へ変更となっています。
1. 会社概要
同社は2004年の創業以来、家賃の滞納など、連帯保証人に代わって、物件の家主及び不動産会社に家賃の立替払いを行う家賃保証業を主要事業として展開を続けてきました。
その後、2016年6月の東京証券取引所マザーズ市場上場を経て、2018年3月には東証第一部上場を果たしました。また、2011年シーズンより、Jリーグに加盟する「大分トリニータ(株式会社大分フットボールクラブ)」のオフィシャルパートナーを務めてもいます。
同社の沿革は、以下のとおりです。
沿革
2004年:会社創立
2005年:商号をジェイリース株式会社に変更
2010年: 東京支社(現:東京本社)を開設
2012年: 子会社あすみらい株式会社設立
2014年:大阪支店(現:大阪支社)を開設
2016年:東京証券取引所マザーズ市場に株式を上場
2018年:東京証券取引所市場第一部へ市場変更
2022年:東京証券取引所市場見直しに伴いプライム市場に移行
2. 事業の特徴
同社は九州が地盤ですが、大都市中心に全国展開中で、外国人向けの賃貸仲介にも注力しているのが特徴でもあります。
また、2022年2月には神戸、福島、盛岡と2021年度で計6店を地方に出店しています。三菱グループ賃料保証会社とも資本提携するなど、さらなる営業基盤の拡充を図っているようです。
最新決算である2022年3月期決算短信(連結)の
売上高は91億6,200万円。
事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。
- ① 保証関連事業
- ② 不動産関連事業
① 保証関連事業
主力の住居用賃料保証について、新規出店や外部企業との提携による営業ネットワークの拡充、顧客ニーズに対応した商品ラインナップ強化等により堅調に推移したようです。また、賃貸物件の流動性の向上及び不動産オーナーの賃貸リスクに対する意識変化により、事業用賃料保証が拡大しています。
経費面では、独自データベースを活用した与信審査の強化、入居者の状況を適切に把握しそれぞれの状況に応 じた債権管理業務を引き続き実施した結果、与信コストの適切なコントロール、債権管理業務コストの削減が継続しています。
医療費保証業務においては、既存商品に加え、新商品の販売等、引き続き販路拡大と営業強化に取り組むとしています。
これらの結果、当連結会計年度の保証関連事業の売上高は9,089,435千円(前年同期比20.6%増)、営業利益は1,989,442千円(前年同期比106.6%増)となっています。
② 不動産関連事業
不動産仲介・管理業務及び不動産賃貸業務においては、外国籍の方々に対する業務を中心に展開しており、利益率の向上に努めたようです。
新型コロナウイルス感染症による入国制限が継続し賃貸仲介が減少する中で、不動産売買仲介へリソースをシフトしています。
これらの結果、当連結会計年度の不動産関連事業の売上高は82,177千円(前年同期比18.2%増)、営業損失は18,199千円(前年同期は営業損失18,866千円)となっています。
3. 会社規模
時価総額:131億4,800万円 ※2022年5月10日終値ベース
総資産:88億3,200万円 ※2022年3月期
資本金:7億1,600万円 ※2022年3月期第3四半期
売上高:91億6,200万円 ※2022年3月期
従業員数:361名(連結) ※2022年3月期第3四半期
4. 業績
過去2年間の業績は次のとおりです。
売上高 | 営業利益 | 税前利益 | 当期利益 | 1株益 (円) | 1株配 (円) | |
---|---|---|---|---|---|---|
2019/03 | 6,082 | -101 | -146 | -149 | -17.1 | 0 |
2020/03 | 6,744 | 155 | 105 | 24 | 2.8 | 0 |
2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績は、以下のとおり。
売上高 | 営業利益 | 税前利益 | 当期利益 | 1株益 (円) | 1株配 (円) | |
---|---|---|---|---|---|---|
2021/03 | 7,601 | 943 | 911 | 552 | 62.7 | 5 |
最新決算である2022年3月期第3四半期決算(連結)は以下のとおり。
売上高 | 営業利益 | 税前利益 | 当期利益 | 1株益 (円) | |
---|---|---|---|---|---|
2022/03 | 9,162 | 1,971 | 1,946 | 1,340 | 150.95 |
株価・株価指標は以下のとおりです。
※株価:1,474円(2022年5月10日終値)
※株価指標
・予想PER:8.88倍 ※2023年3月期の予想EPS165.92より算出
・実績PBR:5.54倍 ※BPS266.02(2022年3月期)
・配当利回り:3.39% ※2023年3月期50円予想
・年初来高値:2,034円(2022年2月17日)
・年初来安値:1,332円(2022年5月10日)
5. 財務分析
「BS・PL・CS分析から、ジェイリース株式会社の現状を把握します。
2022年3月期決算の数字で検討します。
①BS分析
まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ
※2022年3月期決算
- ・総資産 88億3,200万円
- ・自己資本比率 26.9%
- ・有利子負債 19億5,400万円 ※十万円以下切り捨て
- ・利益剰余金 13億6,300万円 ※十万円以下切り捨て
総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が19億5,400万円、自己資本比率は26.9%と3割以下となっています。
また実績PBRは5.54倍、利益剰余金は13億6,300万円です。
財務的にはまだ脆弱とも考えられます。
②PL分析
損益計算書(Profit and Loss Statement)は売上高・営業利益・当期純利益も確認しましょう。
今期(2022年3月期)の売上高を、2021年度3月期の売上高76億100万円と比較すると20.5%の増加となっています。
③CS分析
キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。 CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。
※キャッシュフローの構造
- ・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
- ・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
- ・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
※2022年3月期決算
営業活動による収入は、1,339,732千円(前連結会計年度は847,379千円の収入)となっています。
主な要因は、税金等調整前当期純利益の増加1,945,232千円、法人税等の支払額594,379千円等によるものとしています。
本業で稼げているようです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動による支出は、288,786千円(前連結会計年度は123,379千円の支出)となっています。
主な要因は、建物等の有形固定資産の取得による支出206,992千円等によるものとしています。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動による支出は、1,131,954千円(前連結会計年度は599,742千円の支出)となっています。
主な要因は、短期借入金の減少950,000千円、配当金の支払額177,646千円等によるものとしています。
現金及び現金同等物は、前期より81,009千円減少し、1,022,308千円となっています。
6. トピック:最大の強み 企業透明度
同社は、「コンプライアンスを遵守した企業透明度の高さ」を、企業価値向上の強みとしています。
経営方針はもちろん、財務・会計・代表者履歴・株主構成・業務データから将来性・法令遵守状態に至るまで、完全に透明でなければならない。また、その企業透明度を活かした信用力をもって、不動産会社さま・入居者さまへ「安心」を提供していく。
2023年3月期の業績予想は、以下のとおりです。
売上高 | 営業利益 | 税前利益 | 当期利益 | 1株益 (円) | 1株配 (円) | |
---|---|---|---|---|---|---|
2023/03 | 10,450 | 2,200 | 2,170 | 1,480 | 165.92 | 50 |
2020/03 | 6,744 | 155 | 105 | 24 | 2.8 | 0 |
7. まとめ
今回はジェイリース株式会社を分析しました。
株価は1,474円(2022年5月10日現在)で時価総額が131億4,800万円(2022年5月2日現在)と比較的値動きは軽い銘柄です。
実績PBRは5.54倍(2022年5月10日現在)、同社の予想PERは8.88倍(2022年5月10日現在)また、東証一部(※2022年4月4日から東証は3区分に変更)の、その他金融における平均PERは12.27倍(2022年4月1日現在)です。
ファンダメンタルズでは、PBRこそ高めではありますが、PERはまだ割安圏内であると考えられます。
また、同社の売上高は過去最高となり、営業利益も4,100万円の超過で過去最高を更新しました。さらに来期2023年3月期も、売上高、営業利益ともに2期連続での更新予想となっています。
ただ、今後も売上や予想通りの決算になるかなどを見定めていく必要もあるため、同社は3~5年間など長期的な投資が向いていると思います。
今後も、堅調に利益更新を目指す同社の行方には要注目です。