三井松島ホールディングス(1518)
三井松島ホールディングスは、石炭生産、販売を柱とする企業です。
現在、電力需給逼迫に関して経済産業省が「注意報」を新設する方針が伝わっており、市場では石炭火力見直しの動きにつながるとの思惑を呼び込んでいます。
そこで今回は、石炭事業を軸とする同社の、株価や業績の将来性を詳しく分析していきます。
※東証の区分変更に伴い、同社は東証プライム市場へ変更となっています。
1. AI insideの会社概要
同社は、1913年(大正2年)の創業以来、100年以上にわたって石炭の生産・販売事業を展開し、日本におけるエネルギーの安定供給に取り組んできました。
近年では企業買収等を通じて新規事業を増やし、収益基盤の安定化・多様化を進め、現在までに取得した事業は、飲食用資材、衣料品、電子部品、事務機器、ペットフード等多領域に及んでいます。
同社の沿革は、以下のとおりです。
沿革
1913年:松島炭鉱(株)(資本金200万円)設立
1935年:「大島炭鉱の開坑に着手
1952年:資本金を5,000万円に増資、池島炭鉱の開発に着手
1961年:資本金を13億円に増資、東京証券取引所第二市場に上場
1962年 :東京証券取引所第一市場並びに福岡証券取引所に上場
1970年:大島炭鉱を閉山し池島炭鉱に集中:1社1山体制となる
1973年:会社商号を松島興産(株)に変更、石炭生産部門を分離し、経営の多角化を本格的に開始
1983年:三井鉱山建材販売(株)を吸収合併:三井松島産業(株)に商号変更
2002年: 三井松島インターナショナル社(海外事業統括会社)設立
2013年: 創業100周年:日本ストロー(株)を買収、子会社化:MMライフサポートを設立、介護事業へ参入
2018年 : 持株会社体制へ移行し、三井松島ホールディングス(株)に商号変更
2020年 : (株)ケイエムテイを買収、子会社化:三生電子(株)を買収、子会社化:MMIジャパン(株)設立 (株)システックキョーワを買収、子会社化
2. 事業の特徴
同社は石炭事業の他、再生可能エネルギー、衣料、電子部品、飲料ストローなどを展開しているのも特徴です。
石炭生産は石炭高が追い風となっており、水晶デバイス関連も好調となっています。また、オーダースーツ事業で戦略転換なども図っているようです。
最新決算である2022年3月期決算短信(連結)の売上高は465億9,200万円。
※2022年5月13日
事業セグメントの売上高・内容などは以下のとおりです。
① 生活関連事業
売上高は、電子部品分野の受注増加、株式会社システックキョーワ(住宅関連部材分野)の子会社化などにより、269億7,200万円と前年同期比38億9,100万円(16.9%)の増収となり、セグメント利益は29億5,900万円と前年同期比13億8,700万円(88.2%)の増益となっています。
② エネルギー事業
売上高は、石炭販売分野における「収益認識会計基準」等の適用の影響などにより、182億8,200万円と前年同期比147億200万円(44.6%)の減収となっています。
セグメント利益は、石炭生産分野における石炭価格の上昇及び決算為替レート(A$/円)の円安などにより、63億3,300万円と前年同期比47億2,100万円(292.8%)の増益となっています。
③ その他の事業
売上高は14億2,100万円と前年同期比8,000万円(6.0%)の増収となり、セグメント利益は1億7,100万円と前年同期比 2,600万円(18.2%)の増益となっています。
3. 会社規模
会社規模は、以下のとおりです。
・時価総額:413億4,900万円 ※2022年5月18日終値ベース
・総資産 :678億3,700万円 ※2022年3月期
・資本金 : 85億7,100万円 ※2022年3月期第3四半期
・売上高 :465億9,200万円 ※2022年3月期
・従業員数:1,490名(連結) ※2022年3月期第3四半期
4. 業績
過去2年間の業績は次のとおりです。
年月 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | 1株益 | 1株配 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2019年3月 | 75,702 | 5,201 | 5,910 | 2,240 | 172 | 50 | |
2020年3月 | 66,596 | 2,741 | 2,995 | 2,292 | 176.3 | 50 |
2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績は、以下のとおり。
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | 1株益 | 1株配 | |
---|---|---|---|---|---|---|
57,378 | 1,946 | 3,020 | -3,035 | -233.4 | 50 |
最新決算である2022年3月期第3四半期決算(連結)は以下のとおり。
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | 1株益 | |
---|---|---|---|---|---|
46,592 | 8,417 | 8,595 | 5,396 | 414.82 |
株価・株価指標は以下のとおりです。
・株価:3,165円(2022年5月18日終値)
・予想PER:4.33倍 ※2023年3月期の予想EPS730.24より算出
・実績PBR:1.16倍 ※BPS2,723.79(2022年3月期)
・予想配当利回り:5.06% ※2023年3月期160円予想
・年初来高値:3,295円(2022年5月18日)
・年初来安値:1,470円(2022年2月8日)
5. 財務分析
BS・PL・CS分析から、三井松島ホールディングスの現状を把握します。 2022年3月期決算の数字で検討します。
①BS分析
まずは、貸借対照表(Balance Sheet)です。見るべきポイントは以下の4つ ※2022年3月期決算
・総資産 678億3,700万円
・自己資本比率 52.2%
・有利子負債 118億2,700万円 ※十万円以下切り捨て
・利益剰余金 205億4,700万円 ※十万円以下切り捨て
総資産を確認することで、その会社の規模がわかります。
一般的には自己資本比率が40%以上あれば倒産しにくいと言われています。
同社は有利子負債が118億2,700万円ありますが、自己資本比率は52.2%と5割を超えています。
また実績PBRは1,16倍、利益剰余金が205億4,700万円とプールもしっかりあります。
財務的には大きな問題はないと考えられます。
②PL分析
キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)は、非常に重要な財務諸表です。
CSを見れば会社の現状が簡単にわかります。
※キャッシュフローの構造
・営業活動によるキャッシュフロー:営業活動で現金を生み出しているか否かがわかる
・投資活動によるキャッシュフロー:固定資産の売買・有価証券の売買などがわかる
・財務活動によるキャッシュフロー:資金調達の有無。借入金の実行・返済がわかる
<営業活動によるキャッシュ・フロー> ※2022年3月期決算
法人税等の支払20億9,600万円、売上債権の増加12億2,900万円などがありましたが、税金等調整前当期純利益81億600万円、減価償却費の計上9億4,200万円などにより、89億1,100万円の収入となっています。
本業で稼げているようです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
有形及び無形固定資産の取得による支出14億200万円がありましたが、 定期預金の減少26億1,300万円、有形及び無形固定資産の売却による収入18億800万円などにより、25億6,900万円の収入となっています。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
短期借入金の純額返済73億2,500万円、長期借入金の返済35億6,700万円、 配当金の支払6億5,200万円などにより、117億4,900万円の支出となっています。
現金及び現金同等物は、前期より3億8,800万円増加し、194億1,300万円となっています。
6. トピック:経営ビジョン 4つの柱
同社は、次の100年もさらに成長し進化を続けるため、4つの経営ビジョンを掲げています。
①皆様から必要とされる企業を目指します。
そのために、常に新しい事業分野の開拓や創造に積極果敢に挑戦し
社会のニーズに応えてまいります。
②皆様から信頼される公明正大な企業を目指します。
そのために、財務の健全性とリスクテイクとのバランスの取れた経営を図り
全てのステークホルダーに対して誠実に向き合います。
③あらゆる環境変化に対応し、しなやかに自己変革できる企業を目指します。
そのために、会社・社員一体となってアンテナを高くし、感性や創造性を磨きます。
④真面目に頑張る社員が報われる企業を目指します。
そのために、フェアな企業風土を醸成いたします。
2023年3月期の業績予想は、以下のとおりです。
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | 1株益 | 1株配 | |
---|---|---|---|---|---|---|
57,000 | 14,300 | 14,800 | 9,500 | 730.24 | 160 |
7. まとめ
今回は三井松島ホールディングスを分析しました。
株価は3,165円(2022年5月18日現在)で時価総額が413億4,900万円(2022年5月18日現在)と比較的値動きも軽い銘柄です。
実績PBRは1.16倍(2022年5月18日現在)、同社の予想PERは4.33倍(2022年5月18日現在)また、東証一部(※2022年4月4日から東証は3区分に変更)の、鉱業における平均PERは8.51倍(2022年4月1日現在)です。
ファンダメンタルズでは、PBRはやや割高ではありますが、PERはまだ割安圏内であると考えられます。
また、同社の営業利益は前期の4倍超に急拡大しており、今期はさらに7割増益となる143億円を見込んでいます。さらに、増配によって配当利回りが5%台と高水準で、株主還元姿勢が高いのも市場の人気を集めているようです。
ただ、今後も売上や予想通りの決算になるかなどを見定めていく必要もあるため、同社は3~5年間など長期的な投資が向いていると思います。
今後も、堅調に利益更新を目指す同社の行方には要注目です。